交通事故による頚椎損傷の後遺症とは?慰謝料の相場も解説
頚椎は人間にとって重要な部位であり、交通事故で頚椎を損傷してしまうと、日常生活を送るのが難しくなる後遺症を負うことがあります。
本記事では、交通事故による頚椎損傷の後遺症と認定される後遺障害等級、加害者に請求できる慰謝料の相場について解説します。
目次
頚椎損傷とは
頚椎は、首部分にある脊椎骨をいい、7つの椎骨で構成されています。
脊椎の中で最も上部に位置する場所にあり、頭を支える役割だけでなく、首を色々な方向に動かせる機能も有しています。
頚椎の中には生命を維持する脳幹下部や、手足などの機能をつかさどる神経が通っているので、頚椎に異常や障害が出ると身体の機能に著しい影響を及ぼす可能性があります。
頚椎損傷による症状は、損傷した場所によって症状が異なり、頭に近い部分の頚椎が損傷するほど症状が重くなります。
交通事故で頚椎を損傷してしまった場合、首から下の筋肉が麻痺して動かなくなるケースだけなく、自律神経障害や排泄障害などの重い症状が残ることもあるので非常に危険です。
頚椎損傷の原因
頚椎損傷は、主に外部から強い衝撃が加わることで首の骨が骨折や脱臼し、脊髄が圧迫されることで起こります。
損傷した脊髄は修復されないため、治療を施しても後遺症として麻痺が残ってしまいます。
ラグビーやアメフトなど、接触する機会が多いスポーツは頚椎を損傷しやすく、高い場所から落下した際に首を怪我したことで頚椎を損傷するケースもあります。
交通事故では全身に強い衝撃が加わるため、手足の骨折だけでなく、頚椎を損傷するリスクも潜んでいます。
頚椎を損傷した際は、患部を安静に保つために頚部を固定するなどの処置が必要です。
脊髄が圧迫されている状態であれば、麻痺の進行を抑制するために手術を行うなど、症状に応じた迅速かつ適切な治療を施さなければなりません。
頚椎損傷の後遺障害等級は?
頚椎損傷による後遺障害は、症状によって認定される等級が異なります。
神経症状が残った場合
頚椎損傷によって神経症状が残った場合には、自動車損害賠償保障法施行令別表第二の障害等級第12級13号または第14級9号に認定される可能性があります。
等級 | 症状 | 慰謝料の額 |
---|---|---|
第12級 13号 |
局部に頑固な神経症状を 残すもの |
224万円 |
第14級 9号 |
局部に神経症状を残すもの | 75万円 |
神経症状は、神経系の一部または全部が侵されたことで起こる症状です。
神経系には身体の機能をコントロールする役割がありますが、交通事故で脊髄が損傷してしまうと、手足の痺れやめまい、吐き気などの症状が残ることがあります。
症状が重いほど認定される後遺障害等級が高くなり、慰謝料として請求できる額も多くなります。
変形障害を負った場合
頚椎損傷によって脊柱の形が変わってしまった場合には、自動車損害賠償保障法施行令別表第二の障害等級第6級5号または第11級7号に認定される可能性があります。
等級 | 症状 | 慰謝料の額 |
---|---|---|
第6級 5号 |
脊柱に著しい変形または 運動障害を残すもの |
1,296万円 |
第11級 7号 |
脊柱に変形を残すもの | 331万円 |
変形障害は、骨折や脱臼などが原因で骨が変形し、関節の可動域が制限される症状が残る障害です。
頚椎に変形障害が残ってしまった場合、首の痛みや痺れだけでなく、手足が自由に動かなくなるなどの症状が出ることもあります。
脊柱が変形した場合も後遺障害として認定されますが、変形したことで運動障害が残った際は認定される等級が高くなります。
機能障害を負った場合
頚椎損傷によって機能障害が残った場合には、自動車損害賠償保障法施行令別表第二の障害等級第6級5号または第8級2号に認定される可能性があります。
等級 | 症状 | 慰謝料の額 |
---|---|---|
第6級 5号 |
脊柱に著しい変形または 運動障害を残すもの |
1,296万円 |
第8級 2号 |
脊柱に運動障害を残すもの | 819万円 |
機能障害は、人間の身体の機能の喪失や、異常を起こす症状です。
頚椎の機能障害としては、手足の痺れを原因とした運動障害や歩行障害だけでなく、排泄機能障害などがあります。
仕事ができなくなる症状が
残った場合
頚椎損傷によって仕事ができなくなる程度の症状が残った場合、自動車損害賠償保障法施行令別表第二の第3級3号または第5級2号に認定される可能性があります。
等級 | 症状 | 慰謝料の額 |
---|---|---|
第3級 3号 |
神経系統の機能または精神に 著しい障害を残し、終身労務に 服することができないもの |
2,219万円 |
第5級 2号 |
神経系統の機能または精神に 著しい障害を残し、特に軽易な 労務以外の労務に服することが できないもの |
1,574万円 |
頚椎は7つの椎骨から構成されていますが、頭に近い部分の頚椎が損傷するほど症状が重くなるため、損傷した場所によっては仕事をするのが難しくなるほどの後遺障害を負うこともあります。
介護が必要になる症状が
残った場合
頚椎損傷によって介護が必要になる程度の症状が残った場合、自動車損害賠償保障法施行令別表第一の第1級または第2級に認定される可能性があります。
等級 | 不注意の 症状 |
慰謝料の額 |
