通勤労災の後遺障害の慰謝料の相場と計算
業務中や通勤途中に交通事故にあい、ケガや後遺症を負った場合の「労働災害(労災)」について解説します。
労災には大きく分けると「業務災害」と「通勤災害」の2種類があり、交通事故が関わる労災は次のようになります。
- ・業務で自動車などを運転中に交通事故にあった場合=業務災害
- ・通勤途中で交通事故にあった場合=通勤災害
労災が認定された場合、労働者(被害者)の方は労災保険を使うことができます。
労災保険は健康保険とは違い、労働者の自己負担額がないというメリットがあり、次のような補償を受けることができます。
- ・療養補償給付=診察、治療などに対する補償。
- ・休業補償給付=ケガの治療ために労働できない場合、休業の4日目から休業が続く間の補償が支給される。
- ・傷病補償年金=治療開始後1年6か月を経過してもケガが治らない場合、傷病等級に応じて支給される。
- ・障害補償給付=ケガが治った、もしくは症状固定(それ以上の回復が見込めない状態)後に後遺障害等級(1~14級)に基づいて支給される。
なお、これらの補償でも足りない分の損害賠償金については、会社に対して慰謝料や逸失利益などを請求できます。
本記事では、労災における後遺障害等級の他、慰謝料の計算方法や相場金額についても解説します。
交通事故と労災の関係とは?
(1)労災と通勤災害は何が違う?
労働(仕事)中の業務が原因で、ケガや病気、障害、死亡に至った場合を「労働災害(労災)」といいます。
第2条(定義)
1.労働災害 労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。
そして、労災には大きく分けると「業務災害」と「通勤災害」の2種類があり、交通事故が関わる場合は次のようになります。
- ・業務で自動車などを運転中に交通事故にあった場合=業務災害
- ・通勤途中に交通事故にあった場合=通勤災害
(2)業務災害の労災認定基準
業務災害の労災認定基準には次の2つがあります。
- 業務遂行性=労働者が使用者(会社)の支配下にある状態
- 業務起因性=業務に内在する危険性が現実化し、業務と死傷病の間に一定の因果関係があること。
参考情報:「業務災害について」(厚生労働省)
通勤災害の認定ポイント
①通勤とは?
労働者災害補償保険法の第7条では、「通勤」について次のように規定しています。
「通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。」
- ・住居と就業の場所との間の往復
- ・就業の場所から他の就業の場所への移動
- ・住居と就業の場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動
これらの移動を、「合理的な経路と方法」で行なっていれば、通勤災害と認められるとしています。
そして、「移動の経路を逸脱したり、移動を中断した場合」には、「逸脱または中断の間と、その後の移動は通勤にはならない」としています。
ただし、逸脱や中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行なうための最小限度のものであれば、逸脱や中断の間を除き「通勤」となります。
参考情報:「通勤災害について」(東京労働局)
(3)通勤災害の認定条件をさらに詳しく解説
次に、通勤災害の各ポイントについて解説していきます。
①就業とは?
通勤災害が認められるには、移動行為が業務に就くため、または業務を終えたことにより行なわれるものであることが必要になります。
- ・交通事故の当日は就業することとなっていた
- ・現実に就業していた
②住居とは?
労働者が日常生活を送っていると認められる場所で、就業のための拠点となるところが住居とされます。
- ・概ね1ヵ月に1回以上の往復行為、または移動があることが必要とされます。
- ・勤務状況や、やむを得ない事情などにより一時的に自宅以外に住居を移していると認められる場合も住居になります。
- ・就業で必要なために労働者が自宅の他で、たとえば就業場所の近くにアパートやホテル等の宿泊施設、親族宅などを借りてそこから通勤している場合では、その場所も住居になります。
- ・具体的には、通常は家族のいる自宅から出勤しているが、早出や長時間の残業の際は別に借りているアパートなどから出勤している場合は、自宅とアパートの両方が住居と認められます。
③通勤が開始される場所とは?
住居の形態によって、通勤が始まる場所に違いがあります。
マンションやアパートなどの集合住宅の場合は玄関のドアから、戸建住宅では玄関ではなく門戸からとなります。
④就業の場所とは?
