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遷延性意識障害の後遺障害等級と解決事例

最終更新日 2024年 07月12日

遷延性意識障害の後遺障害と慰謝料増額の解決事例

交通事故により頭部に重大な被害を受けた場合、被害者は「遷延性意識障害」という後遺症を負ってしまうことがあります。

遷延性意識障害とは、意識不明のまま長期にわたる昏睡状態に陥るもので、被害者自身が自発的に活動できないことから、植物状態といわれる場合もあります。

今回は、遷延性意識障害(植物状態)の後遺障害等級の種類から、損害賠償請求での注意ポイントまでを包括的かつ網羅的に解説します。

私たちが実際に解決したオリジナルの事例も紹介します。

必ず役に立つ情報がありますので、最後まで読んでください。

遷延性意識障害(植物状態)の後遺障害等級認定について

医学上、遷延性意識障害(植物状態)が認められるには次のすべての要件を満たす必要があります。

①自力で移動できない
②自力で食事や飲物の摂取ができない
③糞尿が失禁状態である
④眼で物の動きを追っても、それが何であるか確認できない
⑤「手を握って」、「口を開けて」などの簡単な指示には応じることはあっても、それ以上の意思の疎通は不可能
⑥声を出すことはできても、意味のあることは言えない
⑦以上の状態が3ヵ月以上続いている

【参考情報】日本救急医学会「遷延性意識障害」
http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/0815.htm

そして、遷延性意識障害(植物状態)になると、日常生活において、常時介護が必要になります。そこで、自賠責の後遺障害等級についても、もっとも重い次の後遺障害等級が認定されます。

<別表第1、1級1号>
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」

【参考情報】国土交通省「自賠責後遺障害等級表」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment_pop.html

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遷延性意識障害(植物状態)の介護に関わる5つの損害賠償項目

遷延性意識障害(植物状態)のために介護が必要になった場合、被害者やその親族は次の5つの項目について損害賠償請求することができます

①将来介護費

重度の後遺障害が残り、他人の介護を受けなければ生活できない場合に認められる費用です。

将来介護費を算出する際の計算式は次の通りです。

「将来介護費 = 基準となる額 × 生存可能期間に対するライプニッツ係数」

基準となる額は、職業付添人の場合は実費全額、近親者付添人の場合は1日につき8000円が目安とされていますが、あくまでもこの額は目安であるため、具体的な症状や介護状況によって金額が増減することがあります。

生存可能期間は、原則として平均余命年数に従います。

ライプニッツ係数とは、現時点のお金の価値と将来のお金の価値が違うことから、その差を調整するための数値です。

【参考情報】
「就労可能年数とライプニッツ係数表」国土交通省

②将来雑費

手袋や紙おむつ、タオル、防水シート、カテーテルなど、重度後遺障害者の介護のために消費される物品の費用です。

将来雑費の算出は、次の計算式を用います。

「将来雑費 = 雑費の年額 × 生存可能期間に対するライプニッツ係数」

なお、仮に訴訟になった場合、立証のためには領収書が必要になります。
領収書などは、しっかり保存しておいてください。

③装具・器具等購入費

介護支援ベッドや介護用浴槽など、遷延性意識障害者が日常生活を送るために必要となる物品の費用です。

④家屋等改造費

被害者本人が正常な判断ができなくなってしまった場合は、本人に代わって訴訟追行等の手続きを行なうため、法定代理人を選任する必要があります。

その際に成年後見人を選任するためにかかる費用も損害賠償請求することができます。

また、審判手続きにかかる費用は、必要かつ相当な範囲で損害として認められています。


なお、上記の費用以外にも損害賠償請求できる項目には次のものがあります。

・治療費
・入院付添費(被害者が入院している間に付き添うことに対する費用)
・入院雑費(入院することによって発生する洗面用具や軽食当の費用)
・損害賠償請求関係費用(診断書や成年後見開始の審判手続き費用等)
・傷害慰謝料
・後遺症慰謝料
・逸失利益

