交通事故の示談交渉で進まない交渉をサクサク進めて解決する方法
交通事故の示談交渉がなかなか進まない、まとまらないのには次のような原因があります。
<加害者側に問題がある場合>
- ・加害者が無保険、あるいは任意保険に未加入
- ・加害者側が示談交渉を無視している
- ・加害者側の任意保険会社の担当者の対応が遅く、悪い
<被害者側の保険会社に問題がある場合>
- ・被害者の方が加入している任意保険会社の担当者の対応が遅い、力量不足
そして最も問題なのは、次の2点です。
- 加害者側の任意保険会社が提示してくる慰謝料などの金額が適正でなく、低すぎる。
- それにも関わらず、保険会社は被害者の方の増額要求を受け入れない。
こうした問題を解消して、示談交渉を速やかに解決するには、交通事故の損害賠償実務に精通した弁護士に相談・依頼するのが最も近道になります。
目次
示談交渉が進まず解決しないと何が起きるのか?
被害者の方が加害者側の保険会社から慰謝料などの損害賠償金を受け取ることができなくなります。
これが、示談交渉がなかなか進まず、示談が成立しないと起きることです。
ケガを負って、後遺症が残ったうえに、慰謝料などを受け取ることができないなど、被害者の方にはあってはならないことですから避けなければいけません。
示談交渉は誰と、いつ、どのように、何を決めるのか?
(1)交通事故の示談とは?
交通事故の示談とは、被害者側と加害者側で勝ち負けを決めるのではなく、双方で話し合い、お互いに譲歩して次のことを決めて和解することです。
・どのような損害が生じたのか?
・その損害額はいくらになるのか?
・損害賠償金の支払いはどのような方法で行なうか?
(2)示談交渉はいつ始めるといいのか?
示談交渉を始めるにも、最適なタイミングがあります。
①物損事故
物損事故では、自動車やバイクなどの修理や買い替え費用が算出されるのに1か月ほどかかることが多いのですが、その損害額が加害者側の任意保険会社からで提示されたら、示談交渉を開始するのがいいでしょう。
ただし、注意していただきたいのは、愛車をすぐに直したいからといって急いで修理をしてしまうことです。
保険会社は交通事故によって生じたキズや故障かどうかを調査するので、その前に修理してしまうと証明が難しくなってしまう場合もあるので、あとで代車費用を加害者側に請求することも考えて対処していきましょう。
②後遺症が残らなかった人身事故
ケガを負ったものの完治して、後遺症が残らなかった場合、治療費や交通費、入通院慰謝料、休業損害などは治療が終了してから計算されます。
ですから、損害賠償金額の提示があったらすぐに示談交渉を開始しても大丈夫です。
もちろん状況によって変わってきますが、過去のデータでは治療開終了から半年(6か月)以内にほとんどが示談成立となっています。
③後遺症が残ってしまった人身事故
ケガの治療を行なっていると、ある時点で主治医から「症状固定」の診断を受けることがあります。
症状固定とは、これ以上の治療を継続しても効果が見込めないという段階のため、残念ですが被害者の方には後遺症が残ってしまうことになります。
後遺症が残ってしまった場合は、ご自身の後遺障害等級の認定を受けます。
というのは、等級が確定した時点で加害者側の保険会社は、後遺障害慰謝料をはじめとしたさまざまな損害項目の金額を算出することができるからです。
後遺障害等級は、スムーズにいけば1~2か月で認定されます。
その後、加害者側の任意保険会社から損害賠償金(示談金)の提示があるので、ここから示談交渉をスタートさせることになります。
なお、認定された後遺障害等級が低いために不満がある場合、等級自体が認定されなかった場合では「異議申立」をすることが認められています。
異議申立の場合、結果が出るには申請から、2~4か月ほどかかると考えておくといいと思います。
④死亡事故
交通事故で被害者の方が亡くなった場合、通常では四十九日が過ぎた頃に、加害者側の任意保険会社からご遺族に連絡があると思います。
ここで示談金(損害賠償金)の項目と金額の提示があるので、この時点で示談交渉を始めるのは可能ですが、ちょっと待ってください!
