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線状痕の外貌醜状の後遺障害等級と慰謝料の相場

最終更新日 2024年 08月07日

線状痕の外貌醜状の後遺障害等級と慰謝料の相場

この記事を読むとわかること

 
交通事故の被害者は、事故で怪我を負うだけでなく、外見に瘢痕(傷痕)や治療痕が残ってしまうことがあります。

外貌醜状が後遺障害として認定されれば、加害者に対して慰謝料を求めることができますが、瘢痕の箇所や大きさによっては慰謝料を請求できないケースや、受け取れる金額が低くなってしまうことがあるので注意が必要です。

こちらの記事では、線状痕の外貌醜状の後遺障害等級および、後遺障害に対する慰謝料の相場について解説します。

線状痕の外貌醜状とは

線状痕とは、切り傷や手術をした際に残る、線のような瘢痕(はんこん)をいいます

たとえば交通事故で自動車等と接触した場合、地面に強く接触したことで擦過傷を負うことや、ガラスなどの鋭利な物とぶつかったことにより、皮膚が切れてしまうことがあります。

手術を要する負傷をした際には、手術痕として線状痕が残ってしまう場合もあるため、交通事故による直接的な負傷だけが線状痕の原因とは限りません。

外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)は、頭や顔、首といった日常的に人目につく部分に瘢痕や線状痕が残ることをいいます

顔などに残った傷は外貌醜状に該当する可能性が高いですが、外見上で影響が無い場所にできた線状痕は外貌醜状にはなりません。

線状痕が長さや大きさも外貌醜状に該当するかの判断材料となるため、外貌醜状による慰謝料を請求する際は、線状痕がどのような形で残ったかを示す必要があります。

交通事故による線状痕の外貌醜状の後遺障害等級と認定基準

交通事故による線状痕の外貌醜状の後遺障害は、瘢痕等の場所や大きさによって認定される等級が変わってきます。

後遺障害とは

後遺障害とは、交通事故で負った怪我の治療が完治した後も、肉体的・精神的に毀損が残った状態をいいます。

後遺障害と後遺症の違いは、交通事故との因果関係の有無で、交通事故が原因で残った毀損は「後遺障害」、交通事故との因果関係が無いものは「後遺症」に区分されます。

後遺症を負った場合でも、交通事故が原因と認められなければ後遺障害にはなりませんので、交通事故との因果関係を立証することが重要です。

外貌醜状が後遺障害等級として認定されるための共通事項

外貌醜状による後遺障害は、人目につく程度以上のものが対象です。

交通事故が原因で線状痕が残ったとしても、髪の毛や眉毛などで隠れる部分の線状痕は、醜状として扱われません。

線状痕の面積や長さは等級に直結しますので、後遺障害等級認定を受ける際は線状痕の大きさを正確に測定するのもポイントです。

2か所以上の瘢痕や線状痕がある場合、痕が隣り合っているなどして、一つの瘢痕と同程度の症状となっているときは、痕の面積や長さを合算して等級を判定します。

線状痕以外に外貌醜状の後遺障害として認定されるものとしては、顔面神経麻痺による口の歪みや鼻や耳などの部位欠損、皮膚の色素脱失等の色調異常等があります。

交通事故で傷を負っていなくても、外貌が以前の状態に戻らない場合には、後遺障害として認定される可能性がありますので、症状が残った際は認定を受けるための手続きを行ってください。

後遺障害等級第7級12号に該当する外貌醜状

後遺障害等級第7級12号に該当する線状痕の外貌醜状は、「外貌に著しい醜状を残すもの」をいいます。

「外貌に著しい醜状を残すもの」に該当する線状痕等は次の通りで、人目につく程度以上のものが対象です。

部位 認定基準
頭部 手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕または、頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
顔面部 鶏卵大面以上の瘢痕または、10円銅貨大以上の組織陥没
頸部 手のひら大以上の瘢痕

 

