バイクによる死亡事故の慰謝料の相場と計算方法
バイク事故の場合(すり抜けも含む)、四輪車と異なり、身体が露出しているので、多くの場合で頭部や胸部など身体上の重要な部位を損傷してしまうことになり、死亡という最悪の結果になってしまうことも少なくありません。
死亡事故の場合には、亡くなった被害者の方に代わって、ご遺族が加害者との損害賠償の問題の処理をしていくことになります。
亡くなった方のためにも、せめて適正な損害賠償金を支払ってもらいたいと思うのは当然のことでしょう。
しかし、残念ながら、本来もらえるはずの損害賠償金額よりも低い金額で示談をしてしまっているご遺族の方が多いのが現状です。
なぜなら、ご遺族の方には、交通事故の損害賠償に関する知識がないことが普通であるため、加害者側の保険会社から提示された金額を適正なものであると勘違いしてしまっているからです。
後で詳しくご説明しますが、加害者側の保険会社が最初から適正な金額を提示してくることは多くありません。
では、適正な慰謝料などの損害賠償金額とは、いったいいくらになるのでしょう?
もちろん事故態様や被害者の方の年齢、職業、収入等の事情によって損害賠償金額は違ってきます。
正確な金額を出すには交通事故に詳しい弁護士等の専門家に相談することが一番なのですが、その前に基礎的な知識を知っておけば、ある程度の判断の目安がわかるようになると思います。
そこで今回は、バイクによる死亡事故で損をしないための正しい知識について説明していきます。
目次
みらい総合法律事務所の解決事例を紹介します
ここではまず、みらい総合法律事務所で実際に解決したバイク死亡事故の事例を紹介します。
示談交渉に弁護士が入った場合、どのくらい慰謝料などの示談金(損害賠償金)が増額するのか参考にしていただきたいと思います。
・交通事故の弁護士費用の相場と加害者に負担させる方法
解決事例①:40歳女性のバイク死亡事故で慰謝料等が約2400万円増額
原付バイクで走行中、左折してきたトレーラーに衝突された交通死亡事故。
被害者は40歳の女性で、加害者側の保険会社は慰謝料などの示談金(損害賠償金)として、約3422万円を提示してきました。
この金額に疑問を感じたご遺族が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、弁護士の説明に納得がいったことで示談解決のすべてを依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉をしたところ慰謝料などが約2420万円増額し、約5858万円で解決した事例です。
解決事例②:バイクの死亡事故で31歳男性の慰謝料等が約1640万円増額
31歳の男性がバイクで直進中に右折車両に衝突され、亡くなった交通事故。
加害者側の保険会社は慰謝料などの示談金として、約5757万円を提示。
そこで、この金額が妥当なものなのかどうか判断がつかなかったご遺族が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用しました。
弁護士が詳しく分析したところ、保険会社は事故前年度の年収をもとに逸失利益を計算していました。
「主張次第では、さらに増額できる」と弁護士からアドバイスを受けたことで、ご遺族は示談交渉のすべてを依頼することに決めました。
保険会社と交渉しましたが決裂したため、弁護士が提訴。
裁判では弁護士の主張が認められ、逸失利益が転職予定の増額された年収で計算されたこと、さらに過失相殺も被害者に有利に認定されたことで、最終的には7400万円で和解が成立しました。
当初提示額から約1640万円増額したことになります。
バイクの死亡事故では、なぜ弁護士が示談交渉に入ると慰謝料などが増額するのでしょうか?
