交通事故で負ったCRPS(RSD)の後遺障害について
たとえば、交通事故で骨折をした場合、入通院をして治療をしたかいあって治癒したにも関わらず、痛みが残る場合があります。
検査をしても異常が確認されないケースでは、CRPS(RSD)の可能性があります。
では、CRPS(RSD)は具体的にどのような症状が出るのでしょうか?
ところで、被害者の方が慰謝料などの損害賠償金(保険金)を受け取るためには後遺障害等級が必要になります。
では、CRPS(RSD)の後遺障害等級は何級が認定されるのでしょうか?
損害賠償金(保険金)は、被害者の方が認定された後遺障害等級によって大きく変わってくるので、何級が認定されるのかはとても大切です。
本記事では、交通事故で負った後遺障害の中から、CRPS(RSD)について解説していきます。
CRPS(RSD)の後遺障害について
CRPS(RSD)とは?
「CRPS(シーアールピーエス)」とは、英語のComplex regional pain syndromeの頭文字をとった略称で、日本語では、「複合性局所疼痛症候群」と呼ばれます。
以前は、「RSD(アールエスディー:Reflex sympathetic dystrophyの略称))=反射性交感神経性ジストロフィーと呼ばれていましたが、現在では、RSDは神経損傷をともなわないものに分類され、神経損傷をともなう「カウザルギー」とともにCRPSの一類型としてとらえられています。
つまり、CRPSは症候群としての総称で、この中にRSDとカウザルギーが含まれる、ということになりますが、本記事ではCRPS(RSD)と表記をしていきます。
CRPS(RSD)の症状
交通事故の被害にあった場合、身体のさまざまな部分に後遺障害を負ってしまう可能性があります。
たとえば、上肢(肩や肘、腕、手首、指など)や下肢(股関節や膝、大腿、すね、足首、足指など)を骨折した場合、病院に入院・通院して治療を受けるでしょう。
治療のかいあって、骨折が完治したとします。
ところが、患部に痛みが残ることがあります。
検査をしても異常が見つからないのに、被害者の方は明らかに痛み(疼痛)を感じるのです。
こうした場合、CRPS(RSD)の可能性があります。
CRPS(RSD)は神経因性疼痛の代表的なものです。
CRPS(RSD)発生のメカニズムは、まだ詳しくわかっていないのですが、次のことが関係して、痛みやしびれなどが起こると考えられています。
・交通事故で負った外傷は治癒したものの、神経伝達物質のひとつであるアドレナリンが過剰に分泌され続けることで血管収縮、血流障害が生じる。
・痛みを調節する脳の機能異常
CRPS(RSD)の主な症状には次のものがあります。
- 痛み・しびれ:焼けるような激しい灼熱痛、触っただけでも感じる疼痛(とうつう)、しびれ
- 関節拘縮(こうしゅく):関節のこわばり、動かしにくさ
- 腫脹(しゅちょう):炎症などのために手足等が腫れ上がったり、むくむ
- 皮膚の変化:皮膚の張りやツヤが失われる
- その他:筋力の低下、異常な発汗、局所的骨粗鬆症、手足のやせ細り など
後遺障害の内容 - 神経系統の機能又は精神に障害を残し、
服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 自賠責保険金額 - 616万円
労働能力喪失率 - 35%
後遺障害の内容 - 局部に頑固な神経症状を残すもの
自賠責保険金額 - 224万円
労働能力喪失率 - 14%
後遺障害の内容 - 局部に神経症状を残すもの
自賠責保険金額 - 75万円
労働能力喪失率 - 5%
色の変化(赤くなったり、逆に血の気が引いたように白くなる)
乾燥、皮膚温の異常など
時間の経過とともに、これらの症状が現れる場合は、CRPS(RSD)の可能性が高いと判断されます。
CRPS(RSD)の特徴と治療法
CRPS(RSD)の特徴としては、次のものがあげられます。
・上肢や下肢、特に手首や足首に発症することが多い
・ケガの程度に比べ、痛みなどが強い
・中高年の女性に多い傾向がある
なお、治療ではリハビリテーションなどの理学療法、投薬、神経ブロック(麻酔薬で痛みを抑える治療)、手術などが行なわれます。
CRPS(RSD)の後遺障害等級について
CRPS(RSD)では何級が認定されるのか?
