交通事故で「てんかん」の後遺障害等級と実際の解決事例
交通事故の被害で頭部への傷害(けが)を負った場合、てんかんの後遺症が残ってしまう場合があります。
てんかんでは痙攣(けいれん)の発作や意識障害などが起きるため、日常生活や労働能力への影響が避けられない場合が多くあります。
被害者の方やご家族としては、慰謝料などの損害賠償金を加害者側に請求することができるのですが、そこで必要なのが後遺障害等級です。
後遺障害等級が認定されることで、通常は加害者側の任意保険会社が損害賠償金を算出して提示してきますので、ここから示談に向けた交渉がスタートするのですが、じつはなかなか示談成立とはいかない現実があります。
というのは、加害者側の保険会社は被害者の方が本来であれば受け取るべき金額よりも、かなり低い金額を提示してくるからです。
被害者の方やご家族としては、
後遺障害等級は何級が認定されるのか?
示談交渉では何をすればいいのか?
慰謝料などの損害賠償金の相場金額はいくらくらいなのか?
慰謝料などの損害賠償金を増額させる方法はあるのか?
増額を勝ち取り、示談を成立させるために注意するべきことは?
といった不安や疑問が起きるのは当然だと思います。
そこで今回は、これらの問題について詳しくお話ししていきたいと思います。
みらい総合法律事務所で実際に示談解決した事例
まずは、みらい総合法律事務所で実際に示談解決した、てんかんの後遺障害のあった被害者の方の事例をご紹介します。
後遺障害等級併合4級の51歳女性で約7275万円を獲得
51歳の兼業主婦の女性が、自転車で道路を横断していた際、直進車に衝突された交通事故です。
被害者女性は頭部外傷を負い、高次脳機能障害、てんかん、外貌醜状、嗅覚脱失などの後遺症が残ってしまい、後遺障害等級は併合4級が認定されました。
すぐに弁護士に依頼しましたが、不満があったため解任。
セカンドオピニオン的に、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、そのまま示談交渉のすべてを依頼されました。
弁護士が加害者側の保険会社と交渉しましたが決裂し、調停へ。
粘り強く弁護士が交渉を続けたことで、最終的に慰謝料などの損害賠償金が約7275万円で解決した事例です。
このように、弁護士に依頼することで被害者の方は低い金額で示談してしまうことなく、正当な慰謝料などの損害賠償金を受け取ることができるのです。
てんかんが起きる原因と症状について
てんかんとは、医学的には脳内で神経細胞の電気的な興奮が過剰に発生する部位が生じることで脳の働きに異常が引き起こされ、痙攣や意識障害、意識喪失などの発作を繰り返し起こす慢性疾患です。
てんかんの4割は原因不明とされていますが、遺伝的要因、交通事故などによる頭部への外傷による脳のダメージ、脳腫瘍や脳卒中などの病気でも起きるとされています。
原因不明のものを「特発性てんかん」、頭部外傷など明らかな原因があるものを「症候性てんかん」といいます。
※本記事では、交通事故による外傷性てんかんについて、お話ししていきます。
てんかんでは繰り返し起きる発作により、次のような症状が現れます。
・痙攣
・意識障害
・意識消失 など
たとえば発作を起こして意識を失い転倒し、その後に手足の痙攣が起きたり、意識の混濁が起こり、うろうろと歩き回るなどの症状です。
なお、原因となる脳の発症部位によって、現れる痙攣の部位にも手や足、全身、視野などの違いが出てきます。
いずれにしても、生活や仕事の面で大きな支障が出てしまうので、後遺障害等級の認定を受けて、慰謝料などの損害賠償金をしっかり受け取ることが大切です。
てんかんで認定される後遺障害等級とは?
交通事故による傷害(けが)で後遺症が残ってしまった場合、その後に示談交渉を行なうためにもご自身の後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
後遺障害等級は、もっとも重度の高い1級から順に14級まであり、障害の残った部位により各号数が定められています。
なお、後遺障害等級認定の仕組みや手続き、注意ポイントなどについては、こちらの記事が参考になりますので、まずはご覧ください。
<てんかんの後遺症で認定される後遺障害等級>
「5級2号」
1カ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」、または「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」がある場合。
「7級4号」
「転倒する発作等」が数カ月に1回以上ある場合、または「転倒する発作等以外の発作」が1カ月に1回以上ある場合。
「9級10号」
数カ月に1回以上の発作が「転倒する発作等以外の発作」である場合、または服薬継続により、てんかん発作がほぼ完全に抑制されている場合。
「12級13号」
発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認める場合。
なお、1カ月に2回以上の発作がある場合は、通常、重度の高次脳機能障害と診断されるため、後遺障害等級3級以上が認定される可能性があります。
てんかんの後遺障害で慰謝料などを増額する方法
後遺障害等級が認定されると、通常、加害者が任意保険に加入していればその保険会社から示談金(損害賠償金、保険金と同じものです)の提示があります。
被害者とご家族が、この金額に納得すれば示談は成立となり交渉には入りません。
しかし、保険会社は被害者の方が受け取るべき適切な金額を提示してくることはほとんどないので、納得がいかなければ示談交渉に入ります。
それは、保険会社というのは営利法人であり、利益を追求するのが目的だからです。
そのため、支出となる被害者の方への示談金を低くしようとするのです。
では、てんかんの後遺障害で慰謝料などの損害賠償金を増額するにはどうすればいいのでしょうか?