業務を開始し、または終了する場所です。
⑤就業の場所から他の就業の場所への移動について
複数の異なる事業場で働く場合、たとえば一つ目の就業の場所での勤務が終了した後に二つ目の就業の場所へ向かう場合の移動のことになります。
⑥住居と就業の場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動について
たとえば転勤・転任のために、その直前の住居(自宅など)と就業の場所との間を日々往復することが困難になった(片道60キロメートル以上など)労働者が住居を移転した場合、自宅などと移転した居住場所との間の移動のことです。
⑦合理的な経路及び方法について
たとえば、通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしてもそれらの経路はいずれも合理的な経路となります。
当日の交通事情により迂回した場合の経路、マイカー通勤者が貸切りの車庫を経由して通る経路など、通勤のためにやむを得ずとる経路も合理的な経路となります。
一方、特段の合理的な理由もなく、著しい遠回りとなる経路をとる場合などは合理的な経路とはなりません。
⑧業務の性質を有するものについて
事業主の提供する専用交通機関を利用する出退勤や緊急用務のため休日に呼出しを受けて緊急出動する場合などは業務になるため、通勤災害ではなく業務災害になります。
⑨移動の経路を逸脱し、又は中断した場合について
通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれることを「逸脱」といいます。
通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことを「中断」といいます。
ただし法律で例外が設けられていて、「日常生活上必要な行為」であって、「厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合」には、逸脱や中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤となるとされています。
- 通勤経路上にあるスーパーやコンビニなどに立ち寄り食品や日用品(タバコ・飲料水。雑誌など)を買う
- 駅構内やコンビニなどでの飲料水の立ち飲み
- 通勤経路の近くにある公衆トイレの使用
- 公園での短時間の休憩
- 病院等で診察や治療を受ける
- 子供を託児所や保育園などに預ける
- 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
- 選挙権の行使その他これに準ずる行為 など
一方で、日用品以外の物を購入した場合、カフェ等でゆっくりお茶を飲んだ場合、居酒屋等で飲食をした場合などは「通勤経路の逸脱」となります。
【関連動画】通勤労災で労災保険と自賠責保険のどちらを使う?弁護士解説。
労災保険の内容を解説
(1)労災保険とは?
交通事故で傷害(ケガ)を負った場合は、入院・通院をして治療を受けると思いますが、その際、どの保険を使えばいいのかという問題があります。
業務災害や通勤災害で被害者の方が労災認定を受けた場合、労災保険を使うことができます。
- 「労働基準法」や「労働者災害補償保険法(労災保険法)」などの法律では災害補償制度が定められているため、労災保険では国からさまざまな補償を受けることができます。
- また、労災保険は、健康保険とは違い、労働者の自己負担額がないというメリットがあります。
参考情報:「労働災害が発生したとき」(厚生労働省)
(2)労災保険の補償内容
労災保険では、次のような補償を受けることができます。
①療養補償給付
診察、治療などに対する補償。
②休業補償給付(休業給付)
ケガの治療ために労働できない場合、休業の4日目から休業が続く間の補償が支給される。
③傷病補償年金(傷病年金)
治療開始後1年6か月を経過しても治らない場合、傷病等級に応じて支給される。
④障害補償給付(障害給付)
ケガが治った、もしくは症状固定(それ以上の回復が見込めない状態)後に後遺障害等級(1~14級)に基づいて支給される。
⑤介護補償給付(介護給付)
後遺障害等級が1級と2級で常時介護が必要になった場合の補償。
⑥遺族補償年金(遺族年金)※死亡の場合
労働者が死亡した場合、遺族に支給される。
⑦葬祭料(総裁給付)※死亡の場合
労働者が死亡した場合、支給される葬祭費。
参考情報:「労災保険給付の概要」(厚生労働省)
(3)自賠責保険と労災保険どちらを優先させるか?