【関連記事】
交通事故の遷延性意識障害における示談交渉のポイント

示談交渉や裁判の時に必要な成年後見制度について

被害者の後遺障害等級が認定されると、加害者側の保険会社と示談交渉をしなければいけません。

ところが、遷延性意識障害で植物状態になった場合、被害者本人には示談交渉をする能力がまったくない状態になってしまいます。

このような時は、原則として家庭裁判所に成年後見開始の審判手続きを行なう必要があります。

日常生活を一人で送ることができないなど、本人の判断能力がまったくない場合になされるのが、成年後見です。

後見開始の審判の結果、被害者本人(成年被後見人)を援助する人として成年後見人が選任されます。

成年後見人は、本人を代理して示談交渉や訴訟を行ないます。

なお、自賠責保険では、「問題が生じた場合には一切の責任を負う」という内容の念書を提出したうえで、成年後見人ではない者(通常は親族)が保険金を受け取ることができる場合があります。

なぜなら、つねに成年後見手続きが必要だとすると、手続きに長い期間がかかるため、それでは被害者保護に欠ける場合があるからです。

成年後見制度については、次の裁判所ホームページの解説も参考にしてください。

【参考記事】
「成年後見制度」裁判所

遷延性意識障害(植物状態)の介護と裁判での立証について

遷延性意識障害(植物状態)の被害者は意識がないため、生命活動を維持するための行為については介護が必要になります。

数時間ごとの痰の吸引、床ずれ防止のための体位変換、定期的なおむつの交換、食事、入浴、更衣などです。

痰の吸引は、昼も夜もなく365日24時間体制で行なわなければいけません。

体位変換や入浴は、1人の介護者が行なうには困難なほど大変な体力仕事です。

また、さまざまな感染症の予防にも配慮しなければいけません。

植物状態の被害者を自宅介護している近親者は、毎晩熟睡できないなど大変な日々を送っているのが現状です。

損害賠償で裁判になった場合は、介護の状況を立証するために、医師や介護に携わっている人の意見書や報告書なども裁判で提出します。

また、現在ではビデオ機器の性能が向上して誰でも動画を撮影することができるので、被害者の状況や介護している状況等をビデオ撮影して、その動画を提出するような工夫をする場合もあります。

【参考記事】
【将来介護費】交通事故の被害者と家族が損をしないために知っておくべきこと

遷延性意識障害における損害賠償請求での注意ポイント

訴訟にまで発展するケースが少なくない

遷延性意識障害(植物状態)の場合、労働能力喪失率は100%とされます。

そのため、通常は逸失利益や後遺障害慰謝料、介護費用が高額になることから、訴訟にまで至るケースが少なくないのが現実です。

なぜなら、一般的に裁判基準の損害賠償金額と加害者側の保険会社が提示する金額に大きな開きが出てしまい、被害者側と加害者側の示談交渉では解決しないからです。

早期に成年後見の申立を行なうべき

植物状態の患者は感染症にかかりやすく、平均余命まで生存できないことも多くあります。

交渉の過程で被害者が亡くなってしまった場合、死亡してから以降の将来介護費を請求できなくなってしまいます。

そのため、交通事故により被害者が植物状態になってしまった時は、早急に「成年後見申立」の手続きを行なうとともに、訴訟提起を前提に証拠の収集を行なう必要があります。

保険会社が生存可能期間を制限してきた場合の対応

生存可能期間を制限する主張

植物状態の被害者の生存可能期間が損害賠償請求で大きな問題になることがあります。

通常の後遺障害の場合、平均余命にしたがって、将来介護費や将来雑費を算出します。

一方、植物状態などの重い後遺障害を負った被害者の場合は、感染症にかかりやすいなどの理由から通常よりも生存可能期間が短いとされ、平均余命年数未満の生存可能期間を用いられる可能性があります。

中には、そうした判例がありますし、生存可能期間が短いとされる統計資料もいくつか存在します。

しかし、そうした統計資料は未だに証明に足るものではないこと、また現代医療の進歩により延命が可能になったことなどから、現在の損害賠償の実務では平均余命までの生存可能期間を用いるのが一般的です。

示談交渉では、加害者側の保険会社は生存可能期間を限定した過去の判例を引用しながら将来介護費や逸失利益などの減額を迫ってくることがありますが、これに屈してはいけません。

被害者側は平均余命いっぱいの生存可能期間をしっかりと主張することが大切です。

このような場合、被害者側の請求金額と加害者側の保険会社が提示してくる金額には著しい差があることが一般的ですが、この金額の差は交渉を重ねても埋まることはほとんどありません。