注意するべきポイントはあるのでしょうか?
(1)症状固定の時期を慎重に判断する
交通事故で負ったケガの治療を続けていくと、ある時期に主治医から「症状固定」の診断が行なわれる場合があります。
症状固定とは、これ以上の治療を続けても改善、完治の見込みのない状態のことで、これ以降、被害者の方には後遺症が残ってしまうことになるので、後遺障害等級認定の申請を行なうことになります。
てんかん症状の場合に注意したいのは、治療期間が長期に及ぶ可能性があることです。
すると、入通院の治療費や入通院慰謝料を受け取ることができます。
一方、後遺障害等級が認定されると入通院の治療費や入通院慰謝料、休業損害などは受け取ることができなくなりますが、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。
じつは、入通院慰謝料より後遺障害慰謝料のほうが、休業損害より逸失利益のほうが高額になります。
また、治療の効果があり、症状が改善していけば、最終的に認定される後遺障害等級は低いものになると同時に、慰謝料などの損害賠償金も低くなります。
慰謝料などの金額にフォーカスした場合、このように症状固定の時期も重要になってくるので、慎重に判断することが大切です。
(2)正しい後遺障害等級認定を受ける
後遺障害慰謝料は等級によって相場の金額が決められています。
<弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の相場金額表>
等級 | 保険金額 |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
【出典】「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)
てんかんの後遺障害の場合、5級と7級では慰謝料だけで400万円も違ってくるので、この差は大きいでしょう。
ですから、正しい後遺障害等級認定を受けることで慰謝料などを増額することができるのです。
なお、認定された後遺障害等級が低すぎる、または等級が認定されなかった場合は異議申立をすることができます。
異議申立をお考えの時は一度、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめしています。
弁護士は、まず認定された後遺障害等級が正しいかどうかの判断を行ない、等級が低いと判断したなら適切な資料や申請書を用意して、異議申立を行なうことができるからです。
後遺障害等級認定と異議申立の申請方法などは、こちらの記事でも解説しています。
(3)てんかん症状と交通事故の因果関係を正しく立証する
保険会社との示談交渉や裁判で争点となることのひとつに、てんかん症状と交通事故の因果関係があります。
てんかん発作の後遺障害の原因が、交通事故による傷害(けが)によるものなのかどうかを疑われる場合があるのです。
この場合、被害者ご自身やご家族が証明するのは困難です。
まずは、交通事故の後遺障害に詳しい医師の診断を受けることが大切です。
てんかんの診断では、発作の型の特定、脳波検査、MRIやCTなどの画像診断が重視されるので、専門の医師の診断を受け、診断書を作成してもらいましょう。
また、交通事故に強い弁護士の存在も重要です。
弁護士に依頼することで、弁護士は被害者の方の代理人として加害者側の保険会社との示談交渉を行ないます。
もちろん、裁判になった場合も被害者の方の代理人として出廷し、正しい立証を行ないます。
(実際の裁判では、被害者の方が法廷に立つことはほとんどないので安心してください)
その際、法的な知識と医学的知見を駆使して、てんかん症状と交通事故の因果関係を立証し、慰謝料などの増額のために全力を尽くします。
なお、てんかん症状と交通事故の因果関係が争点となった判例を確認したい方は、こちらの記事を参考にしていただければと思います。
(4)弁護士(裁判)基準による示談解決を目指す
慰謝料などの損害賠償金の算出には、次の3つの基準が使われます。
どの基準を適用するかによって、慰謝料などの金額に大きな差が生まれてしまいます。
「自賠責基準」
法律により自賠責保険で定められている基準で、もっとも低い金額になる。
「任意保険基準」
各任意保険会社が独自に定めている基準で、自賠責基準より少し高い金額になるように設定されている。
「弁護士(裁判)基準」
過去の裁判例から導き出されている基準で、3つの基準の中ではもっとも高額になる。
法的根拠がしっかりしているため、裁判でも認められる可能性が高くなる。
弁護士(裁判)基準で計算した金額が本来、被害者の方が受け取るべき金額である。
被害者やご家族は、保険会社が提示してくる金額ではなく、弁護士(裁判)基準で計算した適切で正しい金額を主張し、示談を解決することで慰謝料などの増額を勝ち取ることが大切です。
(5)交通事故に強い弁護士に依頼する
ここまでお話ししてきたように、被害者ご本人やご家族が単独で、てんかんの後遺障害で慰謝料増額を勝ち取るのは非常に難しいことが、おかりいただけたと思います。
慰謝料などの増額を望むのであれば、やはり弁護士に相談・依頼するのが適切な判断・対応になると思います。
<弁護士に相談・依頼した場合のメリット>
認定された後遺障害等級が正しいかどうかの確認ができる。
異議申立の申請を代行してくれる。
示談交渉を代理してくれるため煩わしく難しい示談交渉から解放される。
慰謝料や逸失利益などの示談金額が適切かどうかの確認ができる。
加害者側の保険会社との交渉で慰謝料などの増額を勝ち取ってくれる。
まずは無料相談から。
弁護士の説明に納得がいくなら正式に依頼する、という段取りで進んでいくのがいいでしょう。
交通事故に強い弁護士なら、あなたの心強いサポーターになることができるはずです。
代表社員 弁護士 谷原誠