将来介護費で相場より高額の介護費用を獲得した5つの事例
交通事故の被害で重傷を負い、重度の後遺障害が残ってしまった場合、将来に渡る介護が必要になります。
その介護は誰が行なうのかといえば、ご家族か、あるいは職業介護人に依頼することになるのですが、その際、を加害者側に請求することができます。
ところで、この将来介護費、交通事故の損害賠償実務では難しい項目だといえます。
というのは、長期間必要となる費用であるため金額が大きくなり、加害者側との示談交渉で争点になりやすく、しばしば示談交渉が難航することがあるからです。
できるだけ金額を低く抑えたい保険会社と将来のための補償を多く受取りたい被害者の方では、求めるものが正反対のため、なかなか示談交渉が進まなくなってしまうのですね。
そこで本記事では、できるだけ高額な将来介護費受け取るために大切な知識、手続きなどについて、5つの裁判例を紹介しながら解説していきます。
交通事故の被害者の将来介護費とは?
損害賠償項目の介護費は2種類ある
交通事故の損害賠償金の項目の1つである介護費には、次の2つがあります。
付添介護費(入院中)
入院付添費とも呼ばれるもので、交通事故の被害にあって入院し、付添介護が必要な場合、その費用として被害者の方が請求できるものです。
<認定される金額>
・職業付添人(看護師・介護福祉士など)の場合/実費全額
・近親者付添人の場合/1日に6,500円(目安)
・通院付添費/1日に3,300円(目安)
<認定される条件>
・医師の指示、受傷の程度、被害者の年齢などを考慮して必要と認められること。
・幼児や児童の場合、症状の程度に応じて、1~3割の範囲で増額されることがある。
なお、被害者の方が幼児・高齢者・身体障害者などで通院の際に付添が必要な場合(1人で通院できない場合)は、通院付添費が認められる場合があります。
将来介護費(症状固定後)
交通事故で負った傷害(ケガ)が原因で被害者の方に重度の後遺障害が残り、将来にわたって介護が必要になった場合に請求することができる費用です。
<認められる金額>
・職業付添人(看護師・介護福祉士など)の場合/実費全額
・近親者付添人の場合/常時介護が必要な場合は1日8,000円
(※平均寿命までの期間について中間利息を控除した金額になります)
<認められる条件>
・医師の指示、または症状の程度により介護の必要があると認められること。
・原則として、後遺障害等級が最も重い1級1号と2級1号の場合。
・症状によっては、3級以下の後遺障害等級の場合でも認められることもある。
介護を要する後遺障害の場合の等級及び限度額(別表第1)
等級 | 介護を要する後遺障害 | 保険金(共済金)額 |
---|---|---|
第一級 | 1.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
4,000 万円 |
第二級 | 1.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3,000 万円 |
<常に介護を要するもの(1級)>
・遷延性意識障害や脊髄損傷などにより四肢麻痺等の後遺症が残ったために、生活全般において介護が必要な状態。
<随時介護を要するもの(2級)>
・食事、排泄、着替えなど、日常生活の一部の動作において介護や看視、声掛けなどが必要な状態。
・高次脳機能障害のために判断力が低下したり、情緒が不安定なことで1人では外出できないような場合など。
将来介護費の算出方法
将来介護費を算出する際は、次の計算式を用います。
「基準額」
前述のように、職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日に8,000円。
この日額に、365日分を掛けたものが年間の基準額になります。
ただし、これはあくまでも目安です。
実際の看護の現場では状況によっては複数の介護者を必要とする場合などもあるため、それぞれ個々のケースによって増減することがあります。
「生存可能年数」
原則、平均余命年数を用います。
【参考資料】:「生命表」(厚生労働省)
ここで注意が必要なのは、遷延性意識障害などによって植物状態および、これに近い重度の後遺障害を負った方の生存可能年数については、感染症にかかりやすいなどの理由から通常よりも余命年数が短いとされていることです。
実際、平均余命年数未満が用いられた裁判例もあります。(札幌地裁 昭和58.2.15 交民16.1.159)
ただし、平均余命までの生存期間が用いられるケースが大半です。
加害者側の任意保険会社が短い生存可能年数を主張してきた場合は、交通事故の実務に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
「ライプニッツ係数」
