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後遺障害等級認定を受けるメリット・デメリット

最終更新日 2024年 07月12日

【後遺障害等級】認定を受けると得られるメリットとデメリットとは?

この記事を読むとわかること

交通事故の被害にあい、後遺症が残ってしまった場合、ご自身の後遺障害等級認定を受ける必要があります。

という話を被害者の方はお聞きになったことがあると思います。

チェックボックスでは、後遺障害等級とは何なのでしょうか?
チェックボックスそもそも、なぜ必要なのでしょうか?
チェックボックス等級認定を受けることで、被害者の方にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
チェックボックス逆に、デメリットもあるのでしょうか?

この記事では、そうした被害者の方の疑問についてお答えしていきたいと思います。

これから、交通事故の後遺障害等級認定を受けるメリットなどについて解説していきますが、その前に、交通事故解決までの全プロセスを説明した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。

後遺障害等級認定を受けた場合のメリットとは?

交通事故の被害者の方が後遺障害等級認定を受けると、次のようなメリットがあります。

(1)後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができる
(2)その結果、損害賠償金(示談金)が大幅に増額する

つまり、被害者の方が受け取る慰謝料などの金額が増えることになります。

損害賠償金の中には、治療費や休業損害などがありますが、後遺症が残り、後遺障害等級認定を受けた場合には、その等級に応じて、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになる、ということです。
そこで、ここでは、後遺障害等級認定や後遺障害慰謝料、後遺障害等級のメリット・デメリットなどについて、詳しく説明していきます。

後遺障害等級認定のメリット①【損害賠償金の計算が可能となる】

(1)症状固定とは?

ケガの治療を続けても、これ以上よくはならない=完治しない状態を「症状固定」といい、医師が診断します。

症状が固定するので、以降は被害者の方に「後遺症」が残ってしまうことになります。

(2)後遺症と後遺障害は何が違う?

症状固定の診断後、被害者の方に残った次のような症状や障害が後遺症となります。

「機能障害」
高次脳機能障害による認知や行動の障害、視力や聴力、言語能力の低下や喪失など。

「運動障害」
手・足・指・上肢・下肢などの麻痺や関節の可動域制限など。

「神経症状」
しびれや痛みなど。

後遺障害とは、これらの後遺症に次の要件が認められることで損害賠償請求の対象になるものをいいます。

・交通事故が原因であると医学的に証明されること
・労働能力の低下や喪失が認められること
・その程度が自動車損害賠償保障法(自賠法)で定める後遺障害等級に該当すること

(3)なぜ後遺障害等級が必要なのか?

後遺障害等級認定が必要な主な理由は次の2点です。

①被害者への補償を速やかに行なうため

交通事故にはさまざまな態様があり、被害者の方のケガや損害の状況については、ひとつとして同じものはありません。

実際の交通事故の損害実務では、それぞれの事故を個別に判断していくには、あまりに膨大な時間と労力がかかってしまいます。

すると、被害者の方への補償もかなり遅れてしまうという事態が起きてしまいます。

そうした事態を避けて、速やかに損害賠償が行なわれるためには一定の基準を設定する必要があり、そこで設けられたのが自賠責後遺障害等級です。

②損害賠償額の計算ができるようになる

加害者側の保険会社としても被害者の方の後遺障害等級が確定してからでないと、該当する損害項目から損害額を算出することができません。

また、保険会社からの示談金(損害賠償金)の提示がなければ、被害者の方としても示談交渉をすることはできません。

そこで、後遺障害等級が必要になってくるのです。

後遺障害等級認定のメリット②【2つの手続から選べる】


後遺障害等級認定の申請には、「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があります。

「事前認定」

加害者側の任意保険会社を通して、自賠責保険に申請する方法です。

メリットとしては、必要書類の準備や申請作業などを保険会社が行なってくれるため、被害者の方の負担が少なく済む点などがあります。

逆に、どのような書類が提出されているのかわからないため、被害者の方は提出書類に不足がないかどうか確認することができないというデメリットなどがあります。

つまり、申請の手間はかからないが、提出書類の把握ができないため間違った後遺障害等級が認定されてしまう可能性があるということです。

「被害者請求」

被害者の方が、加害者が加入している自賠責保険に直接する方法です。

被害者ご自身で申請するため、手続きの流れや提出する書類を自分で把握できる点と、最終的な示談の前に自賠責保険金がまとまった金額で支払われるというメリットがあります。

