交通事故紛争処理センターとは?利用するメリット・デメリットを解説
交通事故のトラブルは示談交渉や民事調停、訴訟だけでなく、交通事故紛争処理センターを利用して解決することも可能です。
本記事では、交通事故紛争処理センターを利用できるケースおよび、利用した際のメリット・デメリットについて解説します。
交通事故紛争処理センターとは?
公益財団法人交通事故紛争処理センターは、ADR(Alternative Dispute Resolution)機関の一つで、交通事故にあわれた方を対象に中立・公平な立場で紛争解決に向けたサポートを行います。
裁判によらない方法で紛争を解決することを目的としていますので、裁判以外の手段を用いて交通事故の問題を解消したい方向けの選択肢です。
センターでは自動車事故による損害賠償に関する法律相談や、和解あっせんが受けられ、担当弁護士は当事者の話や証拠の内容を十分に検討した上で紛争を解決します。
公益財団法人交通事故紛争処理センターは全国11か所にあり、申立人のお住まいの場所や事故地を管轄するセンターを利用することになります。
交通事故紛争処理センターの利用方法
交通事故紛争処理センターを利用した経験がある人はほとんどいませんので、こちらで利用方法をご確認ください。
電話予約
交通事故紛争処理センターは予約制となっているため、飛び込みで利用することはできません。
電話で予約申し込みの際には、事故の内容や相手方の保険会社および担当者、相談内容などについて聞かれますので、手元に交通事故に関連する資料を準備しておくとスムーズに予約を取ることができます。
相談時に用意する書類
交通事故紛争処理センターでは、紛争解決に向けた話し合いを行いますので、交通事故に関係する書類は必ず用意しなければなりません。
用意する主な書類は下記の通りですが、事故の状況等によって準備する書類は変わりますので、事前予約の際に確認してください。
- ・交通事故証明書
- ・事故発生状況報告書
- ・相手方の確認できる書類等
- ・保険会社等の賠償金提示明細書
- ・治療を受けた病院の診断書
- ・診療報酬明細書
- ・施術証明書
- ・治療費
- ・治療を受けた際の支出に関する明細書・領収書
- ・通院交通費
- ・休業損害証明書
- ・死亡診断書・死体検案書・葬儀関係費用
(死亡したケースに限る)
書類が揃っていないと話し合いは進みませんし、交通事故紛争処理センターに何度も足を運ぶことになります。
用意した書類は相談時に提出することになりますが、返却はされませんので、原本ではなくコピーを提出してください。
初回相談の流れ
交通事故紛争処理センターの初回相談では、担当となる弁護士と面会して紛争解決を前提とした法律相談や和解あっせんに向けた話し合いを行います。
担当弁護士は申立人の主張や提出した資料を確認しながら問題点を整理し、必要に応じて助言を行います。
あっせん手続きについても担当弁護士が担うことになり、途中で担当弁護士を変更することは原則できません。
和解あっせん
「和解あっせん」は、第三者が当事者の間に立ち、紛争解決に向けた支援を行うことをいいます。
担当弁護士は当事者双方から交通事故に関する話を聴取し、和解のためのあっせん案をまとめ、双方に提示します。
和解あっせんによって合意に至ったときは、担当弁護士が立会いの下、示談書または免責証書が作成され、その内容に基づいて慰謝料等の支払いが行われます。
人身事故に伴う紛争を解決するために交通事故紛争処理センターを利用した場合、和解するための必要資料が揃っていれば、3回で70%以上、5回までのあっせんで90%以上の和解が成立します。
交通事故紛争処理センターを利用する3つのメリット
交通事故紛争処理センターを利用する主なメリットは、次の3点です。
- 裁判より早期の紛争解決が見込める
- 費用無料で利用することができる
- 保険会社が審査結果を尊重する
それでは詳細を解説していきます。
裁判より早期の紛争解決が見込める
交通事故紛争処理センターを利用した場合、裁判よりも早期に紛争を解決することが見込めます。
相手が話し合いに応じない場合や、慰謝料の増額を目指す際は裁判で解決することも選択肢になりますが、裁判を行うことになれば長期化は避けられませんし、解決するまでに年単位の時間を要するケースも珍しくありません。
しかし、交通事故紛争処理センターは5回の話し合いで90%以上が和解成立している実績がありますので、できるだけ短い期間で紛争を終わらせたい場合に選択肢となります。
費用無料で利用することができる
交通事故紛争処理センターの利用費用は無料ですので、利用する際のハードルは低く、紛争を解決する際の支出を抑えることができます。
交通事故の紛争は当事者同士で解決するのは難しく、話し合いが難航すればトラブルに発展する可能性もあることから、専門家に相談・立ち会いをしてもらうことが望ましいです。
