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交通事故の慰謝料請求額。ヘルニアの後遺障害等級と認定の流れ

最終更新日 2024年 07月11日

交通事故の慰謝料請求額。ヘルニアの後遺障害等級と認定の流れ
ヘルニアは、体内の臓器が本来あるべき位置から飛び出すことをいいます。

交通事故で頚椎などが過伸展・過屈曲することにより、椎間板ヘルニアを発症することがあります。

交通事故で椎間板ヘルニアの後遺症が残った場合には、神経症状の後遺症が残り、自賠責後遺障害等級12級13号、14級9号が認定される可能性があります

後遺障害を負ったときは、症状に応じた慰謝料を請求することができますが、交通事故との因果関係を説明できないと後遺障害に認定されず、慰謝料が受け取れない可能性があるので注意してください。

本記事では、ヘルニアの後遺障害等級と認定を受けるための手続き、そして慰謝料請求する際のポイントについて解説します。

交通事故で発症したヘルニアの症状と治療法

椎間板ヘルニアなどの言葉は知られていますが、発症するケースや症状についてはあまり認知されていませんので、最初にヘルニアの症状と治療法をご紹介します。

ヘルニアの症状

ヘルニアとは、体内にある臓器が本来あるべき位置から飛び出すことをいいます。

椎間板ヘルニアは、椎間板の中にある髄核という組織が本来あるべき場所から飛び出てしまった際に発症し、椎間板から飛び出した髄核が周辺にある神経を刺激することで、強い痛みや麻痺症状が表れます

適切な処置を施すことで症状は収まりますが、後遺障害として残る場合や、手術を要することもあるため、交通事故でヘルニアを発症した際は症状に応じた対処が必要です。

交通事故で発生するヘルニアの種類

交通事故で発生する主なヘルニアとしては、「頸椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア」と「腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア」の2つです。

頸椎(けいつい)は、7個の骨と間にある6個の頸椎版で構成されており、一般的に首の骨のことをいいます。

頸椎版が飛び出すことで頸椎椎間板ヘルニアが発症し、症状としては両上肢や両下肢に痛みや痺れ、知覚障害などがあります。

重度の頸椎椎間板ヘルニアになると、歩行障害などの症状が表れますので注意しなければなりません。

腰椎椎間板ヘルニアは、腰にある椎間板で生じたヘルニアです。

骨の間にある椎間板が神経や脊髄を圧迫した場合に発症し、腰痛や痺れ、下半身が上手く動かせなくなる運動麻痺などの症状が表れます。

重度の腰椎椎間板ヘルニアは、知覚障害や歩行障害、排尿・排便困難になる膀胱直腸障害などの症状が表れますので、後遺障害として残ってしまうと日常生活への影響も大きいです。

交通事故の後に坐骨神経痛があった場合、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などを発症している可能性もありますが、必要な治療・診断を受けないと症状が改善しないだけでなく、慰謝料が受け取れない事態になりますので気を付けてください。

ヘルニアの治療方法

ヘルニアの治療方法には保存療法と手術療法があり、基本的には保存療法で治療することになります。

保存療法は、薬物療法や理学療法などを用いてヘルニアの症状を改善させる方法です。

交通事故でヘルニアになった場合、症状として激しい痛みを伴うことがあるため、注射により痛みを和らげるために麻酔で神経をブロックします。

痛みが落ち着いた後はコルセットで固定し、筋肉の強化や身体を牽引して治療を行います。

手術療法は、飛び出した髄核を取り除くなどして、症状を改善させる方法です。

保存療法で痛みが取れない場合や、麻痺などの症状が残っている際に用いられ、交通事故で重度のヘルニアを発症した際は、当初から手術療法を行うこともあります。

交通事故でヘルニアになったときの後遺障害等級

後遺障害は、交通事故で怪我や病気の治療後に残った機能障害等をいい、後遺障害の重さに応じて等級が定められています

交通事故の後遺障害とは

後遺障害は、自動車事故による傷害が治った際、身体に残された精神的・肉体的な毀損状態をいいます。

後遺症は怪我や病気の治療後に残った機能障害や神経症状を指すのに対し、後遺障害は傷害と後遺症との間に相当因果関係が認められるだけでなく、存在が医学的に認められた症状に限られます。

