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自転車の違反行為に対する罰則内容と罰金・反則金制度

最終更新日 2024年 10月11日

自転車の違反行為に対する罰則内容と罰金・反則金の違い

自転車は自動車やバイクと違い、運転するのに免許を必要としませんが、交通ルールに違反すると罰則や反則金の対象になります。

自転車に対する罰則は年々厳格化しており、自転車の危険行為に対しては相応の処罰が下されますので注意してください。

本記事では、自転車違反行為と罰則、反則金の取扱いについて解説します。

自転車による危険行為と罰則

平成27年6月1日の交通ルール改正で、自転車運転者の危険行為の取り締まりが厳しくなっています。

自転車の交通事故の状況

警察庁のホームページに掲載されている資料(※)によると、令和4年中に発生した自転車関連事故件数は69,985件で、全交通事故に占める構成比は平成28年以降増加傾向にあります。

自転車関連の死亡・重傷事故の相手当事者の内訳としては、対自動車が最も多く約76%で、自動車との事故で最も多いのが出会い頭衝突による事故(約55%)です。

出会い頭衝突事故では、自転車の運転者の安全不確認や一時不停止等の違反が事故の発生要因として多く見受けられますので、交通ルールを守ることが何よりも大切です。

交通事故が発生した際の過失割合は、自転車と自動車の事故では自動車側の過失割合が高くなる傾向にありますが、自転車運転者に安全不確認等があれば、自転車側の過失も問われるので注意してください。

また、警察は自転車の交通違反に対処するため、自転車運転者の信号無視や一時不停止等に対して指導警告を行っており、令和4年中では約132万件の指導警告票を交付しています。

悪質・危険な交通違反に対しては検挙措置を講じており、交通違反の検挙件数は約25,000件に上ります。

出典:自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~(警察庁)

自転車の危険行為

自転車の危険行為は、交通の危険を生じさせるおそれのある一定の違反行為をいい、危険行為を繰り返す自転車運転者は、自転車運転者講習の対象になります。

危険行為に該当する種類は以前は14類型でしたが、改正道路交通法の施行により、令和2年6月30日から交通の危険のおそれや、著しい交通の危険事故が起こす危険がある妨害運転が危険行為に追加されました。

<危険行為(15類型)>

  • ・信号無視
  • ・通行禁止違反
  • ・歩行者用道路徐行違反(徐行違反)
  • ・通行区分違反
  • ・路側帯進行方法違反
  • ・遮断踏切立入り
  • ・交差点安全進行義務違反等
  • ・交差点優先車妨害等
  • ・環状交差点安全進行義務違反等
  • ・指定場所一時不停止等
  • ・歩道通行時の通行方法違反
  • ・制動装置不良自転車運転
  • ・酒酔い運転
  • ・安全運転義務違反
  • ・妨害運転

自転車運転者講習制度

自転車運転者講習制度は、平成27年(2015年)6月1日から交通の危険を生じさせるおそれのある危険行為を反復して行った、自転車の運転者を対象に実施する制度です。

自転車の危険行為を3年以内に2回以上反復して行った者のうち、自転車運転者講習の対象者となった方は、都道府県公安委員会から自転車運転者講習の受講命令が下されます。

対象者は、自転車運転者講習受講命令書を交付されてから3か月以内に受講しなければならず、受講命令に従わなかった場合には5万円以下の罰金に処されます。

自転車運転者講習の受講時間は3時間で、講習を受ける際には手数料として6,000円を支払わなければなりません。

法律上の自転車の扱い

自転車は、子どもから高齢者まで運転することができる乗り物ですが、法律上の扱いは歩行者と大きく異なるため、自転車に定められているルールを理解しておくことが大切です。

自転車は法律上「軽車両」

道路交通法において、自転車は「軽車両」と定められており、軽車両は歩道と車道の区別のあるところは原則車道を通行しなければなりません。

自転車のうち「普通自転車」に分類されるものについては、例外的に歩道通行が可能となりますが、やむを得ない場合などを除き、自転車道を通行することになります。

普通自転車は一般に使用されている自転車のうち、車体の大きさおよび構造が内閣府令で定める基準に適合する自転車で、他の車両をけん引していないものをいいます。

<内閣府令による基準>

車体の大きさ
  • ・長さ 190㎝以内
  • ・幅 60㎝以内
車体の構造
  • ・4輪以下
  • ・側車をつけていない
    (補助輪は除く)
  • ・運転者以外の乗車装置を備えていない(幼児用乗車装置を除く)
  • ・ブレーキが走行中容易に
    操作できる位置にある
  • ・歩行者に危害を及ぼすおそれが
    ある鋭利な突出部がない
<普通自転車が歩道を通行することができるケース>

