交通事故でドライブレコーダーを使って慰謝料を増やす方法
交通事故の被害にあった時、ドライブレコーダーの映像があれば慰謝料等を増額させることができる可能性があります。
交通事故は、刑事事件と民事事件の両方で扱われる場合があります。
ドライブレコーダーの映像により加害者側の過失が大きいことを証明できれば重要な証拠になり、刑事裁判の判決で軽い罰則にされてしまうことを防ぐことができます。
また、民事での損害賠償の示談交渉や民事裁判での過失割合の認定等においても、ドライブレコーダーの映像は重要な証拠になるので、慰謝料等の損害賠償金を増額させるための重要な証拠になります。
近年では、自動車にドライブレコーダーを搭載している人が増えています。
損害賠償の実務の現場でもその映像が証拠として採用されることが増えてきているので、活用していくことが大切です。
本記事を読んでいただくと次のことがわかります。
ドライブレコーダーの映像を利用する際の注意ポイントと効果的な活用法
損害賠償における過失割合の基礎知識
ドライブレコーダーの映像を過失割合の認定で役立てる方法
目次
ドライブレコーダーが使用されるようになった理由
近年、ドライブレコーダーが急速に普及したことで、交通事故に関わる場面で活用されるようになっています。
ご存じのとおり、ドライブレコーダーとは車載型の映像記録装置のことで、2000年代初頭から日本で開発が始められ、2003年頃に実用化、2006年から量産化され始め、現在に至ります。
ドライブレコーダーが大きく注目されたのは、2017(平成29)年6月5日、東名高速道路で発生した、悪質な危険運転である「あおり運転」により、ご夫婦が亡くなった交通死亡事故も1つの契機といっていいでしょう。
警察の捜査で使用されたのが、事故当時に現場近辺を走行していた約260台の車両を割り出し、回収したドライブレコーダーの映像でした。
あおり運転が社会問題となり、メディアでも多く取り上げらえたことは記憶に新しいところでしょう。
示談の前に知っておきたい過失割合の基本知識
過失割合は誰が決めるのか?
警察には民事不介入のルールがあります。
また、検察は加害者を起訴するかどうかを決めるので交通事故の過失割合には関わりません。
では、誰が過失割合を決定しているのかというと、加害者側の任意保険会社が自分たちの判断、見解をもとに主張しています。
この割合について被害者の方が納得すれば、そのようになりますが、ここで注意しなければいけないのは、保険会社が主張する過失割合は必ずしも正しいわけではない、ということです。
過失割合はどうやって割出すのか?
過失割合には交通事故の類型ごとに一定の基準が設定されています。
裁判所も弁護士も保険会社も、すべて同じ基準に基づいて算定し、加害者側80%対被害者側20%というように表現されます。
ではなぜ、過失割合に違いが出てくるのかというと、見解の相違ということになります。
被害者と加害者双方には基本となる過失割合が決まっており、そこに事故の状況に応じて5~20%程度の過失をそれぞれ加算していきながら調整していきます。
自動車同士の事故、自動車と歩行者の事故といった類型はありますが、交通事故は一つとして同じものはありません。
事故状況はすべて違い、互いの利害も絡んでくるので、本来であれば簡単に数字で割り切ることができるものではなく、判断が難しいものなのです。
そのため見解の相違から、示談交渉の争点になることが多いわけです。
こちらの解説ページでは事例解説もしているので、ぜひご覧ください。
図解で解説!交通事故の過失割合と過失相殺でもめないための知識
過失割合の根拠は明確にしておく
加害者側の保険会社から損害賠償金の通知書類が届いたら、内容をよく確認してください。
後遺障害等級は何級になっていますか?
損害賠償項目には何が記載されているでしょうか?
各項目の金額は?
合計金額はいくらになっているでしょうか?
過失割合も、しっかり確認しましょう。
割合の数字、根拠、素因減額の有無などについて納得がいかないのであれば、保険会社に問い合わせて根拠を明確にしていくことも大切です。
しかし過失割合は、交通事故問題の深い知識や損害賠償実務の経験がないと、正直なところ難しいでしょう。
ですから、保険会社から書類が届いた時点で一度、交通事故に強い弁護士に相談して、内容の確認をしてみることをおすすめします。
実況見分調書と供述調書は重要な証拠になる
加害者側の任意保険会社が主張する過失割合で被害者の方が納得できるなら、そのまま示談成立に向けて進んでいきます。
しかし、納得がいかないなら示談交渉が開始されます。
ところで交通事故が発生し、警察に通報すると、警察は現場で実況見分(現場検証)を行ない、「実況見分調書」を作成します。
さらに、加害者と被害者それぞれに聞き取り調査を行なって「供述調書」を作成します。
実況見分調書と供述調書は、刑事事件のもっとも重要な証拠になると同時に、示談交渉や民事裁判でも重要な証拠、判断材料にもなります。
つまり、これらの内容によって過失割合も変わってくるわけです。
交通事故でドライブレコーダーの効果的な使い方とは?
