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バックしてきた車との交通事故(バック事故)の過失割合を事例別に解説

最終更新日 2025年 02月19日

バックしてきた車との交通事故(バック事故)の過失割合を事例別に解説

この記事を読むとわかること

 
バックしてきた車にぶつけられた場合、加害者に対して怪我の治療費や車の修理代を求めることになりますが、被害者にも事故が発生した原因があるときは、被った損害の一部しか請求することができません。

「バック事故」は過失割合で揉めやすい事故の一つですので、今回はバック事故の過失割合と、トラブルになりやすいケースについて解説します。

バック事故とは?原因と事故が多い理由

運転中にバックする時間は非常に短いですが、バック運転は通常の運転よりも周囲の状況を確認しにくく、事故が起こりやすいので気を付けてください。

原因①:後方の安全確認不足

バック事故が発生する原因として多いのが、運転手の後方安全確認不足です。

車を前進させるときは視界が広いので、人や車が飛び出してきたとしても、急ブレーキなどで対処することができます。

一方、バック運転は車を前進させるときよりも視野が狭く、人や車がいることに気付きにくいため、目視だけでなく、ミラーも使って状況を確認しなければなりません。

原因②:運転技術の未熟さ

運転に不慣れな方は、注意しながらバック運転をしていたとしても、停車中の車などに接触してしまうことがあります。

バック運転は教習所でハンドル操作に苦労する運転の一つであり、車が大きくなるほどバック運転の難易度は高くなります。

軽自動車など、コンパクトで小回りが利く車であれば、バックする際のハンドル操作はそこまで難しくありません。

一方、ワゴン車などの大きな車については、駐車場に停めるために切り返しが必要になることも増えますし、内輪差による接触事故が起きやすいです。

バックしてきた車にぶつけられた時の過失割合

バックしてきた車とぶつかって発生する「後退事故(バック事故)」は、似たようなケースでも、前に進んでいる車同士の事故とは過失割合が異なります。

交通事故の過失割合と
示談金への影響

交通事故の過失割合は、事故が発生した責任を数値で表したものです。

加害者にすべての事故原因がある場合、過失割合は「加害者:被害者=10:0」となります

被害者は加害者に対して交通事故で生じた損害の補償を求めることになりますが、被害者にも事故が発生した過失があるときは、過失分だけ加害者の責任が軽減(過失相殺)され、損害賠償金や慰謝料の請求額が減ってしまいます。

加害者の不注意が原因でも、事故発生時の状況等によっては、被害者の過失が問われることもあるので注意してください。

後退車と停車中の車との事故

バックしてきた車(A)と停車中の車(B)との間で発生した事故の過失割合は、「A:B=10:0」です。

10対0は加害者に交通事故が発生したすべての責任があり、基本的には停車中の車に事故の責任はありません。

後退車と徐行車との事故

バックしてきた車(A)と徐行運転していた車(B)との間で発生した事故の過失割合は、「A:B=10:0〜7:3」です。

過失割合が変動するのは、事故が発生する直前における徐行車の行動が過失割合に影響するからです。

後退車が飛び出してきたことが原因で衝突した場合、衝突が不可避であり徐行運転をしていた車に過失はないと認められれば、過失割合は10対0になります。

一方、徐行運転していた車がバックしている車を確認できる状況にあったにもかかわらず、危険を知らせずそのまま後退車と衝突したときは、徐行運転をしていた車にも一定の過失があると判断されます。

