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交通事故でストレートネックとなった場合の後遺障害等級と賠償金の計算

最終更新日 2024年 10月30日

交通事故でストレートネックとなった場合の後遺障害等級と賠償金の計算

通称「スマホ首」とも呼ばれるストレートネックは、スマホが原因でなるイメージがあるかもしれませんが、交通事故でストレートネックを発症するケースもあります

ストレートネック等の後遺障害を負った場合、加害者に対して症状に応じた慰謝料を請求できますが、ストレートネックが後遺障害であることを示さないと慰謝料を受け取れない可能性があるので気をつけてください。

本記事では、今回はストレートネックの症状と後遺障害等級、慰謝料を請求する際の逸失利益について解説します。

ストレートネックと交通事故の
因果関係

ストレートネックは頸椎の湾曲が消失し、首が真っ直ぐになる症状をいい、日常生活では前屈み姿勢が原因の一つとされています。

症状としては頭痛や肩こりだけでなく、痺れが生じることもあるため、ストレートネックになった際は治療を要します。

仕事で長時間デスクワークをする場合や、スマホを操作するために長時間下を向いたままの状態を維持すると身体が猫背になるため、ストレートネックになりやすいです。

また、背骨周辺の筋緊張によって、首が真っすぐに固まってしまうこともあるため、日頃からストレッチ等で対策を施すことが大切です。

交通事故においては、首に強い衝撃を受けることでストレートネックを発症することがあり、ストレートネックを発症しているかは、レントゲンで確認することができます。

ストレートネックの治療方法

ストレートネックを発症した場合、基本的には保存療法で治療することになります。

保存療法は、手術以外の手段で治療する方法の総称をいい、理学療法や薬物療養、運動療法も保存療法の一つです。

交通事故でストレートネックを発症したときは、頸椎カラー(首コルセット)で首を正しい位置で保持したり、首周辺部の緊張した筋肉をマッサージやストレッチでほぐし、血流を改善させるなどして首の湾曲を戻すことを目指します。

日常生活で発症したストレートネックは、運動療法を用いて改善を目指すことが多いですが、交通事故によるストレートネックは強い痛みが出ていることもあるため、痛みが生じているときは和らぐまで薬物療法も用います。

また、交通事故で首に強い衝撃を受けた場合、ストレートネック以外の怪我を負っている可能性がありますので、事故に遭いましたら必ず病院を受診し、医師の診断を受けてください

ストレートネックとむち打ち・
変形性頚椎症との関係性

交通事故で想定される首の負傷は、ストレートネック以外に、むち打ち変形性頚椎症などが挙げられます。

むち打ちとは

むち打ち(頸椎捻挫)は、瞬間的に首に強い力が加わることで首周りの骨や筋肉、神経などに損傷が起る症状をいいます。

首の痛みや首の拘縮(こうしゅく)、頭痛やめまいなどが症状として表れ、交通事故直後に痛みが無かったとしても、数時間後や数日後に遅れてむち打ちの症状が出てくることもあるので注意が必要です。

自動車による交通事故は首に強い負荷がかかりやすいため、むち打ちを発症するケースが多く、交通事故以外では高所からの転落でむち打ちを発症することがあります。

むち打ちは交通事故で負いやすい怪我である反面、出血や骨折と違い見た目では判断しにくいことから、首に違和感がある場合にはむち打ちになっていることも疑ってください

変形性頚椎症とは

変形性頚椎症(へんけいせいけいついしょう)は、頸椎の変形により脊髄や神経を圧迫する病気で、脊髄が圧迫された場合は手足のしびれや歩行障害、神経の圧迫では肩や腕、手指に痺れなどの症状が表れます。

変形性頚椎症になる主な要因は加齢ですが、交通事故等で外傷を負ったことで発症することもあります。

しかし、交通事故の被害者が高齢である場合、加齢と交通事故のどちらが原因で変形性頚椎症になったのか判断が難しいケースも考えられますので、発症した原因を特定するためにも、交通事故前と事故後で身体がどのように変化したのかを把握することが大切です。

ストレートネックとの違い

ストレートネックとむち打ち・変形性頚椎症は、いずれも交通事故で発症することがあり、基本的には保存療法で治療を施します。

しかし、自覚症状だけで怪我の状態を確認することはできませんし、身体の状態によっては手術で症状を改善しなければならないケースもあります。

後遺障害の認定を受ける場合には、後遺障害を負ったことを証明する必要があることから、交通事故前の病気や怪我の有無も関係してくる点には注意が必要です。

事故後しばらくしてから症状が表れることもありますし、対応が遅れると症状が悪化するだけでなく、慰謝料の額にも影響しますので、交通事故にあった際は病院を受診して症状に応じた治療を受けてください。

ストレートネックが後遺障害と
認定されるケース

交通事故でストレートネックになった場合、慰謝料を請求することができますが、後遺障害としてストレートネックが残ったことを認定してもらわなければなりません。

交通事故の「後遺症」と
「後遺障害」の違い

「後遺症」と「後遺障害」は似ている言葉ですが、意味は違います。

交通事故が発生した際、後遺症怪我の治療後も機能障害や神経症状が残ることを指すのに対し、後遺障害治療後も精神的または肉体的な毀損がある状態だけでなく、事故と後遺症に因果関係が認められたものだけに限定されます

