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電動キックボードの交通事故に遭った時の対処法。被害者が請求できる慰謝料の相場は?

最終更新日 2024年 11月01日

電動キックボードの交通事故に遭った時の対処法。被害者が請求できる慰謝料の相場は?

この記事を読むとわかること

 
電動キックボードは新しい交通手段として注目されており、街中でも見かけるようになっています。

気軽に乗れる利便性が魅力である一方、電動キックボードによる交通事故の急増が問題視されています。

そこで本記事では、電動キックボードに関する基礎知識と、交通事故に遭った場合の対処法、被害者となった際に請求できる慰謝料の相場について解説します。

※本稿は、令和6年10月現在の法令に基づいています。

電動キックボードとは?免許不要って本当?法改正についても解説

電動キックボードは最近になって認知度が上がった乗り物なので、交通ルールを正確に把握している人は少なく、電動キックボードに関する法律は令和5年に大幅に改正されています。

電動キックボードは法律上では「車両」に該当

電動キックボードは、道路交通法上の車両に該当します。

道路交通法上の車両は、自転車などの軽車両と原動機付自転車(電動バイク)、自動車に区分されますが、電動キックボードについては電動式モーターの定格出力等に応じて車両区分が異なります。

たとえば、原動機の定格出力が0.60キロワット以下の電動キックボードは、道路交通法上では「原動機付自転車」に該当します。

原動機付自転車に該当する電動キックボードのうち、大きさや最高速度などの基準を満たすものは「特定小型原動機付自転車」、それ以外のものは「一般原動機付自転車」に区分されます。

定格出力が0.60キロワットを超える電動キックボードは、出力に応じて道路交通法上の普通自動二輪車等に該当しますので、電動キックボードの種類に応じて交通ルールを守らなければいけません。

参考情報:警察庁「電動キックボードについて(特定小型原動機付自転車以外 )」

令和5年7月に実施された道路交通法の改正による変更点

令和5年(2023年)7月1日に改正道路交通法が施行されたことで、電動キックボードに関する取扱いが変わりました。

電動キックボードのうち特定小型原動機付自転車に該当するものは、16歳以上であれば運転免許は必要ありません

道路交通法が改正される以前の電動キックボードは、原付バイクや自動車と同様、運転するためには運転免許が必要でした。

しかし、道路交通法が改正されたことで、「特定小型原動機付自転車」に該当する一定の基準を満たした電動キックボードは、運転免許がなくても乗ることができます

免許不要の「特定小型原動機付自転車」に該当する種類

運転免許証を所持していない人が運転できる電動キックボードは、次の基準をすべて満たす「特定小型原動機付自転車」に限られます。

特定小型原動機付自転車の基準
  • 車体の大きさ
  • 長さ:190cm以下
  • 幅:60cm以下
  • 原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機が用いられている
  • 時速20kmを超えて加速することができない構造である
  • 走行中に最高速度の設定を変更することができない
  • AT(オートマチック・トランスミッション)機構である
  • 最高速度表示灯(緑色の灯火が点灯または点滅するもの)が備えられている

 
上記の基準を満たさない電動キックボードは、運転免許を所持していないと運転することはできませんし、道路交通法が改正された令和5年7月1日以降も引き続き、車両区分に応じた交通ルールを遵守することが求められます。

また、ヘッドライトやブレーキランプなど、国土交通省が求める保安基準を満たした装置を備えた電動キックボードでなければ、道路で走行することができません。

基準を満たした電動キックボードには、「性能等確認済シール」や「型式認定番号標」が付いていますので、運転する際はいずれかのシールが付いているものを選んでください。

性能等確認済シール

出典:電動キックボードに関する交通ルールを確認しましょう!(政府広報オンライン)

電動キックボードを運転する際の義務

特定小型原動機付自転車を運転する場合、ナンバープレートの取り付けや、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)などの加入が義務付けられています

ヘルメット着用は努力義務ですが、交通事故による被害状況はヘルメットの着用の有無で大きく変わります。

道路交通法の改正後に、ヘルメット非着用の電動キックボード運転者の死亡事故も発生していますので、努力義務であったとしてもヘルメットは着用することが望ましいです。

電動キックボードによる交通事故の発生状況

警察庁が公表している「特定小型原動機付自転車に関連する交通違反・事故の発生状況」によると、令和5年の下半期(7月から12月)の交通事故発生件数が85件でしたが、令和6年の上半期(1月から6月)は219件と、交通事故が2.5倍以上増加しています。