というのは、加害者の刑事事件の進行との兼ね合いの問題があるからなのです。
場合によっては、刑事事件の裁判が行なわれ、そこで加害者の量刑が決まるわけですが、その前に示談を成立させてしまうと、亡くなった被害者の方とご遺族に不利益が発生する可能性があります。
判決で、「示談成立により、被害者への弁償はある程度なされている」ということで、加害者の量刑が軽くなってしまうことがあるのです。
ですから、判決が出てから示談交渉を開始することを検討するのも大切だと思います。
なお、ご遺族が裁判に参加できる「被害者参加制度」というものがあるので、希望する場合は一度、弁護士に相談してみるといいでしょう。
交通事故の示談の流れを確認
交通事故が起きてから示談成立までの流れ、手順は次のようになります。
全体の大きな流れを理解して、被害者の方が損をしないように示談交渉の準備を進めましょう。
示談交渉がなかなか進まない8つの理由
(1)加害者側に理由・問題がある場合
①加害者が無保険
加害者が任意保険に加入していない、さらには自賠責保険が期限切れ(自賠責保険はすべての運転者が加入する義務のある強制保険のため)といった場合、示談交渉が滞ってしまい、なかなか進まない可能性があります。
というのは、加害者本人に請求しても、きちんと対応しない、支払い能力がないなどの理由のため被害者の方が慰謝料などの損害賠償金の支払いが受けられない事態も予想されるからです。
<自賠責保険の限度額>
交通事故の損害賠償では、通常の場合まず被害者の方は、自賠責保険から治療費や交通費、入通院慰謝料などについての支払いを受けます。
しかし、自賠責保険には上限の金額があります。
「自賠責保険の支払い金額の上限」
被害者が死亡した場合 | 3,000万円 |
---|---|
傷害による損害の場合 | 120万円 |
傷害により後遺障害が残り、介護が必要な場合 | 4,000万~3,000万円 |
その他の後遺障害の場合 | 1級から14級の後遺障害等級に応じて3,000万円~75万円 |
参考記事:国土交通省「自賠責保険(共済)の限度額と保障内容」
そのため、自賠責保険の支払い限度を超える損害が出た場合、その分は加害者側の任意保険会社から別に損害賠償金(保険金)として支払ってもらうことになります。
<政府保障事業とは?>
ところで、加害者が無保険の場合ですが、自賠責保険分については「政府保障事業」という制度があるので、政府から保障を受けることができます。
参考記事:政府保障事業について
②加害者が任意保険に加入していない場合
加害者が自賠責保険には加入しているが任意保険には加入しておらず、損害賠償できる資金を持っていない、というケースではどうでしょうか。
この場合、自賠責保険からの保険金額を超える部分については、加害者側の任意保険からの支払いを受けることができないので、被害者ご自身が任意保険の「人身傷害補償特約」や「搭乗者傷害保険」に加入しているなら、そこから保険金として受け取ることができます。
ただし、その金額、つまり約款で規定されている支払金額は、本来であれば被害者の方が受け取るべき慰謝料などの損害賠償金よりも低い基準で計算されることに注意が必要です。
<自賠責保険の仮渡金とは?>
なお、加害者が加入している自賠責保険から「仮渡金」を受け取ることもできます。
仮渡金とは、示談が成立する前に、傷害(ケガ)の程度によって、40万円・20万円・5万円、死亡事故の場合は290万円を先に受け取ることができる制度です。
被害者の方やご遺族が経済的に苦しいといった事情がある場合は利用してみるのもいいでしょう。
③加害者が示談を無視して交渉に応じない
加害者に連絡をしても無視をする、示談交渉に応じないというケースもあるでしょう。
このような場合は、加害者が加入している任意保険会社に連絡をして対応してもらう、保険会社が対応してくれない場合は保険会社の「お客様相談センター」に相談する、などの方法もありますが、そのためには交通事故が起きた段階ですぐに、保険会社の連絡先を加害者から聞いて情報を管理しておくことが大切です。
お金の出所を抑えておくことは大切ですが、法的な問題が関わってくるので一度、弁護士に相談してみるといいでしょう。
⑤加害者側の任意保険会社の担当者の対応が悪い
加害者が任意保険に加入していれば、通常は示談代行サービスがあるので、示談交渉の相手は保険会社の担当者になります。
保険会社の担当者の対応が遅い、態度が悪いといった場合は、その保険会社の「お客様相談センター」などに苦情を入れて、相談してみるのがいいでしょう。
また、「そんぽADRセンター」に相談してみてもいいと思います。
そんぽADRセンターとは、損害保険業界全体の窓口として、相談対応や苦情・紛争解決の相談を受け付けている機関です。
⑥慰謝料の示談金額で保険会社と折り合いがつかない
もっとも大きな問題として、被害者側と加害者側が主張する慰謝料などの損害賠償金(示談金)の金額がかけ離れすぎていて、和解ができない場合があげられます。
被害者の方としては、後遺症が残り、精神的にも肉体的にも損害を被っているのですから、金銭的な補償はできるだけ多く求めたいでしょう。
ところが、保険会社というのは営利法人ですから利益を出すことが最優先です。
被害者の方への示談金の支払いは支出になるので、これをできるだけ低くしようとしてきます。
このように求めるもの、利害が正反対の両者が話し合いによって和解をしようとするのですから、多くの場合で争いになり、なかなか示談が成立しないということが起きてくるわけです。
<慰謝料などの関わる3つの基準とは?>
具体的には、保険会社は自賠責基準や任意保険基準といった金額が低くなる基準で計算したものを提示してくるのですが、被害者の方としては弁護士(裁判)基準という、もっとも慰謝料などが高額になる基準で計算した金額を求めていくべきです。
被害者の方が示談交渉を弁護士に依頼した場合、弁護士は示談交渉では弁護士(裁判)基準で計算した金額を主張していきます。
そして、交渉が決裂して裁判になった際には認められる可能性が高いため、弁護士(裁判)基準と呼ばれているのです。
実際、自賠責基準と弁護士(裁判)基準で計算した慰謝料などの損害賠償金を比較してみると大きな差があります。
詳しくは次のページをご覧ください。
いかに違いが大きいのか、被害者の方は弁護士(裁判)基準での金額を主張して示談解決をしなければいけないのか、がわかると思います。
ですから、保険会社は被害者の方の味方ではない、ということは理解しておいてください。
(2)被害者が加入している保険会社に問題・理由がある場合
被害者の方が加入している任意保険に「示談代行サービス」がついていれば利用することができます。
被害者の方としては直接、加害者側の保険会社と交渉しなくていいので便利だと感じると思いますが、担当者の力量や仕事量などによっては示談交渉が遅れてしまうことがあります。
そうした場合は、お客様相談センターに問い合わせてみてもいいでしょう。
(3)依頼した弁護士の対応に問題・理由がある場合
交通事故の示談交渉は法的な問題がかかわってくるので、弁護士に相談・依頼をする場合もあると思いますが、その際にも注意するべきポイントがあります。
弁護士といっても、医師と同じように、じつはそれぞれの専門・得意分野があります。
交通事故の問題であれば、やはり交通事故の実務に精通した、交通事故に強い弁護士に依頼するべきです。
そうではない弁護士に依頼してしまうと、なかなか示談交渉が進まない、被害者の方が望んでいる結果、つまり慰謝料などの増額を勝ち取ってくれないということが起こってしまいます。
そうした場合は、セカンドオピニオンとして、別の弁護士に相談してみるのがいいでしょう。
示談の時効消滅に気をつけて!
