居眠り運転事故による罰則や違反点数は?慰謝料の相場も解説
自動車を運転している最中の居眠りは、重大な事故を引き起こす可能性が高く、極めて危険です。
居眠り運転を原因とした交通事故が起きてしまった場合、損害賠償金・慰謝料の支払いが生じるだけでなく、
運転免許が取り消しになることもあります。
本記事では、居眠り運転事故をしたことに対する罰則と違反点数、慰謝料の相場について解説します。
この記事は、2024年12月20日時点での法令に基づいて執筆しています。
目次
居眠り運転で交通事故を起こした
場合の罰金・違反点数
居眠り運転が原因の交通事故を起こした場合、刑事・行政・民事上の責任が問われることになります。
居眠り運転とは
一般的に、運転している最中に眠ってしまうことを「居眠り運転」といい、道路交通法で居眠り運転に関する直接的な規定はありません。
しかし、居眠り運転が原因で交通事故が生じた場合には、安全運転義務違反(道路交通法第70条)となります。
運転中に意識を失えば、対向車や歩行者などと接触する状況になったとしても回避行動が取れないため、被害状況等によっては重い罰則が適用されます。
刑事上の責任
人身事故でも、適用される罪や量刑は交通事故の発生状況等によって異なります。
居眠り運転による人身事故の場合、「過失運転致傷罪」・「危険運転致死傷罪」・「病気運転致死傷罪」のいずれかに問われます。
過失運転致死傷罪は、自動車を運転するのに必要な注意を怠ったことが原因で、人を怪我または死亡させた際に適用される刑事罰です。
7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処されることになり、前方不注意やスピード違反で人身事故を起こしたときも、過失運転致死傷罪に問われます。
危険運転致死傷罪は、危険な状態で自動車を運転したことが原因で、人を怪我または死亡させた際に適用される刑事罰です。
人を怪我させた際は15年以下の懲役、死亡した際は1年以上の有期懲役に処されます。
病気運転致死傷罪は、自動車の運転に支障を及ぼす恐れがある病気の影響で、正常な運転に支障が生じる恐れがあるにもかかわらず自動車を運転し、病気の影響で正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた際に適用される刑事罰です。
人を負傷させたときは12年以下の懲役、人を死亡させた場合には15年以下の懲役に処されます。
行政上の責任
居眠り運転で物損事故または人身事故が起きた場合、違反点数の加算と反則金の支払いが発生します。
自動車の点数制度は、運転者の交通違反や交通事故の種類に応じて点数を付ける制度で、過去3年間の累積点数等に応じて免許の停止処分や取消処分が行われます。
違反点数が6点になると30日間の免許停止処分となり、15点以上になると免許が取り消しとなるので気を付けなければなりません。
居眠り運転による物損事故は安全運転義務違反または過労運転が適用される可能性があり、安全運転義務違反の場合は2点、過労運転については25点の違反点数が付きます。
居眠り運転による人身事故を起こしたときは、安全運転義務違反または過労運転の違反点数に加え、被害者の負傷等によって違反点数が加算されます。
<交通事故の付加点数表>
交通事故による被害の程度 | 不注意の 程度 |
点数 |
---|---|---|
死亡事故 | 専ら | 20点 |
上記以外 | 13点 | |
傷害事故 (治療期間が3か月以上または 後遺障害があるもの) |
専ら | 13点 |
上記以外 | 9点 | |
傷害事故 (治療期間が30日以上 3か月未満であるもの) |
専ら | 9点 |
上記以外 | 6点 | |
傷害事故 (治療期間が15日以上 30日未満であるもの) |
専ら | 6点 |
上記以外 | 4点 | |
傷害事故または、建造物損壊事故 (治療期間が15日未満である もの) |
専ら | 3点 |
上記以外 | 2点 |
※「専ら」は、交通事故のほとんどが違反行為者の不注意で発生したケース
反則金は、違反者が支払うことになる行政上の制裁金です。
安全運転義務違反に対する反則金は、運転していた車両の種類によって金額が異なります。
<安全運転義務違反に伴う反則金>
車両の種類 | 反則金の額 |
---|---|
大型車 | 12,000円 |
普通自動車 | 9,000円 |
二輪車 | 7,000円 |
原付 | 6,000円 |
民事上の責任
居眠り運転による交通事故が発生した場合、加害者は被害者に対して損害賠償金や慰謝料を支払う責任を負います。
賠償する範囲は事故で負傷した怪我の治療費・入院費だけでなく、仕事ができなくなったことによる減収の補償も含まれます。
被害者が運転していた自動車などの物が破損したときは、それらの修理費用なども損害賠償の対象です。
交通事故の慰謝料は、事故の被害者となったことに対する精神的苦痛や損害に対して支払われるもので、重大な事故になるほど慰謝料の額は大きくなります。
居眠り運転による交通事故の
過失割合
交通事故の損害賠償金や慰謝料は、過失割合の比重によって金額が変動します。
過失割合は事故の発生状況に
よって異なる
交通事故の過失割合は、事故が発生した責任を割合で示すもので、過失割合が高いほど責任が重いことを意味します。
たとえば、交差点に青信号で進入した被害者の車に、居眠り運転をした加害者の車が赤信号で進入して起きた事故の場合、事故の発生原因はすべて加害者にあるため、過失割合は10:0となります。
加害者の過失割合が10割であれば、被害者は被った損害の全額を加害者に請求することが可能です。
一方、過失割合が7:3のケースでは、被害者にも責任の一端があるため、被った損害の一部しか加害者に補償してもらえません。
