中心性脊髄損傷の後遺障害等級と交通事故発生時の慰謝料の相場
交通事故により中心性脊髄損傷の後遺障害を負った場合、加害者に対して後遺障害慰謝料を請求することができます。
しかし、後遺障害慰謝料を受け取るためには後遺障害の認定申請が必要ですし、認定される等級によって慰謝料の金額は変動するので注意が必要です。
本記事では、中心性脊髄損傷の特徴と認定される後遺障害の等級、後遺障害慰謝料の相場について詳しく解説します。
目次
中心性脊髄損傷とは
中心性脊髄損傷は脊髄損傷の一種で、脊髄の中央部分が損傷を受けることで生じる神経障害です。
下肢よりも上肢の機能障害が顕著で、治療後も手足の感覚や運動機能が部分的に残る場合があります。
中心性脊髄損傷は、首に強い衝撃が加わることで発症することが多いものの、骨折や脱臼を伴わない場合でも発症していることがあります。
そのため、交通事故で身体に強い衝撃を受けた際には、病院を受診し、症状を確認することが重要です。
中心性脊髄損傷が起こる原因と症状
中心性脊髄損傷は、さまざまな状況で生じる可能性があります。
症状の程度によっては、事故前の生活レベルまで機能が回復せず、長期的な影響を受けることも考えられます。
中心性脊髄損傷が生じるケース
中心性脊髄損傷は、交通事故や転倒で頭部に強い衝撃が加わることで発症します。
交通事故では、乗用車やバイクの衝突によって生じるケースが多く、シートベルトを着用していない状態で事故が発生した場合、怪我を負うリスクがさらに高まります。
高齢者は、脊柱管が狭くなっている影響で、転倒などの軽度な外傷でも損傷を引き起こすことがあるので注意してください。
高齢者以外の方も、転倒時に受け身が取れていないと、頭部を地面に強く打ち付け、中心性脊髄損傷を負う可能性があるので気を付けてください。
典型的な症状
中心性脊髄損傷の主な症状は、上肢の麻痺や感覚異常です。
多くの場合、下肢よりも上肢の運動障害が強く表れ、手指の細かい動作が困難になります。
症状の程度は損傷の度合いによって異なり、軽度であればリハビリによって改善することもあります。
一方、重度の場合、ボタンを留めるなどの動作ができなくなるだけでなく、治療を行っても元の生活水準まで機能を回復させるのは難しいです。
完全損傷と不完全損傷の違い
脊髄損傷には、大きく分けて完全損傷と不完全損傷があり、中心性脊髄損傷は不完全損傷の一種です。
中心性脊髄損傷の場合、下肢よりも上肢の運動機能や感覚異常が目立ち、軽度であれば時間の経過とともに症状が改善する可能性があります。
一方、完全損傷は、脊髄の機能が完全に壊れた状態をいいますので、損傷部位より下の運動機能や感覚が失われます。
また、機能の回復見込みが非常に限られるため、日常生活への影響が大きく、長期的なリハビリや適切なサポートが必要となります。
中心性脊髄損傷かな?と思ったら
中心性脊髄損傷は、初期段階では症状が軽く見えることもあります。
治療をせずに放置すると症状が悪化し、後遺障害が重くなる可能性もあるので注意してください。
初期症状の見極め方
中心性脊髄損傷の初期症状には、上肢の痺れや痛み、麻痺などがあります。
症状が軽い場合、単なる打撲や筋肉の緊張と誤認されることもありますが、適切な処置を施さなかったことが原因で、症状が悪化するケースもあるので注意が必要です。
そのため、交通事故に遭った際に手足の違和感を覚えた場合は、速やかに専門医の診察を受けてください。
早期診断の重要性
中心性脊髄損傷が軽度の場合、リハビリをすることで機能は回復しますが、処置が遅れると後遺症が残るリスクが高くなります。
損傷が重度の場合、手術が必要となることもあるため、症状の程度にかかわらず、迅速な診断と治療が求められます。
また、医師の診断を受けることは、慰謝料の金額にも影響を及ぼします。
後遺障害等級の認定を申請する場合、医師に診断書の作成を依頼することになりますが、受診が遅れると、医師が正確に症状を把握できない恐れがあります。
そのため、事故や転倒によって体への違和感を覚えましたら、迷わず医療機関を受診することが重要です。
交通事故の中心性脊髄損傷の
後遺障害を立証する方法とポイント
交通事故の後遺障害に対する補償を求める際は、事前に後遺障害の認定を受けなければなりません。
後遺障害には等級が定められており、中心性脊髄損傷も症状によって認定される等級が異なります。
医師に診断書の作成依頼をする
後遺障害の認定を受けるには、医師の診断書が必要です。
診断書には、麻痺の程度や感覚異常の範囲を具体的に記載してもらうことが求められます。
ただし、症状固定の状態に至らなければ、後遺障害に関する診断書を作成することはできません。
症状固定は、治療を続けても改善が見込めない状態をいい、適切に症状固定と判断されるためには継続的な治療が必要になるため、症状がある程度回復した後も通院してください。
後遺障害認定に必要な資料を
集める
後遺障害認定を受けるには、受傷後の診察履歴、検査結果、治療経過などの医療記録を適切に準備することが重要です。
たとえば、交通事故によって中心性脊髄損傷を負った場合、その傷害を証明するためには、事故直後にMRI検査を実施し、その検査結果を資料として提出することが求められる場合があります。
診断書や画像診断結果は、後遺障害の認定に関わるだけでなく、認定される等級にも影響を与えるため、申請時に提出できるよう準備してください。