将来介護費は、一生にわたって必要になる金額を現時点で受け取ることになります。
しかし、お金の価値は現在と将来では変動していくため、この差額を調整する(中間利息を控除する)必要があります。
ここで用いられるのがライプニッツ係数ですが、算出は複雑なため、あらかじめ定められている係数表を用います。
【参考情報】
「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省)
将来介護費の定期金賠償
定期金賠償とは、逸失利益や将来介護費を一括して受け取るのではなく、将来にわたって毎月定額で受け取るというものです。
2020年7月に、最高裁から損害賠償項目の中の逸失利益について、定期金賠償を認める判決が出されています。
もっとも、定期金賠償にはメリットとデメリットがあります。
詳しいことは、弁護士に相談してみるといいでしょう。
弁護士に相談⇒裁判という選択も検討する
弁護士に相談すると問題が解決する
示談交渉を続けたものの、保険会社は被害者の方の主張を受け入れず、平行線……。
いつまでも解決しない、損害賠償金を受け取ることもできない……。
交通事故の示談交渉では、そうしたことが起きることが、よくあります。
なぜかというと、保険会社は利益追求のために運営されているので、支出となる被害者の方への示談金は、できるだけ低く抑えたいからです。
では、そうした場合はどうすればいいのかというと……一度、弁護士に相談してみてください。
たとえば、みらい総合法律事務所では随時、無料相談を行なっています。
弁護士に、今の胸の内を、困っている問題を話してください。
交通事故の実務に強い弁護士なら、最適な解決方法を提案できます。
そこで納得がいったなら、正式に依頼をする、という流れで問題ありません。
弁護士に相談・依頼すると次のようなメリットを実感できます。
2.等級が間違っていれば、異議申立を依頼できる。
3.本当に正しい後遺障害等級が得られる。
4.保険会社との示談交渉を代理してもらえる。
5.難しいお金の交渉から解放される
6.結果的に慰謝料や将来介護費などが増額する。
裁判をするとメリットが大きいという事実
交通事故の示談交渉が決裂した場合は、弁護士に依頼して提訴します。
そして、裁判で最終決着を図ることになります。
相談者の中には、「裁判まではしたくない」「費用がかかるのは嫌だ」という方がいらっしゃいますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
たとえ弁護士報酬を支払ったとしても、裁判をすることで被害者の方は多くのメリットを受け取ることができます。
なぜなら、最終的な損害賠償金が2倍、3倍になることがよくあるからです。
中には、10倍以上になることもあります。
しかも、裁判で最終的に判決までいった場合には、「弁護士費用相当額」と「遅延損害金」というものが加算されて、さらに損害賠償金が増額します。
ですから、簡単に裁判を嫌がらずに、一度検討してみることをおすすめしているのです。
5つの裁判例から見る高額な将来介護費が認定される理由
提訴して裁判を行なったことで、通常よりも高額な将来介護費が認められた裁判例をご紹介します。
実際の裁判の内容が実感できると思いますので、参考になさってください。
判例①:20歳男性に約1億5,900万円の将来介護費が認定された事案
名古屋地裁 平成23年2月18日判決
事件番号 平成21年(ワ)第76号 損害賠償請求事件(控訴中)
<出典> 自保ジャーナル・第1851号
【事故の概要】
2007(平成19)年4月13日、愛知県豊田市内の大学内駐車場で、20歳の男性(大学生)が被告運転の乗用車のボンネットに伏臥した状態で乗ったところ、被告車が発進、走行して左ハンドルを切ったところ転落した事案。
被害者は384日入院し、遷延性意識障害の後遺症が残り、後遺障害等級1級1号が認定され、自賠責4,000万円等の既払金を控除して、3億7,405万2,274円、母親は550万円を求めて訴えを提起した。
【判決の内容】
・原告側の過失が大きいと強調すればするほど、全く同様に、被告の過失が大きいと強調しなければならないという関係にある」等から「結果の予見可能性が十分にある状況で、道路交通法違反に当たる行為でそのような挑発行為をしたということから、 過失相殺をすべき過失があることは否定できないが、被告の過失の重大性との対比からすれば、過失割合を、原告2割、被告8割と評価するのが相当である」と認定した。
・「家族が在宅での介護を希望し、実際に在宅で介護をしており」、「経管栄養が継続されている」等から、「母親の休業日(土曜、日曜、祝日、年間125日)のうち60日間は、母親が就業と介護以外に休息をとるための時間(レスパイト)のため、日中の職業介護人を依頼する必要がある。
