右直事故のケース別の過失割合。10対0の場合についても解説
右折車と直進車が衝突して発生する右直事故は、交通事故の発生状況によって過失割合が変わります。
交差点では直進車が優先ですので、基本的に右折車の過失が問われることになりますが、過失割合が10対0になるとは限りません。
本記事では、右直事故の過失割合と、過失割合が変動する要素について解説します。
目次
右直事故とは
右直事故は、右折車と直進車の間で発生する交通事故をいい、信号機のある交差点だけでなく、住宅地でも発生しやすい事故です。
道路交通法第37条では、右折車は交差点で直進または左折しようとする車の進行妨害をしてはならないと規定していますので、右直事故が発生した際には、原則右折車に事故が発生した責任があります。
右折車と衝突して交通事故の被害者となった場合、事故で被った損害を加害者に補償してもらえます。
しかし、被害者にも事故が発生した責任があると判断されれば、加害者の負担すべき損害賠償金から被害者の過失分が差し引かれ、補償される額が減少するので注意が必要です。
また、右直事故でも直進車に過失が認められることは珍しくありませんし、事故発生直前の被害者の行動等によっては、加害者と同程度まで被害者の過失割合が高くなることもあるので気を付けてください。
右直事故の過失割合をパターン別に解説
右直事故が発生するケースは、大きく4種類に区分されます。
右折車と直進車の事故であったとしても、事故の発生状況によって過失割合は異なります。
信号機のある交差点の交通事故
信号機が設置されている交差点の右直事故の場合、交通事故が発生した時点の右折車と直進車の信号機の色が過失割合に大きく影響します。
右折車が赤信号、直進車が青信号で交差点に進入した際に発生した交通事故の過失割合は10対0です。
交差点では直進車が優先されますので、基本的には右折車の責任が重くなります。
しかし、直進車の信号が青だったとしても、右折車の信号が赤以外のときは、直進車にも過失があったと判断されます。
たとえば、青信号同士の交通事故の過失割合は8対2ですが、黄信号同士だと6対4となり、赤信号同士になると過失割合は5対5になります。
また、右折車と直進車の信号が赤だったとしても、右折の青矢印が点灯していた場合には、直進車に全面的な非があるとして、過失割合は0対10になるので注意してください。
<交差点の右折車と直進車の事故>
信号の色 | 過失割合 (A:B) |
右折車A(赤):直進車B(青) | 10:0 |
---|---|
右折車A(青):直進車B(青) | 8:2 |
右折車A(黃):直進車B(青) | 7:3 |
右折車A(黄):直進車B(黄) | 6:4 |
右折車A(赤):直進車B(赤) | 5:5 |
右折車A(※):直進車B(赤) ※赤信号で右折の 青矢印が点灯 |
0:10 ※右折車に 過失の余地あり |
幅員が同程度の信号機のない
交差点の交通事故
交差点では信号機の有無に関係なく、右折車は直進車の走行を妨げてはいけませんが、信号機のある交差点の交通事故との相違点として、右折車が交差点に進入した場所によって過失割合が変わります。
道路の幅員が同程度の場合、直進車の対向から右折した際の過失割合は8対2ですが、直進車の左方から右折した際に発生した交通事故の過失割合は6対4と、直進車にも一定の責任があると判断されます。
交通事故の発生状況 | 過失割合(A:B) |
右折車Aが直進車Bの 対向から右折した |
8:2 |
---|---|
右折車Aが直進車Bの 右方から右折した |
7:3 |
右折車Aが直進車Bの 左方から右折した |
6:4 |
信号機のない一方の幅員が広い
交差点の交通事故
一方の道路の幅員が広い信号機のない交差点の場合、広路を走行している車が優先されます。
「広路」と認定されるのは、一般的に狭い方の道路に比べて幅員が2倍以上ある場合で、右折車が広路と狭路のどちらから交差点に進入したかによって過失割合が変わってきます。
狭路を走行していた右折車が右折した際に起きた交通事故の過失割合は8対2ですが、広路から直進車Bの進入する狭路に入ったときの交通事故の過失割合は5対5になりますので、右折車と直進車には同程度の過失があると判断されます。
交通事故の発生状況 | 過失割合(A:B) |
右折車Aが狭路から直進車Bが いる広路に進入した |
8:2 |
---|---|
右折車Aが広路から直進車Bが いる狭路に進入した |
4:6 |
右折車Aが広路から直進車Bが いる狭路に進入した |
5:5 |
一方に一時停止の規制がある
交差点の交通事故
交差点の一方に一時停止の規制がある場合、一時停止の規制がない道路の車が優先されます。
右折車Aが一時停止の規制がある道路から、直進車Bのいる道路に入る際に交通事故が発生した場合の過失割合は8.5対1.5と、右折車の過失は非常に大きいです。
一方、一時停止の規制がない道路から右折する際、一時停止の規制がある道路から直進してきた車と衝突した場合には、直進車の方が過失割合は高くなります。
交通事故の発生状況 | 過失割合(A:B) |
右折車Aが一時停止の 規制がある道路から 直進車Bがいる道路に右折した |