ところで、交通事故に関わる保険には自賠責保険もあります。
自賠責保険は、自動車やバイクの運転者や所有者は必ず加入しなければいけないものであるため強制保険とも呼ばれています。
ですから、業務中の交通事故でも、通勤災害でも使うことができます。
ただし注意が必要なのは、同じ損害賠償項目について労災保険と自賠責保険の両方から支払いを受けることはできない、という点です。
そこで、被害者の方は労災保険と自賠責保険のどちらを優先させるべきか、という問題がでてきます。
この点について、法的な規定はありません。
労災保険を管轄する厚生労働省から、「原則として自賠責保険の支払を労災保険の給付に先行させるよう取り扱うこと」という通達が出されていますが、これは労働者に対する強制力はないので、被害者の方はどちらの保険を優先させても問題はない、ということになります。
(4)労災保険を優先させたほうがいい場合とは?
次のようなケースでは、労災保険を優先させたほうが有利になる場合があります。
①過失割合が問題になる場合
交通事故では「過失割合」が問題になることが多くあります。
加害者と被害者それぞれが、その交通事故についてどれだけの過失(責任)があったかの割合を過失割合といいます。
【関連動画】示談交渉で過失割合が重要な理由。弁護士解説。
交通事故に対する自分(被害者)の過失が大きく、自賠責保険での過失割合が7割以上の場合は、5割~2割の範囲で保険金額が減額されてしまいます。
これを「重過失減額」といいます。
②加害者が任意保険に加入していない場合
加害者が自賠責保険に加入していない場合、当然ですが自賠責保険を使うことはできません。
では、加害者が自賠責保険しか加入していない、つまり任意保険に加入していない場合はどうでしょうか。
この場合は、労災保険を優先させたほうがいい場合があります。
たとえば、ケガの治療をしたことで後遺障害が残らなかった場合です。
労災保険には慰謝料がありません。
また、傷害(ケガ)の場合の自賠責保険からの支払い限度額は120万円です。
そこで、自賠責保険を優先させた場合、治療費などで120万円を使い切ってしまうと、被害者の方が慰謝料受け取れなくなる可能性があるのです。
こうしたケースでは、
- ・労災保険を優先させて治療を行なう
- ・そのうえで、労災保険から自賠責保険への求償が行なわれる前に自賠責保険に請求する
という方法で、自賠責保険から慰謝料を回収することができる場合があります。
ただ、このあたりは少し難しいので、労災保険か自賠責保険かの選択で悩んでいる場合は一度、交通事故と労災に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。
関連情報:労働災害SOS
労災の場合の後遺障害等級を一覧表で解説
ケガが完治せず、症状固定後に後遺障害が残ってしまった場合などでは、被害者の方としては労災保険からの補償からだけではすべての損害賠償金をまかなえない場合があります。
たとえば、慰謝料や(精神的な損害に対する補償)や逸失利益(交通事故にあわなければ得られるはずだった収入)は金額が大きくなります。
では、被害者の方が慰謝料などを受け取るにはどうすればいいのでしょうか。
(1)労災保険からの補償が十分でない場合は会社に慰謝料請求ができる
労災事故の原因が雇用主である会社にある場合、労働者(被害者)は会社に対し、慰謝料など損害賠償請求をすることができます。
会社と労働者との間には労働契約があり、労働者が会社に対して労働力を提供することで対価として給料を払ってもらうという関係になります。
会社は労働者を働かせる以上、労働者が安全に、事故などに巻き込まれないようにしなければいけない義務があり、これを「安全配慮義務」といいます。
会社が安全配慮義務に違反した場合、労働者(被害者)は損害賠償請求をすることができるのです。
(2)後遺障害等級の認定について
労災保険と自賠責保険では、別々に後遺障害等級が認定されます。
後遺障害等級は、もっとも重度の高い1級から順に14級まであり、身体の各部位や症状の程度の違いなどにより各号数が設定されています。
労災における後遺障害等級表(労働基準法施行規則別表第2)
等級 | 身体障害 |
---|---|
第一級
(労働基準法第十二条の平均賃金の一三四〇日分) |
一 両眼が失明したもの |
ニ 咀嚼及び言語の機能を廃したもの | |
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し常に介護を要するもの | |
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し常に介護を要するもの | |
五 削除 | |
六 両上肢を肘関節以上で失ったもの | |
七 両上肢の用を全廃したもの | |
八 両下肢を膝関節以上で失ったもの | |
九 両下肢の用を全廃したもの | |
第ニ級
(労働基準法第十二条の平均賃金の一一九〇日分) |
一 一眼が失明し他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの |
ニ 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの | |
ニのニ 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し随時介護を要するもの | |
ニの三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し随時介護を要するもの | |
三 両上肢を腕関節以上で失ったもの | |
四 両下肢を足関節以上で失ったもの | |
第三級
(労働基準法第十二条の平均賃金の一〇五〇日分) |
一 一眼が失明し他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの |
ニ 咀嚼又は言語の機能を廃したもの | |
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの | |
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの | |
五 十指を失ったもの | |
第四級
(労働基準法第十二条の平均賃金の九二〇日分) |
一 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの |
二 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの | |
三 両耳を全く聾(ろう)したもの | |
四 一上肢を肘関節以上で失ったもの | |
五 一下肢を膝関節以上で失ったもの | |
六 十指の用を廃したもの | |
七 両足をリスフラン関節以上で失ったもの | |
第五級
(労働基準法第十二条の平均賃金の七九〇日分) |
一 一眼が失明し他眼の視力が〇・一以下になつたもの |
一の二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し特に軽易な労務の外服することができないもの | |
一の三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し特に軽易な労務の外服することができないもの | |
二 一上肢を腕関節以上で失ったもの | |
三 一下肢を足関節以上で失ったもの | |
四 一上肢の用を全廃したもの | |
五 一下肢の用を全廃したもの | |
六 十趾を失ったもの | |
第六級
(労働基準法第十二条の平均賃金の六七〇日分) |
一 両眼の視力が〇・一以下になつたもの |
二 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの | |
三 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの | |
三の二 一耳を全く聾(ろう)し他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの | |
四 脊柱に著しい畸形又は運動障害を残すもの | |
五 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの | |
六 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの | |
七 一手の五指又は拇指を併せ四指を失つたもの | |
第七級
(労働基準法第十二条の平均賃金の五六〇日分) |
一 一眼が失明し他眼の視力が〇・六以下になつたもの |
二 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの | |
二の二 一耳を全く聾(ろう)し他耳の聴力が一メートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの | |
三 神経系統の機能又は精神に障害を残し軽易な労務の外服することができないもの | |
四 削除 | |
五 胸腹部臓器の機能に障害を残し軽易な労務の外服することができないもの | |
六 一手の拇指を併せ三指又は拇指以外の四指を失つたもの | |
七 一手の五指又は拇指を併せ四指の用を廃したもの | |
八 一足をリスフラン関節以上で失つたもの | |
九 一上肢に仮関節を残し著しい障害を残すもの | |
一〇 一下肢に仮関節を残し著しい障害を残すもの | |
一一 十趾の用を廃したもの | |
一二 女性の外貌(ぼう)に著しい醜状を残すもの | |
一三 両側の睾丸を失つたもの | |
第八級
(労働基準法第十二条の平均賃金の四五〇日分) |
一 一眼が失明し又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの |
二 脊柱に運動障害を残すもの | |
三 一手の拇指を併せ二指又は拇指以外の三指を失つたもの | |
四 一手の拇指を併せ三指又は拇指以外の四指の用を廃したもの | |
五 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの | |
六 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | |
七 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | |
八 一上肢に仮関節を残すもの | |
九 一下肢に仮関節を残すもの | |
一〇 一足の五趾を失つたもの | |
第九級
(労働基準法第十二条の平均賃金の三五〇日分) |
一 両眼の視力が〇・六以下になつたもの |
二 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの | |
三 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの | |
四 両眼の眼瞼に著しい欠損を残すもの | |
五 鼻を欠損しその機能に著しい障害を残すもの | |
六 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの | |
六の二 両耳の聴力が一メートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの | |
六の三 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり他耳の聴力が一メートル以上の距離では尋常の話声を解することが困難である程度になつたもの | |
七 一耳を全く聾(ろう)したもの | |
七の二 神経系統の機能又は精神に障害を残し服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
七の三 胸腹部臓器の機能に障害を残し服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
八 一手の拇指又は拇指以外の二指を失つたもの | |
九 一手の拇指を併せ二指又は拇指以外の三指の用を廃したもの | |
一〇 一足の第一趾を併せ二趾以上を失つたもの | |
一一 一足の五趾の用を廃したもの | |
一二 生殖器に著しい障害を残すもの | |
第十級
(労働基準法第十二条の平均賃金の二七〇日分) |
一 一眼の視力が〇・一以下になつたもの |
一の二 正面視で複視を残すもの | |
二 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの | |
三 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |
三の二 両耳の聴力が一メートル以上の距離では尋常の話声を解することが困難である程度になつたもの | |
四 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの | |
五 削除 | |
六 一手の拇指又は拇指以外の二指の用を廃したもの | |