居眠り運転は過失割合が高く
なる要素
交通事故の過失割合は、事故のケースごとに「基本過失割合」が決まっていますが、具体的な過失割合を算定する際には、「修正要素」を加味することになります。
修正要素は、過失割合の比率が加算・減算される要素で、加害者に著しい過失や重過失があった場合、加害者側の過失割合は高くなります。
「著しい過失」とは、事故態様ごとに通常想定される程度を超えるような過失をいい、わき見運転や前方不注視などが著しい過失に該当します。
「重過失」は、故意に起こした事故と同程度の扱いがされるものをいい、居眠り運転は重過失に該当します。
基礎過失割合が7:3のケースでも、居眠り運転で事故が発生したときは、過失割合が8:2や9:1になることもあります。
加害者が居眠り運転をしていた場合の損害賠償金・慰謝料の相場
居眠り運転による交通事故が発生した際の損害賠償金や慰謝料の額は、被った損害によって変わります。
損害賠償金の種類
損害賠償金の額は、怪我の状態だけでなく、被害者の収入状況によっても変わってきます。
たとえば、収入が多い人が交通事故に遭ったことで仕事を休むことになった場合、損害賠償金として請求できる金額は大きくなります。
居眠り運転で発生した交通事故については、被害者の過失割合が小さく(またはゼロ)なるため、満額や満額に近い損害賠償金を得ることができます。
- 治療費
- 入院費
- 休業損害
- 逸失利益
- 物損の賠償
慰謝料の種類
居眠り運転が原因で交通事故が起こった場合、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料を請求できる可能性があります。
入通院慰謝料は、交通事故によって入院や通院をすることになった苦痛に対する慰謝料で、入院期間や通院日数を基に金額を算出します。
後遺障害慰謝料は、交通事故が原因で後遺障害を負ったことに対する慰謝料です。
認定された後遺障害等級によって金額が変わるため、慰謝料を請求する際は認定手続きが必要です。
死亡慰謝料は、交通事故が原因で被害者が死亡したことに対する慰謝料で、被害者本人だけでなく、遺族が被った精神的苦痛に対する慰謝料も含まれます。
いずれの慰謝料も、交通事故の被害状況によって請求できる金額は異なり、用いる慰謝料の算定方法によっても金額は変わってきます。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 裁判基準
自賠責基準は、自動車損害賠償保障法施行令によって定められている基準です。
補償される金額は最低水準であるため、慰謝料を自賠責基準で計算すると、受け取れる額は少なくなります。
任意保険基準は、任意保険会社が慰謝料の額を算定する際に用いる基準です。
各保険会社が独自で設けた基準で金額を計算するため、加害者が加入している任意保険会社によって提示される慰謝料の額は変わってきます。
裁判基準は、判例等に基づいて慰謝料の額を算定する基準で、弁護士基準と呼ばれることもあります。
裁判基準で算定した慰謝料の額が最も大きくなる可能性があるため、被害者が納得する金額を受け取りたいときは、裁判基準で算定するのが望ましいです。
死亡事故に対する慰謝料を裁判基準で算定した場合、2,000万円~2,800万円程度を受け取れる可能性があります。
また、加害者の運転の悪質性が認められたときは、精神的な苦痛が大きいことを理由に慰謝料が増額されますので、居眠り運転を立証することも重要です。
なお、裁判基準で算出した慰謝料の額に加害者側が難色を示すこともありますので、裁判基準を用いる際は、弁護士に示談交渉を依頼することを検討してください。
被害者が加害者の居眠り運転を
立証する方法
加害者は過失割合が重くなることを避けるために、居眠り運転していたことを認めないケースもありますので、状況によっては被害者側が居眠り運転していたことを立証しなければなりません。
たとえば、ドライブレコーダーや交通事故が発生した周辺の防犯カメラで、加害者が運転中に居眠りしている事実が確認できれば、居眠り運転を立証することができます。
ドライブレコーダーなどで居眠りしていたかが判断できないときは、ブレーキ痕の有無や当事者・第三者の証言などを集めます。
正常な状態で運転をしていた場合、交通事故が発生する直前に急ブレーキを踏むため、事故現場にはブレーキ痕が残ります。
それに対し、居眠り運転は本人に意識がなく、ブレーキをしないまま衝突することもあり、この場合には、現場にブレーキ痕は残りません。
衝突時の速度については、車両の破損度合いから推定できる場合もあるため、必要に応じて警察が作成した実況見分調書を入手することになります。
また、示談交渉の場で加害者が居眠り運転を否定したとしても、事故直後の段階では正直に居眠りをしていたことを話していることもあります。
警察が加害者から聴取して作成した供述調書に居眠り運転を認めた記述があれば、供述調書も居眠り運転をしていた証拠として用いることができます。
居眠り運転による交通事故を
受けた場合は弁護士に要相談
居眠り運転による交通事故の被害者となった場合、被った損害を加害者に請求することになります。
交通事故の発生状況によっては、被害者側に事故が発生した非がない説明や、加害者が居眠り運転をしていた事実を立証することが求められます。
被害者本人が居眠り運転の立証や示談交渉などの手続きを行うのは大変ですし、精神的な苦痛を伴うこともありますので、交通事故の被害者となった際は1度弁護士にご相談ください。
みらい総合法律事務所は無料相談を行なっています。ぜひご利用ください。
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代表社員 弁護士 谷原誠