後遺障害の種類・等級は、自動車損害賠償保障法施行令別表第一または第二で定められていて、後遺障害の認定を受けるためには申請手続きが必要です。

交通事故で後遺症が出たとしても、定めてある等級に当てはまらないものは後遺障害に該当しませんし、交通事故で後遺症が出たとしても、交通事故と後遺症の因果関係を証明できないと後遺障害とは認められません。

交通事故に伴う慰謝料を請求する場合には、後遺障害の有無が大きく関係しますので、後遺障害を負ったときは、事故と後遺症の因果関係があることを示す必要があります。

椎間板ヘルニアが後遺障害として認定されるケース

交通事故が原因で椎間板ヘルニアを発症した場合、

・後遺障害等級の12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」

または

・14級9号の「局部に神経症状を残すもの」

に該当する可能性があります。

椎間板ヘルニアが12級13号に該当する後遺障害と認定されるためには、障害の存在を医学的に証明しなければなりません

医学的な証明とは、MRI検査や医師の視診などの他覚的所見により、神経症状の残存が確認できる状態をいいます。

自覚症状だけでは12級13号に該当する後遺障害とは認められないので、認定を受けるためには医師による証明が必須です。

14級9号の後遺障害は、医学的な証明まではいかなくても、障害の存在が医学的に説明可能なものであることを条件とします。

他覚的所見は必須ではありませんが、治療状況や症状の経過を総合的に審査しますので、医師の診断は不可欠です。

なお、等級は補償される費用に左右され、等級の数字が小さいほど補償額が大きくなることから、12級13号に該当する椎間板ヘルニアの方が慰謝料として請求できる額は増えます。

ヘルニアで後遺障害等級認定を受ける方法・流れ

後遺障害の認定を受けるためには申請手続きをしなければならず、ヘルニアによる後遺障害申請の際は書類等を提出する必要があります。

後遺障害の申請方法

後遺障害等級申請は、次の流れに沿って行います。

<後遺障害の申請手順>

    ・医師に症状固定の診断を受ける
  • ・医師に自賠責後遺障害診断書の作成を依頼する
  • ・加害者が加入する保険会社に必要書類を提出し、後遺障害等級認定申請を行う
  • ・損害保険料率算出機構で審査
  • ・審査内容に応じた後遺障害の等級認定を受ける

症状固定とは、交通事故による怪我が治療を受け続けても改善する見込みがない状態をいいます。

症状固定に該当するかは医師が判断しますが、症状固定とみなされる時期についても医師が見極めることになるため、病院への通院は治療を受けるだけでなく、症状の経過観察のためにも必要です。

後遺障害診断書は、治療後に残っている後遺症の内容や程度を記載する診断書をいい、医師が作成することになります。

医師が作成した後遺障害診断書を受け取りましたら、加害者が加入している任意保険会社に提出し、後遺障害等級認定申請を行うか、自ら加害者が加入している自賠責保険会社い「被害者請求」を行います。


 

認定審査は損害保険料率算出機構が行い、症状に応じた後遺障害の等級が認定されますが、審査の結果に納得できない場合は異議申立をすることも可能です。

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医師には事故当初から自覚症状を正確に伝えること

後遺障害と認定されるためには、交通事故と後遺症の因果関係があることを証明する必要があるため、医師の診察を受ける当初から自覚症状を正確に伝えなければなりません

加害者を意識したり、事故を大事にしないために交通事故で生じた痛みを申告しない方もいますが、症状を伝えるのが後になってしまうと交通事故との因果関係が認められない可能性が出てきます。

そのため病院で診察を受ける際は、僅かな身体的な変化も医師に説明するのはもちろんのこと、後から症状が表れた際はすぐに病院を受診し、症状を医師に伝えることが大切です。

後遺障害診断書の作成を依頼する際の注意点

後遺障害の申請手続きをする際には後遺障害診断書が必須ですが、作成された診断書の内容が不十分だった場合、後遺障害認定を受けられないケースや、低い等級の認定を受けてしまう可能性があります。

ヘルニアの後遺障害等級は12級13号と14級9号がありますが、どちらに該当するかによって慰謝料として受け取れる金額も変わってきます。

したがって、交通事故の影響で後遺障害が出たことを証明するためにも、交通事故にあった際は必ず病院で診察・治療を受けるだけでなく、通院による経過観察も行ってください

交通事故でヘルニアになった場合の慰謝料の相場

後遺障害等級が認定された場合、等級に応じて慰謝料を請求することができます。

慰謝料にも種類がありますので、ヘルニアに対する慰謝料の相場をご紹介します。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故で被害者が後遺障害等級の認定を受けた際に請求できる慰謝料をいい、