七 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの | |
八 一足の第一趾又は他の四趾を失つたもの | |
九 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | |
一〇 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | |
第十一級
(労働基準法第十二条の平均賃金の二〇〇日分) |
一 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
二 両眼の眼瞼に著しい運動障害を残すもの | |
三 一眼の眼瞼に著しい欠損を残すもの | |
三の二 十歯以上に対し歯科補てつを加えたもの | |
三の三 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの | |
四 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの | |
五 脊柱に畸形を残すもの | |
六 一手の示指、中指又は環指を失つたもの | |
七 削除 | |
八 一足の第一趾を併せ二趾以上の用を廃したもの | |
九 胸腹部臓器の機能に障害を残し労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | |
第十ニ級
(労働基準法第十二条の平均賃金の一四〇日分) |
一 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
二 一眼の眼瞼に著しい運動障害を残すもの | |
三 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |
四 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの | |
五 鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨又は骨盤骨に著しい畸形を残すもの | |
六 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | |
七 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | |
八 長管骨に畸形を残すもの | |
八の二 一手の小指を失つたもの | |
九 一手の示指、中指又は環指の用を廃したもの | |
一〇 一足の第二趾を失つたもの、第二趾を併せ二趾を失つたもの又は第三趾以下の三趾を失つたもの | |
一一 一足の第一趾又は他の四趾の用を廃したもの | |
一二 局部に頑固な神経症状を残すもの | |
一三 男性の外貌(ぼう)に著しい醜状を残すもの | |
一四 女性の外貌(ぼう)に醜状を残すもの | |
第十三級
(労働基準法第十二条の平均賃金の九〇日分) |
一 一眼の視力が〇・六以下になつたもの |
二 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの | |
二の二 正面視以外で複視を残すもの | |
三 両眼の眼瞼の一部に欠損を残し又は睫毛禿を残すもの | |
三の二 五歯以上に対し歯科補てつを加えたもの | |
三の三 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの | |
四 一手の小指の用を廃したもの | |
五 一手の拇指の指骨の一部を失つたもの | |
六 削除 | |
七 削除 | |
八 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの | |
九 一足の第三趾以下の一趾又は二趾を失つたもの | |
一〇 一足の第二趾の用を廃したもの、第二趾を併せ二趾の用を廃したもの又は第三趾以下の三趾の用を廃したもの | |
第十四級
(労働基準法第十二条の平均賃金の五〇日分) |
一 一眼の眼瞼の一部に欠損を残し又は睫毛禿を残すもの |
二 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |
二の二 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの | |
三 上肢の露出面に手掌面大の醜痕を残すもの | |
四 下肢の露出面に手掌面大の醜痕を残すもの | |
五 削除 | |
六 一手の拇指以外の指骨の一部を失つたもの | |
七 一手の拇指以外の指の末関節を屈伸することができなくなつたもの | |
八 一足の第三趾以下の一趾又は二趾の用を廃したもの | |
九 局部に神経症状を残すもの | |
一〇 男性の外貌(ぼう)に醜状を残すもの |
備考
- 視力の測定は万国式試視力表による。
- 指を失つたものとは拇指は指関節、その他の指は第一指関節以上を失つたものをいう。
- 指の用を廃したものとは、指の末節の半分以上を失い又は掌指関節若しくは第一指関節(拇指にあつては指関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
- 趾を失つたものとはその全部を失つたものをいう。
- 趾の用を廃したものとは第一趾は末節の半分以上、その他の趾は末関節以上を失つたもの又は蹠趾関節若しくは第一趾関節(第一趾にあつては趾関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
屈折異常のあるものについては矯正視力について測定する。
参考情報:「労災の障害等級表」(厚生労働省)
注意するべきは、同じ基準で審査されているのですが、労災保険より自賠責保険の後遺障害等級のほうが低く認定される場合が多い傾向にあることです。
また、後遺障害等級が必ず正しく認定されるわけではない、ということにも注意しておくべきです。
その場合は、自賠責後遺障害等級については「異議申立」を、労災の後遺障害等級認定については「審査請求」をすることができます。
後遺障害等級が正しく認定されているか疑問や不安がある場合は、労災と交通事故に詳しい弁護士に相談して、確認してもらうことも検討されるといいと思います。
【関連動画】等級認定がされたら必ず異議申立を検討しないと損。弁護士解説。
参考情報:「行政不服審査法の概要」(総務省)
「行政不服審査法Q&A」(総務省)
慰謝料の種類と相場金額について
(1)被害者の方が受け取れる慰謝料の種類は?