したがって、原告(被害者の母)が67歳になるまでの21年間については、1年のうち300日間については日中の職業介護と夜間の近親者介護が、残りの65日間については全日の近親者介護が行われるものとして介護料を算定するのが相当である」と認定した。
・「介護費用の単価としては、原告が主張するとおり、日中の職業介護の費用を日額2万円、夜間の近親者(主として母親)による介護の費用を日額5,000円、全日の近親者による介護の費用を日額1万円と認めるのが相当である」として、母親67歳まで年額815万円、以降原告余命分日額2万5,000円、年額912万5,000円の割合で将来の介護料を認定した。
・将来介護費1億5,900万円余等のほか、近親者慰謝料、住宅改造費、車両改造費、弁護士費用、遅延損害金等を加えた過失相殺前の総認定額を3億9,510万円余と認めた。
・原告(母)の損害額は、近親者慰謝料として500万円を認めるのが相当であり、2割の過失相殺をして400万円を賠償額とする。
そして、この認容額や本件訴訟の経緯等からすれば、弁護士費用分の損害として40万円を認めるのが相当であるとして、440万円を認めた。
判例②:7歳男子に約1億6,390万円の将来介護費が認定された事案
東京地裁立川支部 平成26年8月27日判決(確定)
事件番号 平成24年(ワ)第2250号 損害賠償請求(交通)事件
<出典> 自保ジャーナル・第1947号
【事故の概要】
2010(平成22)年7月20日、長野県須坂市内の住宅街30km/h制限道路交差点で、7歳の男子がキックスケーターに乗って交差点に進入した際、被告運転の60km/h走行の乗用車に衝突され、脊髄損傷等の傷害を負った交通事故。
被害者は、約1年9か月入通院して四肢麻痺、呼吸麻痺、膀胱直腸障害等の後遺症のため、1級1号の後遺障害を残した。
両親(原告)は、既払金5,232万0,294円を控除し3億9,826万4,504円、両親各550万円を求めて訴えを提起した。
【判決の内容】
・1級1号後遺障害を残す7歳男子の日中の職業介護料を日額2万円、夜間の近親者介護料を日額5,000円、全日の近親者介護料を日額1万円、67歳降を日額2万5,000円として、1億6,390万8,290円と認定した。
・症状固定から原告母が67歳になるまでの23年間につき、「母が就業する平日(月ないし金曜日、年間240日間)の夜間は同人が近親者介護をするが、日中は職業介護人を依頼する必要がある。また、年間240日間は就業する予定であること、介護の負担の重さ、その他家事の負担等の事情を総合考慮すれば、母の休業日(土及び日曜日並びに祝日、年間125日)のうち60日間は、同人が就業と介護以外に休息をとるための時間(レスパイト)を確保するため、日中は職業介護人を依頼する必要がある。
したがって、この23年間については、1年のうち300日間については日中の職業人介護と夜間の近親者介護が、その余の65日間については全日の近親者介護が行われるものとして介護料を算定するのが相当である」として、「認定事実のとおりの原告に必要とされる介護の内容によれば、同人の居住地域で受けられる介護サービスの 標準料金がスタッフ1名につき1時間当たり2,625円であることが認められること、介護保険制度等を含む各種公的サービスの存在等諸般の事情を総合考慮すれば、 介護料の単価としては、控え目に見ても、日中の職業介護料を日額2万円、夜間の近親者介護料を日額5,000円、全日の近親者介護料を日額1万円と認めるのが相当である」と認定した。
・原告母の67歳以降の介護料につき、「母が67歳になれば、肉体的負担の大きい原告の介護も極めて困難となるから、年間365日職業人介護の必要性が認められる。そして、その費用は、認定事実のとおりの原告に必要とされる介護の内容に照らし、控え目に見ても、日額2万5,000円を認めるのが相当である」と認定した。
・「被告と原告の過失の内容に照らすと、本件事故についての過失割合は、原告ら側が5分、被告側が9割5分であるとするのが相当である」として、キックスケートで交差点に進入した7歳男子原告に5%の過失を適用した。
・その他、入院付添看護料は日額を8,000円として297万6,000円、住宅改修費は2,147万2,500円などを認めた。
・傷害慰謝料は420万円、後遺障害慰謝料は3,600万円、近親者固有の慰謝料は過失割合を考慮して各380万円を認めた。
判例③:12歳男子に約7,388万円の将来介護費が認定された事案
最高裁 平成20年10月7日判決
事件番号 平成20年(受)第12号
(2審) 大阪高裁 平成19年9月20日判決
事件番号 平成19年(ネ)第942号 損害賠償、求償金請求控訴事件
(1審) 神戸地裁姫路支部 平成19年2月21日判決