  • ・自賠責保険基準
  • ・任意保険基準
  • ・弁護士基準

があります。

自賠責保険基準は、自賠責保険から支払われる慰謝料の額を計算するために用いられる基準です。

自賠責保険基準の額は自動車損害賠償保障法施行令に定められており、他の基準に比べると慰謝料の額は低い水準に留まります。

任意保険基準は、各保険会社が設定している基準額です。

加害者が加入している保険会社は、任意保険基準を基に示談金を提示してくることもありますが、あくまでも目安となる金額ですので、保険会社から提示された金額をそのまま受け入れる必要はありません

弁護士基準は、交通事故の慰謝料を計算する際に用いる基準をいい、裁判基準と呼ばれることもあります。

過去の裁判例などから慰謝料の額を算出するため、他の基準よりも多くの慰謝料を得ることができる基準です。

<ヘルニアに対する慰謝料相場>

後遺障害等級 自賠責保険基準 弁護士基準
第12級 94万円 290万円
第14級 32万円 110万円

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益は、交通事故による後遺障害が残ったことで逸した利益を補償することをいいます。

<後遺障害逸失利益の計算式>
基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数 = 後遺障害逸失利益

基礎収入は、交通事故が発生した前年の収入を原則とします。

労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて定められており、ヘルニアによる後遺障害の労働能力喪失率は12級が14%、14級は5%です。

ライプニッツ係数は、逸失利益を預金した際に生じる利息を前もって差し引くための係数をいい、後遺障害が残った年齢から67歳までの労働能力喪失期間ごとに定められています。

裁判例の傾向では、12級で10年程度、14級で5年程度のライプニッツ係数を用いています。

後遺障害の認定を受けるためのポイント

後遺障害の認定を受けるためには、次のポイントを押さえる必要があります。

<後遺障害認定を受けるための条件>

    ・交通事故で受けた精神的・肉体的な傷害であること
  • ・傷害が将来においても回復の見込めない状態であること
  • ・事故と症状固定時期に残存する症状との間に因果関係があること
  • ・医学的に症状を証明できること
  • ・労働能力が失われていること
  • ・後遺症が自動車損害賠償保障法施行令別表第一・第二に定められた項目に該当すること

交通事故によって傷害を負ったとしても、回復可能な怪我であれば後遺障害とは認められません

後遺障害として認定されるには、被害者の主張だけでなく、医師の診断書や後遺障害診断書が必要であり、事故直後の治療内容や通院回数なども関係します。

後遺症を負った場合でも、通院を途中で止めてしまえば医師が後遺障害と判断することはできず、交通事故との因果関係が否認される可能性もありますので、認定を受ける際は事前に専門家へ相談することも検討してください。

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交通事故で発症したヘルニアの示談交渉が難しい理由

交通事故でヘルニアを発症した際の慰謝料請求は、次の2つの理由から難しいとされています。

1つ目は、ヘルニアを交通事故で発症したことを証明しなければならない点です。
ヘルニアは交通事故以外でも発症することもあるため、交通事故との因果関係を説明しなければなりません。

交通事故前にヘルニアになったことがある方は、交通事故が原因でヘルニアを発症したとみなされないことも想定されます。

2つ目は、ヘルニアによる後遺障害等級が2種類ある点です。

ヘルニアが後遺障害として認められたとしても、慰謝料として請求できる額は等級によって異なるため、低い等級の認定を受けてしまうと請求できる慰謝料の額が減ってしまいます。

交通事故で怪我を負った被害者が認定手続きや示談交渉を行うのは、身体的・精神的負担が大きいため、手続きを代行することも選択肢に入れてください。

交通事故に関するトラブルは弁護士に相談すること

後遺障害の認定を受けるためには必要書類を揃えなければなりませんし、初動を誤ってしまうと認定が受けられない可能性があります。

加害者の保険会社は、慰謝料の額を抑えるために色々な角度から指摘を入れますし、相手の言葉を鵜呑みにしてしまうと、損害賠償金や慰謝料の額が下がります。

適正額の損害賠償金・慰謝料を受け取れないと、事故後の生活に支障が出てしまいますので、示談交渉など交通事故のトラブルは専門家である弁護士に任せてください。


 
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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠
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