デメリットとしては、被害者ご自身の手間がかかることや、裁判まで進んだ場合に受け取ることができる遅延損害金が減ってしまうということが挙げられます。

自賠責保険に対する被害者請求について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
【交通事故の保険金】自賠責保険への被害者請求の方法を解説

つまり、お金を先に受け取ることができるが、最終的なトータルの金額は減る可能性があるわけです。

どちらにも、それぞれメリットとデメリットがあるので、ご自身の状況や希望を考えながら選ぶのがいでしょう。

なお、通常の場合であれば、申請してから1~2か月ほど、遅くても2~3か月ほどで後遺障害等級の認定通知が届きますが、高次脳機能障害などの判断が難しく重度の後遺症では6か月以上かかる場合もあることに注意が必要です。

後遺障害等級認定のメリット③【異議申立で上位等級が狙える】

後遺障害等級が認定されたものの低すぎて不満がある、あるいは等級の認定を受けられなかったという場合、被害者の方には不利益が生じてしまいます。

そうした場合は、「異議申立」を行なうことができます。

後遺障害等級認定の審査や手続きは、「損害保険料率算出機構」(損保料率機構)という機関が行なうのですが、異議申立についてもこの損保料率機構に対して申請します。

通常は、申請してから2~4か月ほどで新たな判断が示されますが、判断が難しい障害の場合は追加資料が必要となったりするため、さらに時間がかかる場合もあります。

後遺障害等級認定のメリット④
弁護士基準で後遺障害等級慰謝料を計算できる

(1)慰謝料はひとつではない!?被害者が受け取る3つの慰謝料

じつは慰謝料には次の3つの種類があるので、状況に応じて請求することができます。

「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」
被害者の方が傷害(ケガ)を負って入院・通院した場合に支払われる慰謝料です。

「後遺障害慰謝料」
被害者の方に後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合に支払われる慰謝料です。

「死亡慰謝料」
被害者の方が亡くなった場合に支払われる慰謝料です。

慰謝料請求や示談交渉での注意ポイントや慰謝料の計算方法については、こちらの記事を参考にしてください。

よく読まれています!
交通事故の慰謝料で被害者がやってはいけない6つのこと

(2)慰謝料計算で使われる3つの基準の違いとは?

加害者側の保険会社が提示してくる慰謝料などの損害賠償金(示談金)は、じつは被害者の方が本来であれば受けとるべき金額より低く算出されることがほとんどです。

保険会社は営利法人であるため、収入を増やして支出を抑えようとします。

そのため、被害者の方への慰謝料などの損害賠償金を低く見積もるのです。

その際に使われるのが次の3つの基準です。

「自賠責基準」

自賠責法により定められた基準です。

そもそも、自賠責保険は被害者救済のために作られたものであることから最低限の補償となっており、支払われる保険金には限度額があります。

そのため、自賠責基準による金額はもっとも低いものになります。

「任意保険基準」

各任意保険会社が独自に設定している基準です。

自賠責基準より少し高い金額が計算されるように設定されています。

「弁護士(裁判)基準」

弁護士が被害者の方から依頼を受けて交渉する際、また裁判になった場合にも主張する金額の基準で、裁判所も使用するものです。

過去の膨大な裁判例から導き出された基準のため法的根拠があることから、裁判になった場合に認められる可能性がとても高くなります。

3つの中では、もっとも高額になる基準です。

つまり、被害者の方としては、

チェックボックス保険会社が提示してくる金額で簡単に示談を成立させてはいけない
チェックボックスもっとも高額になる弁護士(裁判)基準で計算した金額で示談をするべき

ということが大切になってくるのです。

弁護士基準について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
【弁護士基準】交通事故の慰謝料をできるだけ高額で示談する方法とは?

後遺障害等級認定のメリット⑤【請求できる項目が増える】


交通事故の被害者の方が加害者側に請求できる損害賠償項目には、さまざまな種類があります。

(1)入院・通院して治療を受けた場合の主な損害賠償項目

①治療費:必要かつ相当な範囲での実費金額
 ※特別個室、過剰診療等の費用は補償されない可能性があるので注意が必要

②付添看護費:看護師・介護福祉士等/実費全額
       近親者/入院の場合は1日につき6500円
           通院の場合は1日につき3300円
           ※幼児・高齢者・身体障害者等で必要のある場合

③入院雑費:1500円(1日につき)