業務災害や通勤災害の被害者の方が受け取ることができる慰謝料は、全部で3種類があります。
①入通院慰謝料(傷害慰謝料)
交通事故で傷害(ケガ)を負った被害者の方の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
②後遺障害慰謝料
後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合に支払われる慰謝料です。
③死亡慰謝料
被害者の方が死亡したことで被った精神的損害に対して支払われる慰謝料です。
【関連動画】慰謝料の全て(傷害、後遺障害、死亡)弁護士解説。
(2)慰謝料計算では基準よって金額が大きく変わる
慰謝料の計算では、次の3つの基準が使われます。
どの基準で計算するかによって受け取ることができる金額が大きく変わってきます。
①自賠責基準
自賠責保険により定められた基準で、3つの基準の中ではもっとも低い金額で設定されています。
②任意保険基準
自賠責保険以外に加入する任意保険による基準で、各損害保険会社が独自で基準を設けており、自賠責基準より少し高いくらいの金額になります」。
③弁護士(裁判)基準
- ・もっとも高額になる基準で、被害者の方が本来受け取るべき金額になります。
- ・弁護士が被害者の方から依頼を受けて、代理人として交渉する場合や裁判になった場合に主張する基準です。
- ・過去の交通事故の裁判例から導き出された基準であるため法的根拠があり、裁判をした場合に認められる可能性が高くなります。
【関連動画】交通事故で、被害者が弁護士基準で示談する方法
(2)後遺障害慰謝料の計算方法と相場金額を一覧表で解説
後遺障害慰謝料は、1級から14級の等級によってあらかじめ概ねの金額が決められています。
後遺障害が重度なほど金額は大きくなります。
ここでは、自賠責基準と弁護士(裁判)基準による金額を等級別の早見表で見てみましょう。
<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の早見表>
たとえば、もっとも等級の高い1級で要介護でない場合、弁護士(裁判)基準で計算した金額は、自賠責基準より1,650万円も高くなり、これが相場金額になります。
労災事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するべき理由。
最後に、現実的なお話をします。
被害者の方としては、できるだけ多くの損害賠償金を望むと思います。
しかし、会社が適正な慰謝料などの損害賠償額を計算して支払ってくれることは少ないと言わざるを得ないのです。
なぜなら、会社としては労災事故による被災労働者に対する慰謝料などの支払は、想定外の大きな支出となってしまうからです。
被害者の方としては、会社と交渉していくのは大きな精神的負担になってしまいます。
また、会社としては被害者の方の主張を簡単には受け入れないという現実もあります。
そうした場合は、労災と交通事故の訴訟問題に実績のある弁護士に相談することを検討してください。
依頼を受けた弁護士は、相談者の代理人として示談交渉を行なっていきますので、あとは安心して任せていただければよろしいと思います。
みらい総合法律事務所では随時、無料相談を行なっています。
労災問題でお困りの場合は、一人で悩まず、気軽にご相談ください。
弁護士へのご相談の流れ
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【関連動画】被害者が弁護士に相談・依頼するメリット・デメリット。弁護士解説。