追突事故でむち打ち症などの慰謝料の相場金額は
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交通事故にもさまざまな種類がありますが、自動車同士の事故の中でもっとも多いのが追突事故です。
追突事故では比較的、被害者の方は軽傷であったり、ケガがない場合もあります。
しかし、首や腰のむち打ち症などでは治療が長引くこともあります。
むち打ち症や骨折などでは、被害者の方は入通院をして治療を受けます。
後遺症が残った場合は、ご自身の後遺障害等級の認定を受け、その後に示談交渉に進んでいく、という流れになっています。
突然、後ろから追突されるのですから、追突事故というのは一方的なものです。
そのため被害者の方は、
「自分には何の過失もないのだから、当然、慰謝料などの示談金をすぐに受け取ることができるだろう」
と思われるかもしれませんが、じつはそう単純ではなく、注意するべきポイントがあります。
では、慰謝料などの示談金(損害賠償金)はどのように計算するのでしょうか?
軽傷でも、しっかり示談金を受け取ることはできるのでしょうか?
示談の流れを知っておくと、スムーズに交渉を進めていくことができます。
示談金の相場金額を知っておくと、加害者側の保険会社から金額の提示があった時、それが正しい金額かどうかの判断ができます。
そして、金額が低い場合は、適切な金額を示談交渉で主張していくことができます。
本記事では、追突事故にあった場合の慰謝料などの示談金や示談交渉について、被害者の方が感じる疑問と対処法について考えていきたいと思います。
追突事故とは?
ある相談者・Sさんの体験談です。
休日に家族でドライブに出かけた帰宅途中のこと。
前方の信号が赤に変わったため、ブレーキを踏んで停車したところ、突然、後ろから追突されました。
大きな衝撃を受けたSさんは、すぐには何が何やら、わけがわからなかったといいます。
少しして、「追突された」と気づいたSさんは、車内の家族の安否状況を確認。
そして、車を路肩に移動し、周囲の安全確認をして、車から降りて後ろの加害車両に近寄り、加害者に自動車から出てくるように促しました。
すると、加害者はこんなことを言ったといいます。
「警察には通報しないでもらえませんか? この場で示談にしませんか?」
そう話す加害者の目を見つめながら、Sさんは首に痛みがあることに気づきました……。
このように、信号待ちなどで被害車両が停車中または低速で前進中、後ろから衝突されるのが追突事故です。
状況によっては、何台もの車両が連なって衝突してしまう玉突き事故が発生する場合もあります。
なお、追突事故が発生した場合は、必ず警察に通報し、たとえケガはしていないと思っても必ず病院にいてください。
これらを行なわないと、あとで被害者の方が不利になってしまうリスクがあります。
追突事故では過失割合も問題になってくる
追突事故では「過失割合」が重要になってきます。
過失割合とは、その交通事故の原因となる過失が加害者と被害者それぞれで、どのくらいの割合なのかを決めるもので、慰謝料などの示談金(損害賠償金)に大きく関わってきます。
たとえば、損害賠償金の算定で1000万円の金額が出た場合で、加害者と被害者の過失割合が6:4とされると、被害者の方は600万円しか受け取ることができなくなってしまいます。
示談金を支払う加害者側の保険会社としては、少しでも被害者の方の過失割合を高く主張することで、自分たちの支払う金額を低く抑えようとしてきます。
そのため、示談交渉では過失割合が大きな争点にもなるのです。
追突事故の場合、通常は被害者の方には何の落ち度もなく、過失割合は0になるのですが、加害者側の保険会社は、被害車両も動いていたとして、被害者側の過失割合を主張してくることがあるので、注意が必要になります。
追突事故の損害賠償請求で気をつけるべきポイント
他の交通事故と比べて、追突事故に特有の損害賠償の請求方法があるわけではないのですが、被害者の方には知っておいていただきたいポイントがあります。
(1)治療費の支払いを一定期間で打ち切られていないか?
ケガの治療を受けてから3~6か月くらいになると、加害者側の保険会社からこんなことを言われる場合があります。
「もう治療費の支払いを打ち切るので、症状固定としてください」
保険会社としては、被害者の方への治療費や慰謝料などの支払いをできるだけ減らしたいと考えるため、このようなことを言ってきます。
しかし、ここで保険会社の言うことをそのまま受け入れてはいけません。
症状固定というのは医師が判断するものであって、保険会社が判断するものではないからです。
治療の効果があるなら医師は症状固定の診断はしないのですから、そのまま治療を受けてください。
仮に治療費の支払いを打ち切られた場合は、ご自身で支払い、あとで行なう示談交渉で請求することができます。
ですから、領収書などはすべて捨てずに保管しておきましょう。
(2)後遺障害等級が正しく認定されているか?
ケガが完治せず後遺症が残ってしまった場合は、慰謝料などの損害賠償金を受け取るためにも、ご自身の後遺障害等級の認定を受けることが必要です。
しかし、後遺障害等級が認めらなかったり、低い等級しか認められないという場合があります。
すると、被害者の方は損害賠償金で損をしてしまうので注意が必要です。
(3)慰謝料などを低く見積もられていないか?
追突事故では被害者の方のケガが比較的、軽傷のケースが多くあります。
そのような場合、治療費や休業損害、慰謝料といった損害賠償項目の金額を低く見積もられてしまうので、加害者側の保険会社の提示金額をチェックすることが大切です。
(4)後遺症と交通事故の因果関係で争いになっていないか?
追突事故で負ったケガと後遺症の関係について疑われるケースがあります。
つまり、被害者の方の後遺症は追突事故とは関係ない、と加害者側の保険会社が主張してくることがあるということです。
こうした場合、被害者の方はその因果関係を立証していく必要があるので、一度、交通事故に強い弁護士に相談することも検討されるといいでしょう。
では、これらのケースが起きた場合どう対処すればいいのか、これからお話ししていきたいと思います。
外傷性頚部症候群(むち打ち症)の場合の注意ポイント
むち打ち症は、頸椎捻挫、外傷性頚部症候群、頚部挫傷など、様々な名称で診断名が書かれます。
追突事故の被害でもっとも多い「むち打ち症」の場合、後遺症の程度の違いによって、後遺障害等級は12級、もしくは14級が認定されます。
ただし、むち打ちの症状は外側からはわかりにくいという特徴があります。
被害者の方には首の痛みや手足のしびれ、頭痛、吐き気、耳鳴りなどさまざまな症状が現れるからです。
そのため、交通事故の損害賠償実務では、むち打ち症は扱いがとても難しいものですから、被害者の方は軽視せず、交通事故に強い弁護士に相談することも検討をするといいでしょう。
ちなみに、むち打ち症の慰謝料は、14級の場合は自賠責基準では32万円、弁護士(裁判)基準では110万円となります。
やはり弁護士(裁判)基準のほうが、自賠責基準よりかなり金額が高くなることがわかります。
損害賠償金の相場金額はいくらくらいになるのか?
では、慰謝料や逸失利益、休業損害などを合計した損害賠償額はいくらくらいになるのでしょうか?
たとえば、追突事故でむち打ち症を負った50歳の兼業主婦(女性)の方で計算してみると、約265万円という金額がはじき出されます。
後遺障害等級10級が認定された、41歳の会社員(男性)の場合では、約1740万円という金額です。
これらの計算方法については、こちらの記事で詳しく解説しているので、とにかくまずはご覧ください。
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※保険会社から提示されている金額と自動計算機で出た金額を比較してみて、保険会社の提示額が低いなら、それは正しい金額ではないということがわかります。
代表社員 弁護士 谷原誠