当て逃げ事故の被害者になった場合の対応はどうすればいい?
当て逃げは、自動車に乗車中に物損事故を起こした加害者が事故現場から立ち去ることをいい、人身事故で現場から立ち去ったときはひき逃げに該当します。
当て逃げ事故は運転中の車だけでなく、駐車している車や物に接触した事故も含まれます。
被害にあった際は加害者を特定するための行動が必要になりますし、加害者を特定した後には、示談交渉などの対応をしなければなりません。
本記事では、当て逃げ事故に該当するケースと、被害者がやるべき対処法について解説します。
目次
当て逃げの意味と責任
当て逃げは、前述のように、自動車を他の自動車等に衝突させて逃げることをいいます。
刑事・民事・行政上で重い責任に問われることになりますので、交通事故の加害者になったときは、適切に対処することが求められます。
当て逃げは事故現場から立ち去ること
運転している車同士の事故だけでなく、停止している車などに接触した際、その場から離れただけでも当て逃げになってしまうので注意が必要です。
また、法律上においてペットは「物」に分類されますので、他人が飼っているペットに接触後、現場から離れてしまったケースも当て逃げになります。
当て逃げの刑事上の責任
交通事故が発生した際、加害者には救護義務・危険防止義務・報告義務が課されます。
当て逃げ事故は物損事故なので救護義務は生じませんが、交通事故が発生した時点で怪我人の有無はわかりませんので、事故状況は必ず確認しなければいけません。
危険防止義務は、交通事故で事故現場の道路が通行できなくなる等の影響による二次災害発生を防ぐための措置を課すもので、危険防止義務に違反すると1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処されます。
交通事故が発生したら運転している車を止め、発煙筒や停止表示機材を使用するなどして、事故が起きたことを後続車などに知らせてください。
報告義務は、警察に事故が発生したことを知らせる義務をいい、警察への連絡を怠った際は、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金に処されます。
警察への連絡は人身事故だけを対象にしているイメージがあるかもしれませんが、物損事故でも報告義務が課されています。
当て逃げした時点で報告義務を怠ったと判断されますので、その場から立ち去らないことはもちろんのこと、警察への連絡も忘れずに行ってください。
当て逃げの民事上の責任
交通事故を起こした加害者は被害者から、事故による損害に対する賠償責任を負うことになります。
物損事故の場合、事故で損傷した物の修理代金等が損害賠償金として請求され、具体的な請求金額は加害者と被害者が話し合って決定します。
当て逃げで過失割合が10:0になれば、加害者が事故で生じた損害を全額補償することになるため、当て逃げは金銭的な負担も重くなる行為です。
当て逃げの行政上の責任
物損事故は適切な処置を行えば違反点数は付されませんが、当て逃げは行政上の責任も問われることになります。
当て逃げに際して付される違反点数は、次の通りです。
- ・物損事故の場合の危険防止等措置義務違反 5点
- ・安全運転義務違反 2点
前歴が無い人でも、違反点数が6点になれば30日間の免許停止(免停)処分を受けることになり、違反点数7点は前歴0回でも免停30日、前歴1回の人については90日の免停処分が下されます。
物損事故は適切な対応を行えば、行政上のペナルティを受けずに済みますので、運転中に違和感や異変を感じたら、一旦車を停止させて現場を確認するなどの行動を取ってください。
当て逃げに対する損害賠償請求の時効は原則3年
当て逃げの加害者が特定できているときは、損害賠償を請求できる期間は3年で、3年を経過すると時効により損害賠償をできなくなります。
当て逃げにより怪我をした場合については請求期間が5年になりますので、交通事故で怪我を負った場合には、証拠を保全するために病院で診断書を取得してください。
交通事故の加害者が不明な場合、加害者が判明してから3年は損害賠償を請求することができます。
ただし、加害者不明な状況で20年が経過してしまうと時効が成立してしまうので、早期に加害者を特定し、被った損害に対する賠償を求めてください。
交通事故で当て逃げされた時の対応
当て逃げに関するトラブルは、被害者となった際の対応方法も知っておかないと、泣き寝入りになる可能性がありますので気を付けてください。
警察に事故が発生したことを伝える
当て逃げに気が付きましたら、警察に連絡してください。
警察に事前に報告していれば、当て逃げをした加害者が後日警察に出頭した際に、警察から出頭した旨の連絡が入ります。
警察と連携することで事故対応もスムーズになりますので、当て逃げが判明しましたら警察に状況を説明してください。
なお、交通事故が発生した場合、警察から次の事項を聞かれるため、連絡する前に現場の状況を確認してください。
- ・事故発生の場所
- ・事故発生の日時
- ・負傷者の有無
- ・負傷者の症状
- ・破損物の有無
- ・破損状況
- ・積載物の有無
- ・事故で処理した内容
当て逃げに関する証拠の保全
当て逃げに関する証拠は加害者を特定するだけでなく、示談にも用いますので、加害者を特定できる証拠をできるだけ集めてください。
- ・加害者の車種・車両ナンバー
- ・当て逃げされた箇所が確認できるもの
- ・当て逃げによる損傷が確認できるもの
- ・事故現場の周囲の状況が把握できるもの
車を運転しているときに当て逃げ被害にあった場合、車にドライブレコーダーを搭載していればドライブレコーダーが証拠になりますし、交差点の事故であれば防犯カメラ等で状況を確認できます。
停車中の車にぶつけられた場合には、接触した箇所を写真として残すなど、事故と損害状況が確認できるものを証拠として残しておくことが大切です。