CRPS(RSD)では、その程度によって次の後遺障害等級が認定されます。
後遺障害の内容 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、 服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 616万円 |
労働能力喪失率 | 35% |
後遺障害の内容 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 224万円 |
労働能力喪失率 | 14% |
後遺障害の内容 | 局部に神経症状を残すもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 75万円 |
労働能力喪失率 | 5% |
CRPS(RSD)の判断基準
CRPS(RSD)の判断では、次の判定指標、診断基準が使われます。
【参考情報】
・「厚生労働省研究班による複合性局所疼痛症候群のための判定指標」(2008年)
・国際疼痛学会(IASP)が提唱したCRPSの診断基準(2005年)
ただし、これらの判定基準がそのまま後遺障害等級認定に使われるわけではないことに注意が必要です。
CRPS(RSD)の判断は難しいもののひとつで、医師によっても判断が分かれることもあります。
そのため、後遺障害等級認定においても判断が難しい後遺症のひとつといえます。
というのは症状が多様で、他の後遺障害と症状が類似している部分が多いからです。
みらい総合法律事務所で実際に解決した増額事例
最後に、みらい総合法律事務所で実際に慰謝料などが増額して解決した事例をご紹介します。
ご自身の状況と照らし合わせて参考にしていただければと思います。
増額解決事例1:支払い拒否から1692万円の損害賠償金で決着
41歳の男性に下肢可動域制限の後遺症が残ってしまった交通事故の事例です。
後遺障害等級の申請をしたところ、12級6号が認定されましたが、加害者側は責任を否定し、損害賠償金の支払いを拒否しました。
そこで被害者の方が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用。
弁護士の説明に納得がいったので、そのまま示談交渉のすべてを依頼されました。
まず、弁護士は被害者の方の後遺障害等級を精査。
その結果、CRPS(RSD)の後遺障害の可能性もあると判断しました。
異議申立を行なったところ、CRPS(RSD)で9級10号が認定され、後遺障害等級は併合8級にアップしました。
そこで弁護士が示談交渉をしましたが、決裂したため提訴。
最終的には裁判で、1692万円の損害賠償金が認められた事例です。
増額解決事例2:66歳女性の慰謝料などが約2倍に増額
66歳の女性が自動車を運転中、対向車がセンターラインオーバーをしてきて衝突された交通事故です。
被害者女性は、手首菱形骨骨折のケガのため神経症状の後遺症が残り、後遺障害等級は12級13号が認定されました。
加害者側の任意保険会社と示談交渉を行なったところ、約274万円を提示されましたが、この金額に疑問を持ったため、みらい総合法律事務所の無料相談を利用。
その後、すべてを委任されたため、弁護士が示談交渉に入ることになりました。
示談交渉が決裂したため、弁護士が提訴。
裁判では最終的に、約569万円の損害賠償金が認められました。
当初提示額から約2倍に増額した事例です。
増額解決事例3:21歳女性の慰謝料などが約21.8倍に増額
31歳の女性が、夜間の幹線道路を歩行横断中、直進車にひかれてしまった交通事故。
右足大腿骨転子骨骨折などの傷害(ケガ)を負い、治療を続けましたが症状固定し、右脚に神経症状と外貌醜状の後遺症が残ってしまいました。
後遺障害等級は、それぞれ12級13号と14級5号が認定され、合わせて併合12級が認定されました。
加害者側の任意保険会社は慰謝料などの損害賠償金として、約43万円を提示。
この金額に不服を感じた被害者の方が、みらい総合法律事務の無料相談を利用されました。
そこで委任を受けた弁護士が保険会社と示談交渉を開始。
保険会社は被害者の過失の大きさを主張しましたが、粘り強く交渉を重ね、最終的には約950万円で解決した事例です。
当初提示額から約21.8倍も増額したことになります。
増額解決事例④:48歳男性の損害賠償金が約18.3倍に増額
48歳の男性が、交通事故で左脛骨高原骨折のケガを負った交通事故です。
膝に神経症状の後遺症が残り、後遺障害等級は12級13号が認定されました。
加害者側の任意保険会社は被害者の方に対し、既払い金の他に約54万円の示談金を提示。
その理由は、「事故により年収が下がっていないのだから、逸失利益(将来的に得られるはずだった収入)については支払えない」というものでした。
納得がいかなかった被害者の方が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、そのまますべての交渉を依頼されました。
弁護士は「逸失利益は十分に認められるべき」と主張し、最終的には保険会社が1000万円の損害賠償金を認めた事例です。
当初の保険会社提示額から、約18.3倍に大きく増額したことになります。
以上、CRPS(RSD)の後遺症、後遺障害等級、慰謝料などの損害賠償金について解説しました。
こちらの記事もよく読まれています
代表社員 弁護士 谷原誠