電動キックボードの交通事故は全国的に発生していますが、特に東京都と大阪府の発生件数は非常に多いです。

令和6年8月には死亡事故も起きていますので、電動キックボードを運転する際は十分注意してください。

特定小型原動機付自転車に関連する交通違反・事故の発生状況

<特定小型原動機付自転車に関連する交通事故件数・死傷者数>

区分 令和5年
(7月~
12月)
令和6年 合計
1月 2月 3月 4月 8月 6月 7月 8月
事故
件数
85 16 23 18 22 26 29 39 31 289
死者数 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
負傷
者数
86 16 27 19 22 26 30 41 31 298

<相手当事者別>

相手
当事者
令和5年
(7月~
12月)
令和6年
1月 2月 3月 4月 8月 6月 7月 8月
単独 34 7 4 7 6 11 10 13 12
四輪 24 6 10 3 7 4 13 14 7
歩行 17 2 3 4 2 5 4 3 4
自転車 9 1 6 3 6 4 2 6 4
二輪車 1 0 0 1 0 1 0 2 3
その他
(不用を含む)
0 0 0 0 1 1 0 1 1
合計 85 16 23 18 22 26 29 39 31

<相手当事者別>

都道
府県
令和5年
(7月~
12月)
令和6年
1月 2月 3月 4月 8月 6月 7月 8月
東京都 71 13 13 14 12 18 24 31 20
大阪府 12 2 8 4 5 4 3 5 6
その他 2 1 2 0 5 4 2 3 5
合計 85 16 23 18 22 26 29 39 31

出典:特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について(警察庁ウェブサイト)

電動キックボードの交通事故はなぜ増加しているのか?

電動キックボードによる交通事故が増えている主な理由は、次の3点です。

  • ・利用者の急増
  • ・交通ルールの理解不足
  • ・運転技術の未熟さ

法改正で電動キックボードの利用者が急増した

電動キックボード関連の交通事故が増えているのは、電動キックボードの利用者増加が要因として挙げられます。

道路交通法が改正されるまで、電動キックボードは原付バイクのように運転免許が必要でしたが、現在は特定小型原動機付自転車に該当する一定の要件を満たすものであれば、16歳以上の人なら誰でも運転することが可能です。

電動キックボードのシェアリングサービスも東京都と大阪府を中心に拡大しており、個人で電動キックボードを所持していない人でも運転できる環境があるのも、利用者が増加している一因です。

一方で、電動キックボードを運転する人が増えれば、その分だけ交通事故が発生する確率は高くなります。

実際、道路交通法の改正前と比べて、電動キックボードによる交通事故の発生件数が増えています

電動キックボードに関する交通ルールの理解不足

免許不要で運転できる電動キックボードでも、守らなければならない交通ルールは存在します。

運転免許証を所持していない人の交通ルールに関する知識は個人差が大きく、電動キックボードの交通ルールを正しく理解していない状態で運転している人も少なくありません。

免許が必要だった時代の電動キックボードは、運転者に標識などの交通ルールについての知識があったため、交通ルール違反を原因とする事故はある程度抑制できていたと考えられます。

しかし、交通ルールを十分に理解していない人も電動キックボードに乗れるようになったことで、交通ルール違反が原因の事故も増加しています。

運転技術の未熟さ

電動キックボードは特殊な乗り物ですので、初めて乗る人や経験が浅い人が運転している場合には、交通事故が発生しやすいです。

通常のキックボードは地面を蹴って前に進むのに対し、電動キックボードは立っているだけで前に進みます。

電動キックボードと似た乗り物で電動アシスト自転車がありますが、電動アシスト自転車はペダルを踏まないと前に進みませんので、力を使わずに乗ることができる点では、電動キックボードは原付バイクに近い乗り物です。

運転免許が必要だった時代は、基本的に自動車や原付バイクに乗った経験がある人が運転者となっていましたが、現在は運転の練習をしたことがない人が乗っているケースもあるため、運転技術の未熟さを原因とした交通事故も増えています。

電動キックボードによる交通事故の事例

令和5年12月に発生した電動キックボードによる死亡事故は、電動キックボードの運転者が交差点に侵入し、バスにはねられたものです。

電動キックボードは運転免許が無くても乗ることができますが、交通事故の際に乗っていた電動キックボードは基準を満たしていなかったため、運転するには運転免許が必要でした。

また、特定小型原動機付自転車に該当しない電動キックボードを運転していた人が、ひき逃げをして逮捕された事例もあります。

交通事故で被害者が負傷した場合、多額の損害賠償金や慰謝料を支払うことになりますが、電動キックボードを運転していた人が自賠責保険に加入していなかった事例も発生しています。