脇から出てきた後退車と
直進車との事故

脇からバックしてきた車(A)と直進してきた車(B)との間で発生した事故の過失割合は、「A:B=8:2」です。

交通事故が発生した主な責任は後退車にありますが、被害者についても一定の過失があると判断されてしまうため、過失割合は10対0にはなりません。

駐車場内で後退車と直進車との事故

バックしてきた車と通路を走行している車との間で発生した事故の過失割合は、「A:B=7:3」です。

後退車との事故は、コンビニやスーパーなどの駐車場で発生することもありますが、公道で起きた事故とは過失割合が異なります。

基本的には後退車が責任を問われることになりますが、公道で発生した交通事故よりも直進した車の過失割合が高くなるケースもあるので注意してください。

バックしてきた車にぶつけられた側の過失割合が増えるケース

バックしてきた車にぶつけられた場合でも、ぶつけられた状況によっては被害者の過失割合が増えてしまうことがあります。

適切な位置に駐車・停車をして
いなかった

後退車と停車中の車との間で発生した事故の過失割合は原則10対0ですが、停車していた位置や場所によっては、ぶつけられた側の過失割合は増加します。

たとえば、駐車禁止スペースなど、適切ではない場所に駐車・停車していたときは、被害者にも事故が起きた責任があると判断されます。

基本過失割合が10対0のケースでも、修正要素がある場合には、最終的な過失割合は9対1や8対2になるので注意してください

クラクションを鳴らさなかった

後退車がこちら側の存在に気が付いていない場合、クラクションを鳴らすなどして警告することが求められます。

クラクションを鳴らして危険を知らせる猶予があったにもかかわらずバック事故が発生したときは、警告しなかったことが被害者側の過失と判断される可能性があります。

バック事故の過失割合でトラブルになるケースと対策

交通事故が発生した場合、加害者と被害者が話し合って解決することになりますが、過失割合は揉めやすいため、示談交渉をする前に準備を整える必要があります。

加害者と被害者の見解が
相違している

交通事故は突然起きるものなので、加害者と被害者で事故発生前後の状況についての見解が違うこともあります。

加害者は責任を少しでも軽くするために嘘をつくこともあるため、被害者はドライブレコーダーなど、客観的に事故の状況を確認できる証拠を提示するなどの対策をしなければなりません。

ドライブレコーダー以外では、事故現場周辺の防犯カメラや目撃者の証言も客観的な証拠として活用できますので、可能な限り証拠を集めてください。

クラクションの有無

後退車の不注意で事故が発生したとしても、被害者側がクラクションを鳴らしていなかったことを理由に、被害者の過失を問うことも想定されます。

クラクションの有無で過失割合が大幅に変動することはありませんが、バックしてきた相手に対して警告などの措置を講じなかったと判断された場合、被害者の過失が問われる可能性があります。

示談交渉の場では、クラクションを鳴らす時間的猶予があったかどうかが焦点になることもあるため、事故発生時の状況を説明できるよう記憶を整理し、メモを残しておくことが大切です。

バック事故で加害者から支払われる慰謝料の項目

バック事故で損害を被った際に請求する、損害賠償金と慰謝料の内訳をご紹介します。

積極損害

積極損害は、交通事故で生じた損害全般をいい、怪我などの人的損害だけでなく物的損害も含まれます。

人的損害としては、手術代や診察料などの治療費や入院費などがあり、交通事故で破損した車の修理代や買換費用も積極損害に該当します。

積極損害の主な項目
  • 治療費
  • 入院費
  • 通院費
  • 車等の修理代・買換費用

休業損害

休業損害は、交通事故で働くことができなくなったことで、減ってしまった収入をいいます。

自営業者だけでなく、会社員についても入院等で働けず、減収した分の給与を休業損害として請求できます。

逸失利益

逸失利益は、交通事故の被害に遭ったことで失われた将来の収入をいいます。

交通事故で後遺障害を負ったときは、症状の程度によって逸失利益を算出し、加害者に請求します。

死亡事故においても逸失利益を請求できますが、事故発生時点の被害者の年齢や収入によって請求できる額は変動します。

慰謝料

慰謝料は、交通事故に伴う精神的苦痛に対する補償で、被害者が受けた苦痛によって請求する慰謝料の種類は変わります。

慰謝料の種類
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

 
入通院慰謝料は、交通事故が原因で入院や通院をすることになったことに対する慰謝料で、入通院の期間が長くなるほど請求額は大きくなります。

後遺障害慰謝料は、交通事故で後遺障害を負ったことに対する慰謝料です。

被害者が後遺障害等級の認定を受けた場合、認定された等級によって後遺障害慰謝料の額は変わります。

死亡慰謝料は、交通事故で被害者が死亡したことに対する慰謝料です。

入通院慰謝料と後遺障害慰謝料は、被害者が被った苦痛に対して請求するものですが、死亡慰謝料は本人だけでなく、被害者の家族が受けた苦痛に対する補償も含まれます。


 

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バック事故の示談交渉で注意すべきポイント

バック事故の過失割合は、ケースごとに基本過失割合が定められていますが、事故発生時の状況によって修正要素が加算・減算されます。

加害者に全面的な事故発生原因がある場合、基本過失割合は10対0です。

しかし、加害者側が被害者にも前方不注意などの過失があったと主張してくることも考えられますので、正当性を主張する必要があります。

加害者が任意保険に加入していた場合、保険会社と示談交渉をすることになりますが、保険会社は示談交渉のプロです。

相手の意見に流されてしまうと交渉が不利に進みますので、保険会社と話し合うことになったときは、代理人を立てるなどの対策を講じてください

バック事故が発生したら弁護士に
要相談

交通事故の過失割合はケースによって異なりますし、事故の発生状況によっては被害者も過失が問われることがあります。

事故で負傷した状態で交渉するのは肉体的に大変ですし、精神的にも辛いですが、加害者の意見をそのまま受け入れてしまうと、示談金の額が減ってしまいます。

示談交渉を不利に進めないためには、手続き等を専門家に一任するのが最善手となりますので、交通事故の被害に遭いましたら1度弁護士に相談してください。

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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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