---|---|---|
第1級 | 神経系統の機能または精神に 著しい障害を残し、常に介護を 要するもの |
4,000万円 |
第2級 | 神経系統の機能または精神に 著しい障害を残し、随時介護を 要するもの |
3,000万円 |
一般的な後遺障害の等級は、自動車損害賠償保障法施行令別表第二で定められていますが、介護を要する後遺障害を負ったときは、自動車損害賠償保障法施行令別表第一に定める後遺障害の対象となります。
後遺障害に対する慰謝料としては最も大きく、死亡慰謝料と同等、または死亡慰謝料を超える額を請求できます。
頚椎損傷の後遺障害慰謝料の相場
頚椎損傷に対する後遺障害慰謝料の額は、認定される後遺障害等級によって異なり、交通事故による慰謝料を算定する基準は複数あるため、用いる基準によって請求できる慰謝料の額は変わります。
自賠責基準の相場
自賠責保険基準は、自動車損害賠償保障法施行令に規定されている金額を基に慰謝料の額を算出する基準です。
たとえば、頚椎損傷の後遺障害等級で最も低い14級9号に該当した場合、自賠責基準の慰謝料の額は75万円です。
先にご紹介した頚椎損傷の症状に応じた慰謝料の額は、自動車損害賠償保障法施行令に基づくものですが、算定される慰謝料の額は他の基準よりも低くなります。
高い等級が認定された際には慰謝料の額も大きくなりますが、次に紹介する弁護士基準に比べると慰謝料として受け取れる金額は小さいです。
弁護士基準(裁判基準)の相場
弁護士基準は、過去の裁判例などを参考に慰謝料の額を算定する基準です。
自賠責基準と違い、後遺障害等級ごとに定められている金額はありませんが、弁護士基準で後遺障害慰謝料を算定すると、自賠責基準の1.5倍から3倍程度になることが多いです。
たとえば、頚椎損傷の後遺障害等級で最も低い14級9号に該当した場合、弁護士基準の慰謝料の額は110万円です。
また、慰謝料は被害者が被った精神的な苦痛などに対する補償ですので、加害者が交通事故を起こした理由が悪質なものであったときは慰謝料が増額されます。
交通事故で頚椎損傷を負った際に
請求できる示談金
交通事故で頚椎損傷となった場合、症状や被害者の状態に応じて示談金を請求することになります。
示談金の内訳
示談金は、当事者同士の合意によって裁判所を介さずに紛争を解決する場合において、加害者から支払われるお金の総額です。
交通事故で負った怪我の治療費や入院費は示談金の対象ですし、働くことができなかったことで減収となった分も損害賠償請求できます。
また、交通事故が原因で本来得られるはずだった収入が減った(失った)場合には、年齢や後遺障害等級などに応じて算定した逸失利益に対する補償を求められます。
種類 | 内容 |
---|---|
治療費 | 怪我を治療するために必要となった 手術代、診察料など |
入院費 | 怪我を治療するために入院した際に 生じた費用 |
休業損害 | 仕事を休んだことで生じた減収 |
逸失利益 | 後遺障害や死亡により、将来得られる はずだった利益(収入) |
物的損害 | 自動車などの修理費用など |
慰謝料 | 交通事故に伴う精神的苦痛 |
慰謝料の種類
慰謝料は、交通事故に遭ったことで精神的苦痛を被ったことに対する補償ですが、被害者の状況によって請求する慰謝料の種類が異なります。
入通院慰謝料は、交通事故で入院や通院をすることになった精神的苦痛に対する補償です。
自賠責基準の入通院慰謝料の相場は1日当たり4,300円で、弁護士基準も自賠責基準と同様、被害者の入通院期間によって金額は変動します。
ただし、重い怪我を負ったときほど慰謝料の相場は高くなるため、被った損害が大きいときほど弁護士基準で算定することが望ましいです。
後遺障害慰謝料は、交通事故で後遺障害を負ったことに対する補償です。
被害者が認定された後遺障害等級によって慰謝料の額が変わり、弁護士基準の慰謝料は自賠責基準の1.5倍から3倍程度が相場となっています。
死亡慰謝料は、交通事故で被害者が死亡したことで受けた精神的苦痛に対する補償です。
入通院慰謝料や後遺障害慰謝料は、被害者本人が被った苦痛に対する補償ですが、死亡慰謝料については、被害者の家族が受けた苦痛に対する補償も含まれます。
自賠責基準による死亡慰謝料は、被害者の年齢に関係なく一律400万円です。
慰謝料を請求できる遺族がいる場合、1人のときは550万円、2人のときは650万円を請求できます。
弁護士基準の死亡慰謝料は、交通事故の状況等に応じて金額を算定しますが、一般的には2,000万円から2,800万円が相場です。
頚椎損傷による後遺症の
慰謝料請求は弁護士に依頼すること
打撲や骨折は、時間が経過すれば回復することが多いですが、損傷した頚椎は修復されないため、交通事故で首を怪我してしまうと後遺症が残ってしまう可能性が高いです。
加害者に請求できる慰謝料の額は、後遺障害の有無や認定される後遺障害等級によって違いますし、加害者が任意保険に加入している場合、保険会社の担当者が示談交渉の場に出てきます。
示談交渉には専門知識や経験が不可欠ですので、交通事故で頚椎を損傷したときは、弁護士に手続きおよび示談交渉を依頼してください。
みらい総合法律事務所は無料相談を行なっています。ぜひご利用ください。
弁護士へのご相談の流れ
↑↑
代表社員 弁護士 谷原誠