交通事故の入院期間の平均は?慰謝料はどのくらいもらえる?
交通事故で入院した場合、加害者に対して、負傷に伴う慰謝料を請求することが可能です。
慰謝料の金額は、怪我の程度や入通院の期間をもとに算出しますが、最終的には示談交渉で金額を決定するため、被害者も事前に慰謝料の目安を把握しておくことが重要です。
本記事では、交通事故により入院した際の平均入院期間および、それに応じて支払われる慰謝料について解説します。
目次
自動車交通事故による入院期間の
平均をケース別に解説
自動車交通事故の入院期間は、怪我の大小だけでなく、損傷した部位によっても変わります。
怪我の程度別の平均入院期間
自動車との交通事故は、事故が発生した直後では怪我の程度がわからないことも多いため、結果的に怪我が軽度であったとしても、検査等のために入院することがあります。
軽度の怪我の入院期間
交通事故の怪我が軽度の場合における平均入院期間は、数日から1週間程度です。
軽度の怪我には、擦り傷や切り傷、軽度の打撲などが含まれますが、その程度であれば入院は不要な場合が多いでしょう。軽度の怪我の場合は、短期間の入院で済むことが多いです。
ただし、軽度の怪我であるかは検査を行わなければ判断できないため、交通事故に遭ったときは必ず病院で診察を受けてください。
中程度の怪我の入院期間
交通事故の怪我が中程度の場合における平均入院期間は、1週間から1か月程度です。
中程度の怪我には、骨折や深い切り傷、重度の打撲などが含まれ、直接的な生命の危険は無いですが、日常生活に一定の支障をきたす怪我が該当します。
中程度の怪我でも、手術を要する怪我であれば入院期間が延びるため、怪我の重さだけでなく、手術の有無も入院期間に関係してきます。
重度の怪我の入院期間
交通事故の怪我が重度の場合における平均入院期間は、3週間から1か月以上です。
重度の怪我は、頭部外傷や内臓損傷、複雑骨折などの生命に関わるものが多く、長期間の入院を余儀なくされます。
手術や集中治療を要する怪我は退院後もリハビリのために通院をしなければなりませんし、後遺障害を負った場合、完全には交通事故前の状態まで回復することはありません。
怪我の部位別の平均入院期間
国は、自動車交通事故における部位別の入院期間に関する情報を公開していますので、下記の参考資料をもとに症状別の入院期間をご紹介します。
参考情報:令和2年患者調査
頭部の怪我
国が公開している情報によると、自動車事故の頭蓋骨および顔面骨の骨折の平均入院期間は9.4日です。
頭部の怪我は、軽症の脳震盪から重度の頭蓋骨骨折まで範囲は広いですが、頭部に怪我を負うこと自体が非常に危険です。
命に関わる怪我の可能性もありますし、怪我の種類によっては長期的なリハビリが必要になることもあります。
胸部の怪我
頚部、胸部および骨盤の骨折(脊椎を含む)における、平均的な入院期間は27.7日です。
胸部の損傷には、肋骨の骨折や肺の損傷が含まれるため、呼吸や臓器に影響が及ぶこともあります。
四肢の怪我
腕や脚の骨折や筋肉損傷は、交通事故でよく見られる怪我の一つです。
大腿骨の骨折の平均的な入院期間は42.9日と長く、その他の四肢の骨折についても21.0日と、平均3週間の入院を余儀なくされます。
怪我によっては手術が必要になりますし、術後のリハビリをするために入院期間が長くなりやすいです。
脱臼、捻挫
自動車交通事故で脱臼や捻挫、ストレインの怪我を負った場合の平均的な入院期間は12.8日です。
捻挫は軽い怪我と思われがちですが、頚椎捻挫の場合、手足の痺れなどの症状が起きる可能性もあるので注意が必要です。
交通事故で入院した際の慰謝料は
どうなる?