④装具・器具購入費:車いす・義足・義歯・補聴器・義眼・入れ歯・かつらなどの購入費・処置費等の相当額

⑤交通費:原則として本人分の実費

⑥子供の保育費・学習費等:実費相当額

⑦弁護士費用:裁判所により認容された金額の1割程度(訴訟になった場合)

⑧休業損害:事故前の収入を基礎として、ケガによって休業したことによる現実の収入減分

⑨入通院慰謝料:4300円(1日につき)

「通院を1か月した場合の慰謝料の日額」

自賠責基準 4300円
任意保険基準 経験上7400円程度が多い
弁護士基準 9333円

※自賠責基準は、1か月のうち半分以上が通院だったと仮定して計算。任意保険基準と弁護士基準はひと月30日で割って日額を計算。

※自賠責基準12.9万円、任意保険基準12.6万円、弁護士基準28万円を日額に換算。

※重傷の場合で計算

「通院を6か月した場合の慰謝料の日額」

自賠責基準 4300円
任意保険基準 経験上5100円程度が多い
弁護士基準 6444円

※自賠責基準77.4万円、任意保険基準64.3万円、弁護士基準116万円を日額に換算。

このように、自賠責基準と弁護士(裁判)基準で計算した金額には大きな違いがあることがわかります。

(2)後遺障害等級が認定された場合の主な損害賠償項目

①将来介護費:看護師・介護福祉士等の実費全額
       近親者/常時介護が必要な場合は1日8000円
       ※平均寿命までの期間について、中間利息を控除した金額

②家屋・自動車等の改造費:自動車・家の出口・風呂場・トイレ等の改造費、介護用ベッド等の購入費やレンタル費などの実費相当額

③逸失利益:事故前の収入額に、労働能力喪失率、就労可能年数、中間利息の控除分をかけた金額

④後遺障害慰謝料:等級によって金額の規定あり

<弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の相場金額表>

後遺障害等級 慰謝料
1級 2800万円
2級 2370万円
3級 1990万円
4級 1670万円
5級 1400万円
6級 1180万円
7級 1000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円

【出典】「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)

入通院慰謝料と後遺障害慰謝料について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
【慰謝料計算】交通事故の入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を解説

(3)逸失利益とは?

交通事故でケガを負った場合、または後遺症が残った場合には、それまでの仕事ができなくなってしまったり、できる仕事の範囲や量に制限がでてしまうことが考えられます。

当然、そうした時には収入が減ってしまうわけですが、その減収分を逸失利益といいます。

後遺障害逸失利益は次の計算式で求めます。

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

これは、後遺障害等級が認定されることで得られるものですから、後遺障害等級認定を受けることでのメリットといえます。

後遺障害等級の認定を受けた場合のデメリットとは?


では、後遺障害等級の認定を受けた場合のデメリットにはどういったものがあるでしょうか?

これには誤解があるといけないので、少しご説明をしましょう。

交通事故でケガを負って入院・通院して治療を受けた場合、前述したような損害賠償項目の金額を受け取ることができます。

しかし、治療を終えて症状固定することで後遺障害等級が認定されるので、入通院慰謝料は受け取ることができなくなります。

また、治療費や休業補償の支払いも打ち切りとなります。

一方で、後遺障害等級が認定されることで、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。
しかも、その金額は入通院慰謝料や休業補償よりも大きくなります。

つまり、後遺障害等級が認定されると受け取る慰謝料額などがアップするため、結果として後遺障害等級の認定を受けることでデメリットになることはない、といっていいでしょう。

ただし、後遺障害等級認定は、間違っていることがあります。

そうすると、その低い等級で後遺症慰謝料や逸失利益を計算されてしまい、本来受け取ることのできる示談金をもらえなくなる可能性があります。

したがって、後遺障害等級が間違っている場合には、デメリットがありますので、異議申立により正しい後遺障害等級認定をしてもらってから示談交渉を始めるようにしましょう。

具体的な慰謝料額の違いと計算方法


前述したように、被害者の方は弁護士(裁判)基準で計算した金額を受け取ることが大切です。

では、使用する基準の違いによって、どのくらいの金額の差があるのか、次の表をご覧ください。

「自賠責基準・裁判基準による後遺障害慰謝料の金額表」

自賠責基準による後遺障害慰謝料の金額表
自賠責基準による後遺障害慰謝料の金額表

やはり、弁護士(裁判)基準が重要なことがおわかりいただけると思います。

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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