その点、交通事故紛争処理センターは弁護士がサポートしてくれるので心強いですし、担当弁護士は中立公正な立場で対応することになるため、相手方も話し合いに応じやすいのも利点です。
保険会社が審査結果を尊重する
交通事故の被害者が交通事故紛争処理センターを利用した場合、損害保険会社は審査結果を尊重することとなっていますので、和解が成立することとなります。
一方、交通事故紛争処理センターを利用した申立人については、審査内容に不服があれば訴訟提起することができますので、利用したことによる損害を被る心配はないのでご安心ください。
交通事故紛争処理センターを利用する3つのデメリット
交通事故紛争処理センターを利用する際は、メリットだけでなくデメリットについても確認してください。
主なデメリットは、次の3点です。
- 被害者本人が話し合いに出席しなければならない
- 時期によっては予約が取りにくい
- 和解成立が見込めない場合はあっせんが終了する
それでは詳細を解説していきます。
被害者本人が話し合いに出席しなければならない
交通事故紛争処理センターを利用する場合、損害賠償請求権のある人が原則出席することになります。
本人がやむを得ない事情で出席できないケースについては、担当弁護士の判断で事故の状況や本人の状況をよく把握している配偶者や親、子などが代理で出席することもできますが、原則は本人が対応しなければなりません。
時期によっては予約が取りにくい
交通事故紛争処理センターは無料で利用できるメリットがある反面、利用者が多いことで予約を取りにくいのがデメリットです。
センターは全国に11か所しかないため、お住まいの場所によっては行くこと自体が負担になることも考えられます。
また、裁判と比べると紛争を早期に解決することが期待できますが、示談に比べると時間を要する可能性があります。
和解成立が見込めない場合はあっせんが終了する
申立人があっせん内容に納得できない場合、担当弁護士の判断であっせんが終了することがあります。
交通事故紛争処理センターの担当弁護士は申立人の味方ではなく、立会人の立場であり、当事者が話し合って解決することを前提としています。
そのため、慰謝料については裁判所基準の満額を望むことは難しいですし、話し合いが難航すれば別の方法での紛争解決を迫られることも考えられます。
交通事故紛争処理センターを利用できないケース
交通事故が発生した場合でも、次に該当する場合には交通事故紛争処理センターを利用することはできません。
- ・加害者が自動車でない事故
- ・自身が契約している保険会社(共済組合)との保険金(共済金)の支払いに関する紛争
- ・自賠責保険(共済)後遺障害の等級認定・有無責等に関する紛争
- ・保険会社等間や医療機関、社会保険等との間の求償に係る紛争
- ・相手方の保険会社等が不明の場合
たとえば自転車と歩行者の事故や、自転車と自転車の事故による損害賠償に関する紛争や、自分が契約している保険会社等から支払われる保険金に関する紛争は利用対象外です。
下記に該当するケースも原則利用対象外となりますが、相手方が同意した場合に限り、利用できることがあります。
- ・加害者が任意自動車保険(共済)契約をしていない
- ・加害者が契約している任意自動車保険(共済)の約款に、被害者の直接請求権の規定がない
- ・加害者が契約している任意自動車共済が、JA共済連、こくみん共済 coop(全労済)、交協連、全自共または日火連以外である
交通事故の慰謝料の増額を目指す場合は?
慰謝料には相場がありますが、事情によっては、慰謝料が相場より増額される場合があります。
そのような場合には、弁護士事務所に依頼することを検討してください。
また、裁判をした場合の金額よりは低い金額となります。遅延損害金や弁護士費用相当額も認められません。
交通事故紛争処理センターは無料で利用できるメリットなどありますが、申立人が納得する慰謝料を得られるとは限りませんし、交通事故紛争処理センターの担当弁護士は中立の立場であるため、交渉等の代理人として依頼することもできません。
その点、弁護士事務所は示談交渉だけでなく、後遺障害の等級認定手続きなどのサポートにも対応しています。
交通事故に関する一連のサポートを受けたい場合は、弁護士事務所をご利用ください。
まとめ
交通事故紛争処理センターは利用しやすい特徴がありますが、予約が取りにくい状況であれば紛争解決までに時間を要しますし、担当弁護士を味方として相談することもできません。
利用する際には申立人が必要書類を準備することになるので、事務関係の負担が重くなる点にも注意してください。
弁護士事務所は書類作成や慰謝料の交渉を本人の代わりに担えるため、被害者が紛争解決に向けた労力を費やす必要がなくなります。
交通事故の話し合いは知識だけでなく経験も重要となりますので、紛争を満足する形で解決をしたい方は弁護士事務所に依頼してください。
代表社員 弁護士 谷原誠