事件番号 平成16年(ワ)第381号 損害賠償請求事件
平成16年(ワ)第591号 求償金請求事件
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1762号
【事故の概要】
2002(平成14)年7月7日、12歳男子中学生が兵庫県下の片側2車線50km/h制限交差点横断歩道を自転車で横断中、加害者(被告)運転の普通貨物車に衝突され、脳挫傷等負い、意識障害が継続。272日入院、53日自宅療養後、高次脳機能障害等の後遺症を残し、後遺障害等級2級3号が認定。2億2,160万円を求めて訴えを提起した。
【判決の内容】
「1審」
・1審裁判所は、入院中の意識障害も改善し、中学復学の12歳男子の入院付添費を日額6,500円、自宅療養中同1万円、復学したが学内で迷子となる等から、中学卒業まで同1万円、養護学校入学後は同6,000円、卒業後、母67歳までは障害者用住宅に居住することも考慮して同1万円、以降余命分を職業介護人費同1万5,000円で介護料を認めた。
・事故後、障害者対応住宅を新築したことは、「住居を新築して転居する必要があった」と、事故との因果関係を認め、家族の便益に資することを考慮、被告の負担を「3割に相当する」とし、住宅改造費660万円余を認定、耐用年数22年として将来の住宅改造費を300万円余認めた。
・過失割合は、20km/h速度超過の被告車に対し、被害者は赤信号横断であるが12歳という年齢等から、5対5と認定した。
「2審」
・双方控訴の2審は、認容額を変更して判決した。
・被害者が入院中の付添看護費を日額6,500円、退院後症状固定日までの自宅療養介護費は1審同様日額1万円とし、症状固定後から中学卒業まで日額1万円、養護学校入学後、母親67歳まで同6,000円としていた1審認定額を通算日額5,000円と変更し、母67歳以降の余命分を1審同様日額1万5,000円として介護料を認定した。
・1審同様、木造障害者住宅を事故後建築、転居した費用を認容、将来の住宅改造費も認めた。 その上で、1審同様の5割の過失相殺を適用してから、受領済みの人身傷害保険金を控除して損害額を認容した。
「最高裁」
原告が上告した最高裁は、原審判断が是認できないと高裁に差し戻した。被害者の父が保険料を負担して契約する人身傷害保険金の受領により、被告の「損害賠償債務の履行と同視することはできない」とし、さらに同保険には、保険会社は加害者に求償権行使する旨の規定を有しており、これらを「審理判断していない」ことから、原告敗訴部分を原審に差し戻した。
「最終的に認定された金額」
・将来介護費:7,388万6,950円
・住宅改造費:660万5,025円
・将来の住宅改造費:302万9,725円
・装具等費用:169万3,046円
・逸失利益:7,907万3,619円
・入通院慰謝料:350万円
・後遺障害慰謝料:2,500万円 など
損害額合計(弁護士費用を除く)
9,892万7,229円 (1億9,785万4,458円に、5割の過失相殺)
判例④:23歳男性に約1億9,500万円の将来介護費が認定された事案
大阪地裁 平成19年4月10日判決(控訴中)
事件番号 平成17年(ワ)第2633号 損害賠償請求事件
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1688号
【事故の概要】
2002(平成14)年12月11日、23歳の男性(原告)が大阪府門真市内の渋滞道路交差点左端を原付自転車で直進中、譲られて右折してきた被告運転の乗用車に衝突された交通事故。
頸髄損傷等で233日入院し、呼吸筋麻痺等により摘便、排尿処理、2、3時間毎の体位変換等の後遺障害を残し、後遺障害等級1級1号が認定。
既払金5,723万3,065円を控除し、3億9,941万1,223円、妻440万円、母220万円を求めて訴えを提起した。
【判決の内容】
・1級1号後遺障害を残した原告が体重約90kgであり、 現在1週56時間の職業介護人を依頼していながら、妻は介護のため「自分の時間がなく、肉体的にも精神的にも相当厳しい」ことから、妻60歳までは1日8,000円と「職業介護人1.5名による介護が最低限必要である」として2万1,000円、 計1日2万9,000円と認め、妻60歳以降、原告の余命分は「職業介護人2名による」2万8,000円で介護料を認定した。
・原告太郎にも、渋滞車両に進路を譲られた右折車が進行してくることを予測して、それとの衝突を回避できるように進行しつつ、そのような車両との衝突を回避すべきであったところ、それを怠った過失等があることが認められ、30%の過失相殺を行うのが相当であると認定した。
・最終的に、将来介護費は1億9,503万8,115円が認定された。