交通事故で後遺症を負ったとしても、その怪我が交通事故によるものと認められなければ後遺障害とはなりませんので、慰謝料を請求するためには後遺障害の認定を受けることが不可欠です。

ストレートネックで認定される後遺障害等級

交通事故でストレートネックとなった場合、後遺障害等級の12級13号または14級9号の認定対象になります。

慰謝料として請求できる額は認定される等級によって異なり、等級の数字が小さいほど補償額が大きくなります。

ストレートネックが後遺障害として認定されたとしても、認定等級によって請求できる額が変わるため、病状に応じた等級を適正に認めてもらわなければなりません。

ストレートネックが12級13号に該当する後遺障害と認定されるためには、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、障害の存在を医学的に証明することが求められます

医学的な証明とは、MRI検査や医師の視診などの他覚的所見により、神経症状の残存が証明できる状態をいい、自覚症状だけでは12級13号として認定されません。


 
14級9号の後遺障害は、「局部に神経症状を残すもの」として、障害の存在が医学的に説明できることが条件です。

12級13号とは違い、他覚的所見は必須事項ではありませんが、障害が残っている事を証明するために、医師に治療状況や症状の経過の診断を受けてください。

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交通事故でストレートネックに
なった場合の慰謝料の相場

交通事故でストレートネックの後遺障害を負った場合、症状だけでなく被害者の収入状況等も慰謝料の額に影響します。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故で後遺障害等級の認定を受けた際に請求できる慰謝料をいいます。

慰謝料を請求する際の基準には、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準があり、どの基準を用いて請求するかによって受け取れる額が変わります。

自賠責保険基準は、自賠責保険から支払われる慰謝料の額を計算するために用いられる基準です。

任意保険基準は、各保険会社が設定している基準額をいい、加害者が自動車保険に加入している場合には、任意保険基準を基に示談金を提示してくることがあります。

弁護士基準は、裁判で交通事故の慰謝料を計算する際に用いる基準です。

別名「裁判基準」と呼ばれることもある弁護士基準は、過去の裁判例などから慰謝料の額を算出することから、自賠責保険基準や任意保険基準よりも慰謝料を多く得ることが期待できます

<ストレートネックに対する慰謝料相場>

後遺障害等級 自賠責保険基準 弁護士基準
第12級 94万円 290万円
第14級 32万円 110万円

ストレートネックに対する
逸失利益

逸失利益は、交通事故による後遺障害が残ったことで逸した利益をいい、後遺障害の認定を受けた場合には逸失利益の補償を受けることができます。

<後遺障害逸失利益の計算式>
基礎収入 × 労働能力喪失率 ×
ライプニッツ係数 = 後遺障害逸失利益

基礎収入は、原則交通事故が発生した前年の収入をいい、労働能力喪失率は後遺障害等級に応じて定められています。

たとえば、ストレートネックによる後遺障害の労働能力喪失率は12級が14%、14級は5%であることから、12級に認定された方が逸失利益として請求できる額は増えます。

ライプニッツ係数は、逸失利益を預金した際に生じる利息を前もって差し引くための係数です。

後遺障害が残った年齢から67歳までの労働能力喪失期間に応じて設定されているため、被害者の年齢も慰謝料の額に関係します。

ストレートネックに対する慰謝料を請求する際の注意点

ストレートネックはスマホが普及してから一般的に認知度が高まった症状ですが、交通事故でストレートネックを発症した場合には、慰謝料を請求できます。

しかし、慰謝料を勝ち取るためには、ストレートネックが後遺障害であることを認めてもらう必要があり、後遺障害は交通事故との因果関係がなければ認められません。

交通事故の前から首にトラブルを抱えている方は、事故との因果関係について指摘が入りやすく、交通事故でストレートネックになったことが事実だとしても、病院への受診や通院をしていないと因果関係が認められないことも考えられます。

ストレートネックが後遺障害と認められた場合においても、認定等級12級と14級では請求できる慰謝料の額に差が生じますし、14級と認定されてしまうと受け取れる慰謝料が少なくなるため、適正な等級認定を受けるためには治療や通院だけなど因果関係を証明するための対策は大切です。

交通事故に関するトラブルは
弁護士に相談

ストレートネックは放置しておくと日常生活に支障をきたす症状が出ることもありますし、重症化するリスクもあります。

事故直後は軽微な怪我と認識していても、後から症状が表れてくることも珍しくありませんので、事故に遭いましたら早めに病院で診察を受けてください。

初動が遅れると交通事故との因果関係が否認される可能性があり、加害者側が慰謝料を拒むことも想定されます。

加害者の保険会社は示談交渉のプロであり、一般人である被害者が対等に話し合うのは難しいです。

そのため、交通事故の示談交渉については、専門家である弁護士に依頼することを検討してください。

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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠
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