法律の世界では、「時効」というものがあります。
時効が成立してしまう、つまり時効の期限を過ぎてしまうと、その後は損害賠償について一切の請求ができなくなってしまいます。
慰謝料などが0円になってしまうのですから、くれぐれも注意してください。
自賠責保険に対する被害者請求の時効
傷害、死亡の場合 | 事故の翌日から3年 |
---|---|
後遺障害がある場合 | 症状固定日の翌日から3年 |
加害者に対する損害賠償請求(加害者側の任意保険会社)の時効
物損事故の場合 | 「損害及び加害者を知った時」(民法724条)から3年 |
---|---|
人身事故の場合 | 「損害及び加害者を知った時」(民法724条)から5年 |
後遺障害がある場合 | 症状固定日から5年 |
※症状固定した時点で初めて後遺障害を含む損害について知ったことになるため
・損害及び加害者がわからない場合:事故日から20年
詳しい内容については、次のページをぜひ参考にしてください。
時効期間をリセットする方法などについても解説しています。
示談交渉は弁護士に相談・依頼することも検討してください!
示談交渉では、保険のプロである加害者側の任意保険会社の担当者と話し合い、ご自身にとって有利な条件を引き出していかなければいけません。
しかし、それは簡単なことではありません。
交通事故の被害に初めてあった方が、シビアな交渉経験もなく、交通事故の保険の知識や法的な知識もなく、保険のプロと互角以上に渡り合って交渉するのがどれほど難しいことか想像してみてください。
ですから、示談交渉は法律のプロである弁護士、しかも交通事故に強い弁護士に依頼してしまうという選択は被害者の方に大きなメリットをもたらします。
難しく、煩わしい示談交渉から解放される。
示談交渉をできるだけ早く解決できる
示談交渉で適切な額の損害賠償金(示談金)を受け取ることができる
裁判になった場合も弁護士が代理人として出廷してくれる
弁護士に依頼することで、主にこうしたメリットを受け取ることができます。
ただ、「弁護士費用は高いのではないか」と心配されている方もいらっしゃるでしょう。
本当にそうなのでしょうか?
それは誤解、かもしれません。
成功報酬型の弁護士なら、慰謝料が増額しなければ弁護士報酬はかかりません。
裁判を提起して判決までいくと、通常の損害賠償金の他に、「遅延損害金」と「弁護士費用相当額」というものが追加されて、被害者の方が受け取る金額がさらに増額します。
被害者が委任した弁護士についての報酬は、本来、被害者が負担すべきものです。
しかし、裁判を起こして判決までいくと、裁判所は、本来の賠償額に追加して、賠償額の約10%を認めてくれるのが実務です。
【参考判例】:弁護士費用を加害者側に負担させた最高裁判決
ご自身の保険に「弁護士費用特約」がついていれば、弁護士費用は十分まかなえます。
ぜひ次の記事をご覧になって、参考にしてください。
実際の慰謝料増額事例から示談交渉の現実を知る
みらい総合法律事務所では、これまで数多くの被害者の方、ご遺族からの相談・依頼をいただき、慰謝料などの増額を勝ち取ってきました。
そうした、さまざまな事例をぜひ知ってください。
実際の示談交渉はどのように行われるのか?
弁護士が代理人として入ると、どのくらい増額するのか。
こうしたことがわかる「解決実績」はこちらから
https://jikosos.net/results
後遺症を負った部位別、後遺障害等級別、被害者の方の年代別などから、ご自身の状況に近い事例を知ることもできます。
みらい総合法律事務所は無料相談を行なっています。ぜひご利用ください。
弁護士へのご相談の流れ
↑↑
代表社員 弁護士 谷原誠