判例⑤:58歳女性に約1億9,781万円の将来介護費が認定された事案
鹿児島地裁 平成28年12月6日判決(控訴後和解)
事件番号 平成27年(ワ)第368号 損害賠償請求事件
<出典> 自保ジャーナル・第2001号
【事故の概要】
2010(平成14)年11月9日、58歳の女性(専門学校教諭)の原告が鹿児島市内の路上を歩行中、後方から進行してきた被告運転の普通乗用車に衝突された交通事故。
脳挫傷、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い、795日間入院、内599日で症状固定し、高次脳機能障害、四肢の運動失調、膀胱直腸障害等の後遺症が残り、後遺障害等級は1級1号が認定された。
原告女性は、既払金9,220万1,892円を控除し3億9,593万7,574円を求め、夫は550万円、2人の子は各330万円を求めて訴えを提起した。
【判決の内容】
・入院中の付添看護費について、「事故日から223日間は、 毎日、夫らが協力して付添看護を行っていた事実が認められる」他、「それ以降の377日のうち、319日は家政婦による付添看護が行われたこと、その余の58日は原告夫らが付添看護を行っていた」ことから、「上 記223日の付添看護費について、夫らがこれに要した負担及び時間等を考慮すると、 付添看護費の金額は、日額8,000円とするのが相当」とし、「家政婦に付添看護を依頼した後の期間のうち上記58日は、原告夫らの付添看護の状況は上記223日と同様であると認められるから、付添看護費の金額も日額8,000円と認める。他方、家政婦による付添看護が行われた上記319日も、原告夫らが付添看護を行っていたところ、その時間等に照らすと、付添看護費の金額は日額3,000円 とするのが相当」として、付添看護費を認定した。
・将来介護費について、「原告は、症状固定日を経過した以降も、195日間は入院を続けていた。この間の介護費用につき、家政婦に依頼して実際に153万8,523円の支出を要したことの他、原告夫らも付添介護をしていたと認められるところ、家族による介護費用は日額3,000円とするのが相当であるから、この間の介護費用として、計212万3,523円を認める」とし、195日間以降の将来介護費については、近親者介護費用を、「原告に対する介護の負担は極めて大きいものがあるが、介護サービスを利用することでその大幅な軽減が図られることを考慮すると、その日額を3,000円とする」と認めた。
職業介護人の介護費用は、「原告の症状固定時の平均余命28.33年から、年額1,234万2,072円を基礎に平均余命の24年間認め、合計で1億 9,781万3,349円の将来介護費を認定した。
・後遺障害逸失利益について、原告が勤務していた専門学校の退職時期は満65歳に達した日と定められていたことから、症状固定日から定年までの5年間は実収入を基礎収入に算定し、 定年(65歳)以降については、賃金センサス女性同学歴同年齢平均を基礎収入に平均余命の半分の74歳までの9年間100%の労働能力喪失で認めた。
・慰謝料について、入通院慰謝料400万円、後遺障害慰謝料2,800万円、近親者慰謝料については、夫400万円、2人の子各200万円を認定した。
・住宅改造費について、「原告が退院して自宅で生活をするに際し、ホームエレベー ターを設置し、自宅内の段差を解消し、浴室等を車椅子に対応した広さとするなどの住宅の改造が必要であったことが認められる。また、その改造プランは理学療法士、作業療法士及びソーシャルワーカーの助言等に基づき作成され、合理的な内容であると認められ、原告以外の家族の利便性が向上したとの事実は認められない」として、997万5,000円を認定した。
将来介護費は立証の仕方によって金額が大きく変わってくる
☑前述のように、将来介護費は1日あたりの金額の相場がありますが、だからといってトータルでの全体の金額が決まっているわけではありません。
☑判例からもわかるように、具体的な看護状況によっては、複数人の介護者が必要であるとしたケースもありますし、必要な期間などが短く見積もられてしまうケースもあります。
☑高額な将来介護費を受け取るには、介護の実態を詳細に立証することが重要であり、そのための資料収集が大切になります。
☑そして、確かな立証ができる、交通事故の重度後遺障害に精通した弁護士に依頼することが、高額な将来介護費用を受け取るために、もっとも確実で早く、安心な方法です。
みらい総合法律事務所では、交通事故の将来介護費用に関する相談を随時、受け付けています(相談料はかかりません、無料です)。
将来介護費などで示談交渉が進まない場合は、一度ご相談下さい。
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代表社員 弁護士 谷原誠