ドライブレコーダーには、事故前後の映像や音声だけでなく、時刻、GPSによる位置情報、ハンドルやブレーキ、ウインカーの操作状況、加速度などさまざまなデータが記録されます。
これらの情報、データはどのような場面で生かすことができるでしょうか?
ドライブレコーダーのデータは過失割合の重要な証拠として使用できる
たとえば、過失割合において加害者側の任意保険会社は、「加害者80対被害者20だ」と主張してきたが、被害者の方の主張としては「過失はない」というように、意見が食い違うことはよくあります。
前述したように、被害者と加害者では利害が一致しませんし、交通事故の興奮状態の中では完璧に客観的な判断ができないことも多いでしょう。
こうした場合、過失割合の決定では、実況見分調書や供述調書が有力な証拠となりますが、さらにドライブレコーダーの映像や音声、各データがあれば、事実に即した過失割合の大きな証拠になります。
同様に、加害者の刑事事件の裁判でも有力な証拠となります。
被害者が主張できない状況での客観的な証拠となる
被害者の方が亡くなった場合や重傷のために発言できないような場合、示談交渉や民事裁判では加害者のほうが有利に動いてしまうケースがあります。
しかし、ドライブレコーダーのデータがあれば客観的な証拠を提示できるので、事実に基づいた過失割合の決定においては重要な証拠になります。
ひき逃げや当て逃げ事故でも重要な証拠になる
交通事故では、加害者がわからないという状況もあり得ます。
たとえば、ひき逃げや当て逃げ事故などでドライブレコーダーに加害車両のナンバーが映っていたり、事故の状況がわかるデータがあれば、加害者を特定して、損害賠償請求につなげることができます。
ドライブレコーダーの利用で注意したいポイント
やはり性能がいいドライブレコーダーを使いたい
画像の解像度が低かったり、撮影範囲が狭かったりすると、せっかくの映像が大切な証拠として機能しないということも考えられます。
加害車両のナンバープレートが判別できるか、夜間でも信号機の色が判別できるかといった部分は交通事故では大きなポイントになります。
近年ではドライブレコーダーの性能が向上して、さらには買いやすい価格になっています。
万が一の交通事故に備えるなら、できれば性能の高いものを選ぶのがいいでしょう。
自身の過失が大きいような場合は要注意
刑事事件として警察が捜査中、あるいは検察が起訴をして刑事裁判となった場合には、ドライブレコーダーのデータの提出を求められる場合があります。
また、示談交渉が決裂して最終的に民事裁判まで進んだ場合に裁判所が有力な証拠として必要と判断した場合にも提出を求められる場合があります。
一方、加害者側の任意保険会社との示談交渉では、ドライブレコーダーのデータの提出は任意となっています。
そのため、被害者自身がスピードを出しすぎていた、前方不注意があったなどで過失が大きいような場合はドライブレコーダーの活用には注意が必要です。
慰謝料の増額のためには弁護士を活用してください!
ドライブレコーダーがあると、交通事故などいざという時の安心材料になります。
しかし、交通事故の示談交渉では加害者側の任意保険会社は被害者の方の主張を簡単には認めません。
弁護士が代理人として交渉に入ってこない限りは、慰謝料や逸失利益などの損害賠償金を増額しなくてもいいと考えている場合もあります。
そんな時、被害者の方の心強い味方になれるのは、やはり交通事故に強い弁護士という存在です。
交通事故の示談交渉が決裂した際の民事裁判では、弁護士という存在が被害者の方の安心材料になります。
映画やドラマなどでは、刑事裁判の法廷で被告人弁護をする弁護士が描かれることがありますが、交通事故の民事裁判では通常、被害者の方が出廷するのは尋問が必要になった時の1回です。
あとは、弁護士が代理人として出廷して、被害者弁護を行なっていくので安心していただいて大丈夫です。
それに、裁判を起こして判決まで行くと、遅延損害金と弁護士費用相当額というものが損害賠償金に加算されます。
つまり、弁護士費用を加害者側に支払ってもらい、さらに損害賠償金が増額するわけです。
弁護士に相談・依頼すると次のようなメリットがあるので、ぜひ活用していただきたいと思います。
正しい後遺障害等級の確認ができる
後遺障害等級が間違っていれば異議申立の申請をしてくれる
示談交渉ではドライブレコーダーも活用しながら適切な主張を行なってくれる
煩わしい保険会社とのやりとりから解放される
最終的には慰謝料などの損害賠償金が増額する など
代表社員 弁護士 谷原誠