後遺障害等級第9級16号に該当する外貌醜状

後遺障害等級第9級16号に該当する線状痕の外貌醜状は、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」をいいます。

「外貌に相当程度の醜状を残すもの」は、原則顔面部に長さ5cm以上の線状痕をいい、人目につく程度以上のものが対象です。

部位 認定基準
顔面部 長さ5cm以上の線状痕

 

後遺障害等級第12級14号に該当する外貌醜状

後遺障害等級第12級14号に該当する線状痕の外貌醜状は、「外貌に醜状を残すもの」をいいます。

「外貌に醜状を残すもの」に該当するものは下記の通りで、他の等級と同様、人目につく程度以上のものであることが認定を受けるための条件となります。

部位 認定基準
頭部 鶏卵大面の瘢痕または、頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
顔面部 10円銅貨大以上の瘢痕または、長さ3cm以上の線状痕
頸部 鶏卵大面以上の瘢痕

 

交通事故による線状痕の外貌醜状に対する慰謝料の相場

交通事故で負った線状痕の外貌醜状に対する慰謝料は、障害等級によって異なり、慰謝料を計算する際に用いる基準によっても受け取れる金額は上下します。

後遺障害慰謝料の基準は、次の3種類です。

<後遺障害慰謝料の基準>

自賠責保険基準 自賠責保険から支払われる慰謝料を計算するための基準
任意保険基準 保険会社ごとに設定している基準
弁護士基準
(裁判基準)
交通事故の慰謝料を計算する際に用いる基準

 
<外貌醜状の後遺障害等級に応じた慰謝料相場>

後遺障害等級 自賠責保険基準 弁護士基準
第7級 419万円 1,000万円
第9級 245万円 690万円
第12級 94万円 290万円

※各基準の慰謝料の相場は目安です。

弁護士基準(裁判基準)は、自賠責保険基準よりも受け取れる慰謝料の額は大きくなりますので、症状に応じた適切な慰謝料を求めたい場合は、弁護士基準を用いることが望ましいです。

一方で、弁護士基準は裁判で慰謝料を求めた際に受け取ることができる金額をいいますので、相手が示談に応じない場合は裁判に発展することも考えられます。

状況次第では裁判で解決することも選択肢となりますが、当初から弁護士に代理人として依頼していれば、示談で弁護士基準による慰謝料を受け取ることも可能です。

外貌醜状と逸失利益の関係性

後遺障害逸失利益は、交通事故で後遺障害を負ったことが原因で逸した、本来得られるはずだった収入に対する補償をいいます。

後遺障害逸失利益の計算は下記の通りで、認定された後遺障害等級に応じて受け取れる逸失利益の額は変動します。

後遺障害逸失利益の計算式

基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数=後遺障害逸失利益

基礎収入は、原則として交通事故が発生した前年の収入をベースに算出します。

労働能力喪失率は後遺障害等級に応じて定められており、外貌醜状による症状が重い人ほど高い喪失率が適用されます。

ライプニッツ係数は、逸失利益を預金した際に生じる利息を前もって差し引くための係数で、被害者の年齢が若いほど係数が高くなります。

外貌醜状に対する後遺障害逸失利益で問題となるのは、外貌醜状を負ったことによる労働力の低下です。

加害者側の保険会社は、保険金の支払額を抑えるために、外貌醜状による労働能力の影響を低く見積もることが予想されます。

被害者の仕事内容によっては、外貌醜状がもたらす労働能力への影響が限定的である可能性も考えられますが、外貌醜状が原因で労働能力が大きく低下する職業も存在します。

労働能力の喪失が認められなければ、後遺障害逸失利益が無いと判断されかねませんので、被害者は収入と外貌醜状の関係性や影響について立証しなければなりません。


 

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線状痕の外貌醜状による後遺障害等級認定を受けるためのポイント