  • ・歩道に「普通自転車歩道通行可」の標識等がある
  • ・自転車の運転者が13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体の不自由な人である
  • ・普通自転車の通行の安全を確保するためにやむを得ないと認められる場合

やむを得ないと認められるケースとしては、道路工事や連続した駐車車両などがあり、車道の左側部分を通行するのが困難な場所を通行する際、普通自転車の通行の安全を確保する必要がある状況などが挙げられます。

また、著しく自動車の通行量が多く道路で、車道の幅が狭い等の理由に追越しをしようとする自動車などの接触事故の危険性がある場合についても、歩道を通行することができます。

令和4年11月1日から自転車安全利用五則が改正

自転車を安全に利用するためのルールとして定められている自転車安全利用五則が、令和4年11月1日から改正されています。

旧自転車安全利用五則では「車道よりを徐行する」との記載がありましたが、その文言が削除され、改正後は自転車は原則車道を通行しなければならない点が強調されています。

ヘルメット着用は子どものみに限定されていましたが、大人にも着用を求める内容に変更されており、令和5年4月1日からはすべての自転車利用者に対して、乗車用ヘルメット着用の努力義務が課されています。

<自転車安全利用五則>

  • ・車道が原則、左側を通行歩道は例外、歩行者を優先
  • ・交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
  • ・夜間はライトを点灯
  • ・飲酒運転は禁止
  • ・ヘルメットを着用

自転車にも青切符が導入される

令和6年3月5日に道路交通法改正案が閣議決定され、2年後を目途に自転車違反に対して青切符が導入される見込みです。

交通反則通告制度とは

交通反則通告制度は、「交通反則告知書」(いわゆる「青切符」)が交付される制度です。

運転者がした一定の道路交通法違反について、反則者が警察からの通告を受けて反則金を納付した場合、刑事裁判や家庭裁判の審判を受けないで事件が処理されます。

現行の交通反則通告制度で青切符の交付対象となるのは、自動車と原動機付自転車であり、自転車を含む軽車両は対象外となっています。

しかし、交通違反が急増している状況を踏まえ、現認可能・明白・定型的な違反行為については、自転車についても自動車等と同様に青切符が導入される見込みです。

反則行為の対象となる「現認可能な明白で定型的な違反行為」は、信号無視や一時不停止など約150種類、反則行為となる自転車の違反行為は約110種類あります。

普通自転車の歩道徐行等義務違反等など、自転車の固有違反行為としては5種類存在し、それらの行為に該当した場合には青切符が交付されますので注意してください。

青切符が交付された際に納めることになる反則金の額は、政令で決まることになりますが、5,000円から12,000円程度になると想定されています。

自転車に青切符が適用されるケース

自転車運転者に青切符が交付されるのは、16歳以上の人です。

対象者を16歳以上にしているのは、16歳未満の方は交通ルールに関する知識の程度や交通反則通告制度の効果等に関する理解度に個人差が大きく、交通反則通告制度による画一的な処理には馴染まないことを理由にしています。

一方で、14歳未満の者は刑事未成年であり、違反行為について刑罰は科せられませんが、14歳未満の者が危険な違反を行ったことが確認された場合、個人を特定しない形で、その情報を警察・学校・地域で共有するとしています。
(法令違反に当たる行為が発見された場合は、児童相談所への通告等が行われます。)

青切符の交付は16歳以上ですが、交通ルールに違反した場合は年齢問わず相応の対応が行われますので、違反行為をしないよう気を付けてください。

自転車の取り締まり内容と罰金・反則金の違い

自転車の運転が交通ルールに違反した場合、警察から指導を受けるだけでなく、刑事罰の対象になる可能性もあります。

自転車指導警告カード

自転車指導警告カードは、レッドカードやイエローカードと呼称されるもので、警察官などに危険運転が発見された場合に渡される警告票です。

青切符の交付年齢は16歳以上でしたが、自転車指導警告カードの対象となるのは14歳以上の運転者です。

違反者に対しては警告が促されますが、自転車指導警告カードは刑事罰ではないため、罰金や罰則が適用されることはありません

しかし、悪質な違反行為に対しては赤切符が交付されるリスクが伴うことから、自転車指導警告カードの交付を受けないような運転を心掛けてください。

赤切符

赤切符は、令和4年(2022年)10月から、自転車の交通違反に対する取り締まりを強化する目的で作られた制度です。

赤切符の対象となるのは自転車指導警告カードと同様、信号無視や通行区分違反等の違反行為により、警察官から悪質な運転をしていると判断された場合です。

警告で済んでいた違反行為であっても、赤切符が導入されたことで刑事罰の対象となる可能性があります

刑事裁判で有罪判決が下されれば前科が付いてしまいますので、自転車の運転には今まで以上に気を付けなければいけません。

罰金と反則金は性質が異なる

罰金と反則金はお金を支払うことになる点では同じですが、性質は異なります。

罰金は刑事責任を問う刑事罰であるのに対し、反則金は行政責任を問う行政罰です。

行政罰としての反則金は制裁金の性格を持ち、反則金の対象となったとしても前科が付くことはありません。

交通違反をして交通反則告知書(青切符)を受けた人は、「交通反則通告制度」 が適用されますが、反則金を納付すれば刑事裁判(家庭裁判所)の審判を受けなくなるため、前科を付けないためには指定された期限までに反則金を納めることが重要になります。