当て逃げの加害者を特定できましたら、その相手と示談交渉をすることになりますが、被害を受けた証拠を提示できなければ、十分な補償を受けられない可能性があります。
そのため、満額の損害賠償金を得るためにも、事故に関する証拠は保全してください。
加入している保険会社に連絡
加害者が判明すれば、損傷した物に対する修理代等を補償してもらうことになりますが、加害者が見つかるまでの間は、被害者が修理費を捻出することになります。
自動車保険には人身事故に対する補償だけでなく車両保険もあり、車両保険に加入している方については、保険適用で自己負担額を軽減できます。
保険を適用するためには、事故が発生したことを明らかにする書類として交通事故証明書や物件事故報告書が必要になりますし、保険内容によっては当て逃げが対象外となるものもあるため、事前に保険内容を確認してください。
なお、当て逃げ事故で保険を適用すると等級が下がるため、車の損傷が軽微なときは保険を適用しないのも選択肢です。
怪我人がいる場合の対処法
交通事故で負った怪我の治療費等も損害賠償の対象になりますので、治療するだけでなく、病院で診断書を取得してください。
病院に行かなければ事故と怪我の因果関係はわかりませんし、診断書がないと治療費等を補償内容に含められない可能性が出てきます。
車同士の事故は自覚症状がない場合でも、怪我を負っていることがあるため、身体の異常を感じましたら病院を受診してください。
当て逃げされたことに気が付かなかった時の対応
当て逃げされたことに後から気が付いた際にすべき行動は、事故発生直後に当て逃げに気が付いた場合と同じです。
事故が判明しましたら警察に連絡するのはもちろんのこと、連絡した時点で把握できる証拠等は保全してください。
車に傷がある場合は、いつからその傷が存在していたかが焦点になりますので、写真を撮るなどして、事故発生直後の状況が確認できるよう証拠保全をします。
駐車場で当て逃げを受けた場合には、駐車場に設置してある防犯・監視カメラで情報が確認できる可能性があるため、駐車場の所有者・管理人に事情を伝え、防犯・監視カメラに記録されている映像を確認してください。
普段駐車場を利用している人が映像に映っていれば、その人に事故発生前後の状況を聞くことができますので、色々な手段を用いて証拠を集めてください。
当て逃げ対策と注意点
当て逃げを100%防ぐのは難しいですが、当て逃げを受けないような対策は可能ですし、当て逃げされたとしても、追跡できる証拠を集めておけば泣き寝入りをせずに済みます。
- ・車同士の間隔を空けて駐車をする
- ・駐車場の出入口・角に車を置かない
- ・防犯・監視カメラから見える場所に駐車
- ・ドライブレコーダーの設置
車同士の間隔が狭い駐車場は接触事故が起こりやすいため、駐車スペースの広い駐車場を利用することも検討してください。
駐車場で発生する当て逃げは、車同士の接触が大半なので、車がぶつかりにくい場所に駐車することが大切です。
駐車場の出入口や角付近は接触事故が発生しやすく、利便性が高い場所はその分だけ車の出入りが激しくなりますので、駐車場の奥に止めるなどの対策も有効です。
当て逃げに後から気が付いた場合、事故発生当時の状況を確認できる情報の収集が不可欠です。
運転中の当て逃げについてはドライブレコーダーが効果的ですし、ドライブレコーダーの種類によっては、停車中でも記録可能なタイプも存在します。
当て逃げした加害者が判明した際の対処法
当て逃げした加害者が見つかったとしても、示談交渉がスムーズに進むとは限りませんので、色々なケースを想定する必要があります。
示談交渉
当て逃げは物損事故となりますので、ぶつけられたことで生じた損害を補償してもらうために、被害者に損害賠償請求を行います。
加害者が保険に加入している場合には保険会社と交渉することになりますが、保険に加入していない時は加害者本人か加害者が依頼した弁護士と話し合いをしなければなりません。
保険会社の担当者は示談交渉の専門家ですし、弁護士も法律のプロですので、加害者側も示談交渉を有利に展開するために弁護士へ依頼することも検討してください。
当て逃げの過失割合の決定
当て逃げによる示談交渉の場では、過失割合が焦点になります。
過失割合とは、事故が発生した責任の比率を表すもので、加害者と被害者が明確であったとしても、過失割合が10:0になるとは限りません。
たとえば停車中の車に加害者が追突した場合、被害者に落ち度はないので過失割合は10:0になりますが、被害者が急停止したことで加害者が追突してしまったケースでは、被害者側にも過失があるとみなされる可能性があります。
被害者に過失があると判断されれば、その分だけ損害賠償として請求できる額は減りますので、被害者は過失が無かったことを証明する必要があります。
加害者が当て逃げを認めなかった場合
加害者が特定できたとしても、当て逃げを認めるとは限らないため、当て逃げがあった事実を証明できるよう準備しなければなりません。
ドライブレコーダーで加害者の車両ナンバーが確認できれば、当て逃げ犯を特定できますし、車種だけでも他の状況から加害者であることを絞ることができます。
車同士の接触事故であれば、事故の状況と加害者と被害者の傷を照合することで特定できる場合もありますので、客観的に事故状況がわかるように証拠を集めてください。
当て逃げ事故で困ったら弁護士に相談
当て逃げの被害者になった場合、すぐに警察に連絡し、事故状況を報告してください。
車同士の事故は衝撃が大きく、後からむち打ちなどの症状が出てくることもあるので、身体の不調を感じましたら病院を受診してください。
当て逃げした加害者が判明しましたら示談交渉を行うことになりますが、交渉には時間と労力が伴います。
加害者側の意見に流されないためにも、示談交渉をする際は弁護士に依頼することも検討してください。