そのため、電動キックボードによる交通事故の被害者となった際は、損害に対する補償を巡ってトラブルになることも想定しなければなりません。

電動キックボードの交通事故被害者が請求できる慰謝料の項目と相場

電動キックボードと接触して交通事故が発生した場合、被害者は損害賠償だけでなく、慰謝料を請求することができます。

損害賠償金・慰謝料の項目

交通事故の損害賠償金は、事故で被った被害に対する補償であり、慰謝料は交通事故に遭うことで受けた肉体的・精神的な苦痛に対する補償をいいます。

損害賠償金・慰謝料として受け取れる主な項目は次の通りで、慰謝料は被害者の状況によって請求できる種類が変わります。

損害賠償金・慰謝料の項目
  • 治療費
  • 入院費
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • 物損の賠償
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料は、交通事故で入院や通院をすることになった被害者の精神的苦痛に対する賠償金です。

入通院慰謝料の相場は、自賠責基準と弁護士基準で金額は大きく異なり、自賠責基準の場合、相場は1日当たり4,300円です。

弁護士基準も被害者の入通院期間によって金額は変動しますが、重い怪我を負ったときほど慰謝料の相場は高くなります。

怪我が軽度であれば、10万円から30万円が相場ですが、重度の怪我になると相場が50万円から200万円超となるため、弁護士基準で算定した方が慰謝料を多く受け取れます。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料は、交通事故で後遺障害を負った際に請求できる慰謝料です。

後遺障害は、交通事故による怪我が治療しても改善することがなくなり、症状固定になったものをいいます。

後遺障害慰謝料は、自賠責基準と弁護士基準の双方とも、認定される後遺障害等級によって慰謝料の額が変動します。

自賠責基準の慰謝料は、後遺障害等級第14級の場合には75万円ですが、第1級に認定されると金額が3,000万円まで大きくなります。

弁護士基準については、自賠責基準の1.5倍から3倍が目安となりますので、後遺障害慰謝料についても、弁護士基準で算定した方が受け取れる額は多くなります。

<自賠責基準の後遺障害慰謝料>

等級 金額
第1級 3,000万円
第2級 2,590万円
第3級 2,219万円
第4級 1,889万円
第5級 1,574万円
第6級 1,296万円
第7級 1,051万円
第8級 819万円
第9級 616万円
第10級 461万円
第11級 331万円
第12級 224万円
第13級 139万円
第14級 75万円

出典:後遺障害等級表

死亡慰謝料の相場

死亡慰謝料は、交通事故の被害者が死亡した際に請求できる慰謝料です。

自賠責基準の死亡慰謝料は一律400万円であり、被害者の年齢は考慮されません

しかし、死亡事故は家族も精神的苦痛を受けることから、慰謝料を請求できる家族が1人のときは550万円、2人の場合は650万円を別途請求できます。

弁護士基準による死亡慰謝料は、被害者の立場等によって金額が変動します。

慰謝料の額は2,000万円から2,800万円が目安となりますが、事情により慰謝料を上乗せできます
 

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シェアレンタルの電動キックボードで交通事故が起きた場合、誰に損害賠償を請求するのか?

電動キックボードを運転している人と交通事故に遭った場合、誰が電動キックボードを所有していたかで請求する相手が変わります。

加害者が電動キックボードを所有していたときは、加害者に損害賠償を請求します。

加害者がシェアリングサービスを利用していたケースでは、加害者とシェアリングサービスを営んでいる事業者に対して損害賠償請求を行います。

但し、電動キックボードは新しい乗り物のため、今後の裁判例の集積によって、シェアリングサービス運営者に対する損害賠償請求権が決まってきます。

損害賠償を請求できる相手が2か所あったとしても、請求金額が倍増することはありません。

しかし、一般的にシェアリングサービス事業者は任意保険に加入していますので、損害賠償金や慰謝料を受け取れない状況は回避できます。

交通事故に関するトラブルは、基本的に加害者と被害者が話し合うことになりますが、状況次第ではシェアリングサービス事業者に対して、損害賠償を請求することも検討しなければなりません。

まとめ

自動車は大半の人が任意保険に加入していますが、電動キックボードは任意保険に加入していない人も多いので注意が必要です。

シェアリングサービスを利用している最中の事故であれば、シェアリングサービス事業者も損害賠償を請求する相手方となりますが、請求先が複数ある場合には示談交渉が難航しやすいです。

交通事故の発生直後の対応は真摯だった加害者も、示談交渉の場では態度が急変することもありますので、電動キックボードによる事故に遭いましたらすぐに弁護士に相談してください

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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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