ですから、仮にこのような状況になってしまった場合は、すぐに成年後見人を選任して、証拠資料を収集し収取し、法的手続きを取る必要があります。

ただし、こうした手続きは専門家でなければ難しいものですから、将来介護費について問題になった場合は弁護士に相談することをお勧めします。

平均余命までの将来介護費用を認めた裁判例

千葉地裁佐倉支部判決平成18年9月27日(出典:判時1967号108頁)です。

症状固定時38歳の男性が遷延性意識障害の後遺障害(自賠責等級1級)を残した事案で、被告は、原告太郎の重篤な病態に照らし、その余命は症状固定日から約10年間と推定すべきであると主張しました。

しかし、裁判所は、以下の理由で、被告の主張を排斥し、平均余命までの将来将来介護費用を認めました。

丁山意見書は、その根拠の一つを、植物状態になると感染症や褥創が起こりやすくなることに置くものであるところ、このような症状は、十分な介護によりその危険性を低減させることが可能であるから、同意見書がそのような十分な介護が実施された場合の余命についてまで及び得るかについては疑問なしとし得ない。

また、丁山意見書も引用してその根拠の一つとしている戊田論文は、自動車事故対策センターの寝たきり者1,898例を基に生存余命を推定するものであるが、寝たきり状態を脱却した者の脱却以後の生存期間が計算に入っていないものであるため、これを根拠に寝たきり者の生存余命が短いとすることには疑問がある。

丙川意見書も、戊田論文を前提にして原告太郎の余命を7年程度と推定しつつも、余命は療養場所によって変わる可能性があり、植物状態からの脱却の可能性も残されているとするものであるから、これをもって原告太郎の余命が短いとみることはできない。

むしろ、Jセンターによる外傷性植物症患者の生命予後は、脳損傷により植物状態の介護料受給者の平均死亡率が15.2%であるのに、同センターでの年間死亡率は1.2%であるとして、十分な介護・医療により良好な生命予後を実現しているとしており、適切な環境設定により死亡率を低くすることができることが窺える。

そして、原告太郎に対しては、感染症や褥創を防止するための措置が採られ、現在の病状は安定しており、自宅介護に移行した後も、これと同程度の環境が整えられるべく計画されていることは前記認定のとおりであり、その生命予後が不良であることを窺わせるような具体的な事情は見出せない。

以上を総合するに、原告太郎が平均余命まで生存することができないと認めることはできないというべきであるから、同原告の将来の付添介護料を算定するにあたっては、平均余命を用いるのが相当であり、簡易生命表を用いて症状固定時38歳であった同原告の余命を41年間とみるのが相当である。

みらい総合法律事務所の遷延性意識障害の解決事例

約2400万円増額して解決した事例

それでは、私たちが交通事故で遷延性意識障害になってしまった被害者から依頼を受けて、実際に解決したオリジナルの事例をご紹介します。

横断歩道を横断中、70歳男性が自動車に衝突され、救急車で病院に搬送されました。
しかし、意識が戻らず、遷延性意識障害の後遺障害を負ってしまいました。
後遺障害等級1級1号が認定された後、加害者側の保険会社との示談交渉が始まり、提示された金額は4505万3820円でした。
被害者の親族は、この金額が妥当なものかどうか判断がつかなかったため、当法律事務所に相談したところ、増額が可能との意見が出たため交渉を依頼しました。
最終的には訴訟を提起し、将来介護費などの立証をしたことで、6950万円で解決しました。
保険会社提示額から、約2400万円増額したことになります。

約約3500万円増額して解決した事例

74歳の女性が交通事故で脳挫傷などの傷害を負い、後遺障害等級は1級1号が認定されました。
加害者側の保険会社との交渉が開始され、示談金5563万2490円が提示されました。
今後の交渉の進め方や金額が妥当なものかなどに不安を感じたご家族が当法律事務所に依頼。
弁護士と保険会社との交渉が本格的に開始されました。
ところが、逸失利益や将来介護費で話がつかず提訴。
最終的には裁判所がこちらの主張を認め、約3500万円増額の9000万円で和解が成立しました。

以上、遷延性意識障害(植物状態)の親族などが知っておくべき後遺障害等級や損害賠償について解説しました。

遷延性意識障害(植物状態)は、その判断が難しく、将来的に続く介護は大変な負担になります。

加害者側の保険会社との示談交渉で争いが起きた場合は、ひとりで悩まず、法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

【動画解説】遷延性意識障害の論点と解決事例

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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