中心性脊髄損傷で認められる
後遺障害の等級
中心性脊髄損傷による後遺障害は、その影響の程度に応じて異なる等級が認定されます。
後遺障害等級は「自動車損害賠償保障法施行令別表第二」で定められており、損傷の程度や日常生活への影響を考慮して決定されます。
脊髄損傷によって運動機能が著しく低下した場合、重い等級が認定される可能性が高いです。
一方、同じ怪我を負った場合でも、残った症状によって認定される等級は変わるため、脊髄損傷の範囲や神経障害の程度を医学的に証明することが求められます。
<中心性脊髄損傷で認定される可能性がある
後遺障害認定等級>
等級 | 後遺障害の症状 | 保険金額 |
---|---|---|
第5級2号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することが できないもの |
1,574万円 |
第7級4号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 1,051万円 |
第9級10号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に 制限されるもの |
616万円 |
第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 224万円 |
第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 75万円 |
中心性脊髄損傷による
後遺障害慰謝料の相場
中心性脊髄損傷による後遺障害の慰謝料は、損傷の程度や認定される等級によって大きく異なるため、一般的な相場をご紹介します。
後遺障害慰謝料の算定基準
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級を基準として算定されます。
「自動車損害賠償保障法施行令別表第二」の保険金額は、自賠責保険の限度額を定めたものです。
自賠責保険金額は、交通事故の被害者が請求できる慰謝料の総額とイコールではなく、法律で定められた最低限の補償です。
たとえば、中心性脊髄損傷で局部に神経症状が残った場合には、第14級9号に該当するため、自賠責保険基準では75万円を受け取れる可能性があります。
また、神経系統の機能または精神に著しい障害が残ったときは、第5級2号に該当し、1,574万円を受け取れる可能性があります。
弁護士基準で慰謝料を
算定すべき理由
「自動車損害賠償保障法施行令別表第二」で定められている保険金額は、自賠責保険基準ですが、自賠責保険基準は慰謝料を算定する基準としては最低限の水準です。
そのため、納得する慰謝料を受け取るためには、弁護士基準(裁判基準)で慰謝料を算定することも検討してください。
慰謝料の算定基準には、「自賠責保険基準」・「任意保険基準」・「弁護士基準(裁判基準)」があり、弁護士基準は過去の裁判例を参考に慰謝料を算定する基準です。
3種類の算定基準の中では、弁護士基準が最も高額な慰謝料を請求できる可能性があり、自賠責保険基準の2倍から3倍の慰謝料を受け取れるケースも珍しくありません。
一方、弁護士基準は裁判例などを参考にする関係上、専門的な知識が必須です。
慰謝料の金額は示談交渉で決めることになるため、弁護士基準を用いて慰謝料を請求する場合には、弁護士に交渉を任せるのも選択肢です。
交通事故の示談交渉を行う際の
ポイント
加害者が自動車の任意保険に加入している場合、保険会社との示談交渉が必要になります。
しかし、保険会社は示談交渉の専門家であり、被害者が単独で対応するのは容易ではありません。
保険会社は、自賠責保険基準や任意保険基準に基づいた慰謝料を提示しますが、その金額が必ずしも適正であるとは限らないため、提示された額を鵜吞みにせず、金額が適正かどうかを慎重に判断することが求められます。
交通事故の示談交渉では、怪我の状況や後遺障害等級に加え、過去の裁判例を交渉材料として活用するのが有効です。
後遺障害に対する適正な補償を受けるためには、粘り強く交渉する姿勢が必要となりますので、安易に示談に応じるのではなく、弁護士と相談しながら適正な金額を主張することが大切です。
中心性脊髄損傷の示談交渉は
弁護士に相談を
交通事故によって中心性脊髄損傷による後遺障害を負った場合、納得できる補償を受けるためにも、後遺障害認定の申請は不可欠です。
後遺障害として認定されなければ慰謝料は低額となりますし、認定される等級によって慰謝料の金額が大きく変動するため、申請時の準備も重要です。
また、交通事故に関する手続きを弁護士に依頼することで、後遺障害認定の申請をスムーズに進められるだけでなく、適正な慰謝料を受け取る可能性が高まります。
示談交渉に不安がある方は、交渉も弁護士に任せることにより、精神的な負担を軽減できますので、適正な補償を得るためにも、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
みらい総合法律事務所は無料相談を行なっています。ぜひご利用ください。
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代表社員 弁護士 谷原誠