交通事故で請求できる慰謝料にはさまざまな種類があり、算定方法も複数存在します。
入通院慰謝料とは
入通院慰謝料は、交通事故によって怪我を負い、入院または通院した際に請求できる慰謝料です。
慰謝料の額は入院や通院の日数に応じて変動するため、怪我の程度が同じでも入院や通院の期間が長いほどで受け取れる金額は大きくなります。
後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺障害を負った際に請求できる慰謝料です。
怪我の種類によっては治療後も怪我の影響が残ってしまうこともあり、そのような後遺障害を負った場合には、症状に応じた補償を求めることになります。
死亡慰謝料は、交通事故で被害者が亡くなった場合に請求する慰謝料です。
通常、交通事故の慰謝料は被害者に対して支払われますが、死亡事故については遺族も精神的な苦痛を受けていますので、本人だけでなく、遺族に対する慰謝料も含まれます。
入通院損害賠償の内訳
交通事故の入通院損害賠償は、次の要素を基に計算します。
入通院損害賠償は、入院費や通院費、交通事故に遭った精神的苦痛(慰謝料)に対する補償も含まれます。
<自動車交通事故で請求できる損害賠償の内訳>
種類 | 内容 |
---|---|
治療費 | 手術や処置にかかる費用。 通院時に発生した費用も含まれる。 |
入院費 | 病室の利用料など。入院日数が多くなるほど慰謝料は増額される。 |
交通費 | 通院にかかる費用。 |
精神的 苦痛 (慰謝料) |
事故の恐怖ショック、怪我の痛みなどの苦痛。精神的苦痛の度合いは、医師の 診断書などを基に判断する。 |
入通院慰謝料の算定基準
交通事故の入通院慰謝料の算定方法は3種類あり、同じ交通事故でも、用いる算定方法によって慰謝料の額は異なります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士(裁判)基準
自賠責基準は、国が定める最低限の補償基準です。
入院に対する慰謝料は1日当たり4,300円と定められており、入院期間が長くなるほど受け取れる額は増えていきます。
任意保険基準は、各保険会社が独自に設定している補償基準です。
加害者が任意保険に加入している場合、保険会社は任意保険基準により算定した額を示談交渉の場で提示してきます。
弁護士(裁判)基準は、過去にあった判例等から慰謝料の額を算出する補償基準です。
3種類の中で最も慰謝料の額が大きくなる算定方法ですが、弁護士基準で慰謝料を請求するためには専門的な知識が不可欠です。
見舞金と慰謝料の違い
見舞金は、加害者が被害者の精神的苦痛を和らげるために、自発的に支払うものです。
治療費や慰謝料などの損害賠償金とは異なり、法律上の支払い義務はないため、見舞金を受け取るかどうかは被害者が決めることになります。
見舞金として支払われる金額は、数万円から数十万円程度が相場とされていますが、被害者の怪我の程度によっては金額が大きくなることもあります。
なお、見舞金は慰謝料とは別で支払われるものであるため、 見舞金を受け取ったとしても、示談交渉で不利になる可能性は低いです。
交通事故の入院期間1週間と
1か月で慰謝料はどれぐらい違う?
交通事故の入通院慰謝料は入院期間によって違いますので、入院期間が1週間と1か月における自賠責基準と弁護士基準の金額をご紹介します。
入院1週間の場合
入院期間1週間の場合における、自賠責基準と弁護士基準の慰謝料の額は次のとおりです。
- 自賠責基準:3万円程度
- 弁護士基準:8万〜15万円程度
自賠責基準の慰謝料は1日当たり4,300円となっていますので、1週間の場合には3万100円が慰謝料の額となります。
それに対し、弁護士基準は自賠責基準の数倍の慰謝料を請求することができるため、10万円を超えることも珍しくありません。
入院1か月の場合
入院期間1か月の場合における、自賠責基準と弁護士基準の慰謝料の額は次のとおりです。
- 自賠責基準:13万円程度
- 弁護士基準:35万〜60万円程度
自賠責基準は、入院期間が1か月になったとしても、1日当たりの金額は4,300円のままです。
したがって、30日入院した際の入通院慰謝料は12万9,000円となります。
一方、弁護士基準で算定する場合には、長期間の入院に伴う精神的・肉体的苦痛を加味するため、1か月の入院に対しては35万〜60万円程度の慰謝料が支払われることが多いです。
入通院慰謝料の計算例
被害者が交通事故で負傷し、10日間の入院と3か月の通院(実通院日数30日)を余儀なくされた場合の自賠責基準と弁護士基準の計算例をご紹介します。
自賠責基準の場合
自賠責基準は、次の計算式のいずれか少ない金額が入通院慰謝料となります。
- ①4,300円×全治療期間(入院日数+通院期間)
- ②4,300円×(実入通院日数×2)
<計算例>
- ①4,300円×(10日+90日)=43万円
- ②4,300円×{(10日+30日)×2}=34万4,000円
- 43万円>34万4,000円=34万4,000円(入通院慰謝料)
弁護士基準の場合
弁護士基準は、入通院慰謝料算定表を用いて金額を計算します。
入通院慰謝料算定表は、交通事故の損害賠償額算定基準をまとめた書籍「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」に記載されている表で、損害額を算定する基準として用いられています。
表には重傷用(別表Ⅰ)と軽傷用(別表Ⅱ)がありますが、本件では重傷用で慰謝料を算定します。
〇入院10日分の日割り計算
- 17万6,000円
- 73万円+17万6,000円=90万6,000円(入通院慰謝料)
交通事故で後遺障害を負った場合は慰謝料が増える
交通事故で後遺障害を負ったときは、後遺障害に対する慰謝料を請求することになりますが、請求前に後遺障害等級の認定を受けなければなりません。
後遺障害には等級が定められており、認定される等級によって受け取れる慰謝料は上下します。
また、後遺障害慰謝料も入通院慰謝料と同様、自賠責基準と弁護士基準のどちらを用いるかで慰謝料の額は変わりますので、納得する慰謝料を加害者に求める際は、弁護士基準で算定することが望ましいです。
交通事故の入通院慰謝料は弁護士に依頼すること
交通事故の被害者となった場合、加害者と示談交渉を行うことになりますが、入院を余儀なくされた状態で、示談交渉などの交通事故に関する手続きを行うのは大変です。
加害者が真摯に応対するとは限りませんし、慰謝料や損害賠償金の額を減らすために交通事故の責任を認めない可能性もあります。
被害者は示談交渉が長引くだけ、精神的な苦痛を負ってしまうことになりますので、交通事故の被害に遭った際は1度弁護士に相談してください。
みらい総合法律事務所は無料相談を行なっています。ぜひご利用ください。
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代表社員 弁護士 谷原誠