8.5:1.5 |
---|---|
直進車Bに一時停止の 規制があり、右折車Aが 左方から右折した |
3:7 |
直進車Bが一時停止の 規制があり、右折車Aが 右方から右折した |
4:6 |
右直事故の過失割合が修正される
ケース
右直事故の過失割合はケースごとにある程度決まっていますが、最終的な過失割合は、実際の交通事故の状況を加味した上で判断します。
過失割合が変動する
「修正要素」とは
先ほどご紹介したケースごとの過失割合は「基本過失割合」であり、実際に発生した交通事故の過失割合については、基本過失割合に修正要素を加味して決定します。
修正要素は、過失割合を加算または減算する要素をいい、加害者だけでなく被害者にも修正要素があります。
右折車が赤信号、直進車が青信号で交差点に進入して発生した交通事故の過失割合は10対0ですが、直進車が法定速度を超過した状態で交差点に進入していた場合、直進車にも事故が起きた責任があると判断されます。
基礎過失割合が10対0のケースでも、被害者側に過失があれば過失割合は9対1や8対2に修正されますので、被害者についても過失が無かったことの立証活動をしなければなりません。
修正要素の加算・減算は、過去の交通事故に関する裁判などを参考にして行います。
最終的な過失割合は、加害者と被害者の話し合いで決めることになりますので、相手方から修正要素を提示された際は、内容を精査する必要があります。
修正要素の種類
車同士の交通事故については、当事者の著しい過失や、重過失の有無も過失割合に影響します。
「著しい過失」は、事故態様ごとに通常想定される程度を超えるような過失をいい、車の著しい過失は、わき見運転等の著しい前方不注意などがあります。
「重過失」は、わずかな注意で事故を回避できたような状況で、注意を怠ったことをいい、故意に起こした事故に比肩する扱いとなるため、責任は非常に重いです。
居眠り運転や無免許運転は重過失に該当し、速度違反は時速15㎞以上30㎞未満であれば「著しい過失」ですが、時速30㎞以上になると「重過失」に該当することになるので気を付けてください。
また、修正要素は交通事故が発生した時間帯や場所だけでなく、被害者の属性も考慮されます。
車と歩行者の事故であれば、基本的に車を運転している方が責任を負うことになりますが、歩行者の飛び出しが原因で発生した事故の場合、歩行者側にも一定の責任を問われます。
しかし、子どもや高齢者は交通弱者に該当するため、飛び出したのが子どものケースでは、大人が飛び出したときよりも過失割合は低くなります。
<過失割合の修正要素>
事故の時間帯 |
|
---|---|
事故発生の場所 |
|
被害者の属性 |
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著しい過失 |
|
重過失 |
|
事故状況 |
|
車種 |
|
右直事故の過失割合が10対0になる
ケース
過失割合が10対0になるのは、加害者側に全面的な事故発生原因がある場合に限られます。
信号機がある交差点での事故であれば、右折車が赤信号で右折し、青信号で直進車と衝突した場合が過失割合10対0になるケースです。
信号機のない交差点の場合、基本過失割合が10対0になるケースは少ないです。
しかし、右折車にスピード違反や前方不注意などの要素があれば、修正要素を加味したことで過失割合が10対0になる可能性もあります。
右直事故の過失割合が示談金に
もたらす影響
過失割合10対0のケースでは、被害者が被った損害を加害者に全額補償してもらえますが、被害者にも事故が発生した原因がある場合には、被害者の過失部分は補償対象から除かれます。
補償されなかった部分は被害者の自己負担となりますし、被害者の過失割合が高くなるほど加害者が補償すべき額は少なくなるので、過失割合は示談金の額に直結します。
示談交渉の場では、加害者が被害者にも過失があったと主張してくることも想定されます。
相手方の主張を鵜呑みにしてしまうと示談金が減ってしまいますので、交通事故で被った損害を補償してもらうためにも、被害者は自身の正当性を主張しなければなりません。
交通事故に遭ったら早めに弁護士に相談すること
交通事故の被害者となった場合、過失割合によって受け取れる損害賠償金の額は変わりますので、交通事故の状況を正確に伝える必要があります。
加害者が右折したことで発生した交通事故であれば、基本的に加害者に非がありますが、加害者が事故の責任を全面的に認めるとは限りません。
示談交渉は裁判とは違い、当事者間の話し合いで決めますので、被害者の主張が弱ければ交渉が不利に進んでしまいます。
加害者側の保険会社は、示談交渉を何度も行っていますので、専門知識や示談交渉の経験がない被害者が対等に話し合うのは大変です。
そのため、交通事故に遭った際は早めに弁護士に相談していただき、必要に応じて交通事故に関する手続きを委任してください。
みらい総合法律事務所は無料相談を行なっています。ぜひご利用ください。
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代表社員 弁護士 谷原誠