交通反則告知書による納付期限は、青切符を受け取った日の翌日から7日間です。

告知を受けた日の翌日から7日以内の納付は「仮納付」といい、仮納付を行えば交通反則通告センター等に行く必要はありません。

仮納付をしなかった場合には通告を受けることになり、通告書を受け取った日の翌日から10日間のうちに納付することが求められます。

自転車の主な交通ルール違反の種類と罰則

自転車の主な交通ルール違反に対する罰則は、下記の通りです。
自転車の違反に対する罰則は、自動車の交通違反と同様に重いため、運転には十分注意してください。

<自転車の主な交通ルール違反の罰則>

違反名
(道路交通法の条文)
条文要旨 罰則等
信号無視
(第7条)
信号機の表示する信号
または、
警察官等の手信号等に
従わなければならない
3年以下の懲役
または
5万円以下の罰金
通行の
禁止等
(第8条)
道路標識等により
その通行を禁止されている道路または
その部分を通行してはならない
3年以下の懲役
または
5万円以下の罰金
車道通行
(第17条
第1項)
歩車道の区別のある
道路では、
車道を通行
しなければならない
3年以下の懲役
または
5万円以下の罰金
左側通行等
(第17条
第4項)
道路の中央から
左の部分を通行
しなければならない
3年以下の懲役
または
5万円以下の罰金
軽車両の
並走の禁止
(第19条)
自転車など軽車両は、
他の軽車両と
並進してはならない
2万円以下の罰金
または
科料
一時不停止
(第43条)
道路標識等により
一時停止すべきことが
指定されている
ときは、
停止線の直前で一時停止
しなければならない
3年以下の懲役
または
5万円以下の罰金
無灯火
(第52条)
夜間に道路を
通行するときは、
灯火をつけなければならない
5万円以下の罰金
二人乗り等の禁止
(第57条
第2項)
都道府県公安委員会が
定める乗車制限に反して
乗車させ、
自転車を運転
してはならない
2万円以下の罰金
または
科料
普通自転車の歩道通行
(第63条の
4第2項)
道路標識等により
通行することができる
歩道を
通行するときは、
歩道の中央から
車道寄りの部分を

徐行しなければならず、普通自転車の進行が
歩行者の通行を

妨げることとなるときは、一時停止しなければ
ならない
2万円以下の罰金
または
科料
自転車横断帯による
交差点通行
(第63条の
7第1項)
交差点またはその付近に自転車横断帯があるときは、
その自転車横断帯を進行しなければならない
2万円以下の罰金
または
科料
飲酒運転の禁止
(第65条
第1項)
酒気を帯びて運転してはならない 5年以下の懲役
または
100万円以下の罰金

納付に応じない場合や今後注意すべきこととは?

反則金を支払わなかったとしても、すぐに逮捕されることはありませんが、刑事事件に発展するリスクは存在します。

「交通反則告知書」(青切符)が交付されると交通反則通告制度が適用されますので、反則者は期日まで交付された反則金の納付書で支払いを済ませれば、成人の反則者は刑事事件として刑罰は科されなくなります。

納付すれば刑事罰に問われなくなる一方で、未納のままでいると刑事事件として裁判が行われ、刑事罰を受ける可能性があります

罰金刑であっても、刑事罰の対象になれば前科が付きますので、刑事事件として扱われた場合の影響は非常に大きいです。

青切符を無視しても起訴されないケースも存在しますが、不起訴になるかは状況によって違います。

警察の対応に疑問がある場合や、青切符が交付されたことに納得できない場合は、弁護士に相談することも検討してください。

まとめ

自転車に対する取り締まりは厳しくなっていますし、罰則も強化されています。

交通事故が発生していなくても、危険行為があったと判断されれば、青切符が切られる可能性がありますし、反復して違反を繰り返せば自転車運転者講習を受けることになります。

万が一交通事故の加害者となれば、自動車事故と同様、被害者に対して損害賠償金を支払わなければなりません。

自転車との交通事故で被害者となった場合には、損害賠償金を請求するための手続き等を要しますので、交通事故の当事者となった際は1度弁護士にご相談ください。

※本記事は、令和6年3月31日現在の法令に基づき執筆しています。

交通事故SOSでは
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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