線状痕の外貌醜状を後遺障害として認定してもらうためには、後遺障害等級認定申請が必要です。

申請する際は、交通事故で負った後遺症が後遺障害に該当することを立証するための資料を揃えてください。

線状痕の外貌醜状の後遺障害認定申請の手順
  • 医師に症状固定の診断を受ける
  • 医師から後遺障害診断書を受け取る
  • 加害者が加入する保険会社に必要書類を提出し、後遺障害等級認定申請を行う
  • 損害保険料率算出機構で審査
  • 審査内容に応じた後遺障害の等級認定を受ける

症状固定は、交通事故で負った怪我が、治療を受け続けても改善する見込みがない状態をいいます。

医師は怪我等を経過観察し、症状固定に該当するかを判断しますので、治療する目的だけでなく、後遺障害の認定を受けるためにも通院が必要です。

外貌醜状による後遺障害は、外見に醜状が存在することが条件となるため、傷痕等が残った場所の確認は不可欠です。

怪我した場所が外見に支障がない場所であれば外貌醜状にはなりませんし、傷痕や線状痕が残ったとしても、他人から見て醜状と思われるような状態でなければ、後遺障害として認められません。

線状痕の外貌醜状の場合、傷の大きさや長さが等級に影響を及ぼすことから、認定時には面接調査で症状の程度や部位などをチェックされます。

外貌醜状による後遺障害等級に該当する傷痕等の基準は、本記事前段の「交通事故による線状痕の外貌醜状の後遺障害等級と認定基準」に記載してありますので、弁護士と協力して傷痕・線状痕の計測等を正しく行ってください。

交通事故による瘢痕の男女差について

交通事故で生じた外貌醜状の扱いは、従前男女間で差がありました。

障害等級は「労働者災害補償保険法施行規則」で定められていますが、障害が同程度だったとしても、昔は男性が認定される等級は女性より低かったです。

しかし、平成22年の裁判において、障害等級を男女で区別する扱いが憲法違反である判決が下ったことにより、平成23年2月1日に規定が改正され、障害等級の男女差は解消されました。

現在は、後遺障害等級認定は外貌醜状の状態をもって審査が行われますので、性別が影響することはありません。

そのため、男性であったとしても、女性と同等の慰謝料を受け取ることができます。

<従前と現行の後遺障害等級>

従前 現行
等級 身体障害 等級 身体障害
第7級 12号
女性の外貌に著しい醜状を残すもの      
第7級 12号
外貌に著しい醜状を残すもの
第9級 第9級 16号
外貌に相当程度の醜状を残すもの
第12級 13号
男性の外貌に著しい醜状を残すもの
14号
女性の外貌に醜状を残すもの
第12級 14号
外貌に醜状を残すもの
第14級 10号
男性の外貌に醜状を残すもの
第14級
従前
等級 身体障害
第7級 12号
女性の外貌に著しい醜状を残すもの
第9級
第12級 13号
男性の外貌に著しい醜状を残すもの
14号
女性の外貌に醜状を残すもの
第14級 10号
男性の外貌に醜状を残すもの
現行
等級 身体障害
第7級 12号
外貌に著しい醜状を残すもの
第9級 16号
外貌に相当程度の醜状を残すもの
第12級 14号
外貌に醜状を残すもの
第14級

交通事故で負った外貌醜状に関するトラブルは弁護士に要相談

交通事故で負った線状痕を後遺障害として認定を受けるためには、交通事故が発生した後の行動がとても大切です。

病院で治療を受けることはもちろんのこと、怪我の経過観察を行っていないと、後遺障害として認定されません。

外貌醜状の等級審査は、書類だけでなく面接による審査も行われます。

線状痕等の状態によって後遺障害等級は変わりますし、線状痕を負った場所によっては、外貌醜状と認められない可能性もあるので注意してください。

後遺障害として認めてもらい、症状に応じた等級認定を受けるためには準備や対策が不可欠です。

交通事故対応を専門にしている弁護士は、後遺障害等級認定を受けるために必要なポイントを把握していますので、交通事故に関するトラブルは専門の弁護士にご相談ください。

 
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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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