その理由を、これから詳しくお話していきます。
なお、みらい総合法律事務所では、どなたでも簡単に慰謝料などの損害賠償金額を知ることができる「自動計算機」をWEB上にご用意しています。
指示の通りに数字を入力していくだけですので、ぜひ利用していただきたいと思います。
バイク死亡事故の損害賠償請求ができるのは誰か
交通死亡事故の場合、当事者である被害者の方は亡くなっているため、加害者へ損害賠償請求ができるのは、被害者の方の相続人になります。
相続については、民法(第882条以下)で詳しく定められています。
相続人について
被害者の配偶者(夫または妻)は、つねに相続人となります(民法第890条)。
配偶者以外の者の優先順位は、以下のようになっています(民法第889条)。
・第一順位 子供
被害者の方に子供がいた場合、子供が相続人となります。
配偶者はつねに相続人になるので、この場合は配偶者と子供が相続人です。
被害者の方に両親や兄弟姉妹がいたとしても、両親や兄弟姉妹は相続人にはなりません。
被害者の方の子供はすでに亡くなっているが、孫がいるという場合は、孫が代襲相続します。
この場合は配偶者と孫が相続人になります。
・第二順位 父母
被害者の方に子供がいない場合は、両親が相続人となります。
配偶者がいる場合は、つねに相続人となるので、この場合は配偶者と両親が相続人です。
・第三順位 兄弟姉妹
被害者の方に子供や両親がいない場合、被害者の兄弟姉妹が相続人となります。
配偶者がいる場合、配偶者はつねに相続人となりますので、この場合は配偶者と被害者の兄弟姉妹が相続人です。
相続分について
相続人がいくら請求できるのかについては、被害者の方が法律的に有効な遺言を残していればその遺言通りになりますが、特に遺言がない場合は、民法で定められている法定相続分に従います(民法第900条)。
配偶者と子供が相続人の場合、法定相続分は2分の1ずつです。
配偶者と、複数の子供がいる場合は、子供の相続分である全体の2分の1を、さらに子供の人数で均等に割った分が子供1人の相続分となります。
このように、同順位の相続人の法定相続分は均等であり、両親や兄弟姉妹が複数いる場合でも同様に考えます。
配偶者と両親が相続人の場合、法定相続分は配偶者が3分の2、両親が3分の1です。
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。
【参考記事】
【交通死亡事故の相続】被害者の親族で誰が慰謝料受け取ることができるのかを解説
バイク死亡事故の損害賠償金の項目について
交通事故の損害賠償金というと、慰謝料のことだと思っている方もいますが、じつは損害賠償金とは慰謝料のことだけを指すのではなく、さまざまな損害賠償項目の合計金額のことをいいます。
交通死亡事故の場合に請求できる損害賠償金の主な項目には、以下のものがあります。
・死亡逸失利益
・死亡慰謝料
・弁護士費用(裁判を起こした場合)
葬儀費用
葬儀費用は、自賠責保険の場合は定額で、金額は60万円です。
任意保険会社は、定額で定められている自賠責保険では足りない部分を補うものですが、葬儀費用については、だいたい120万円以内で提示してくることが多いです。
裁判を起こした場合に認められる金額である弁護士(裁判)基準では、葬儀費用は原則として150万円を主張します。
ただし、実際にかかった金額が150万円を下回る場合は、実際に支出した額になります。
なお、被害者の方の社会的地位が高いことなどで、実際にかかった額が相場よりも高額であるような場合は、その支出の必要性が認められれば150万円より高額な金額が認められる可能性もあります。
死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、被害者の方が生きていれば労働などにより将来にわたって得られたはずのお金のことです。
死亡逸失利益は、以下の計算式で算定します。
基礎収入は、被害者の方の立場によって次のように変わります。
働いていた場合 | 原則として事故前年の実際の年収額 |
---|---|
幼児や学生であった場合 | 賃金センサスの男女別全年齢平均賃金 |
主婦であった場合 | 賃金センサスの女性労働者の全年齢平均賃金 |
生活費控除とは、生きていればかかったはずの生活費を収入額から差し引くことをいいます。
生活費控除率は、被害者の立場によっておよその目安が決まっています。
被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合 | 40% |
---|---|
被害者が一家の支柱で被扶養者2人以上の場合 | 30% |
女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合 | 30% |
男性(独身、幼児等含む)の場合 | 50% |
ライプニッツ係数とは、損害賠償の場合は将来にかけて得られたはずのお金を現時点でまとめて受け取ることになるため、将来の収入時までの利息を複利で差し引く係数のことをいいます。
このパーセンテージは、事故がいつ起きたのか、によって違ってきます。
就労可能年数とは、働くことが可能であると考えられる年数のことです。
就労の終了時期は、原則として67歳までとされていますが、被害者の方が67歳よりも高齢であった場合は、簡易生命表の平均余命の2分の1とされています。
被害者の方が幼児や学生であった場合、就労の始まりの時期は、原則として18歳とされていますが、大学生で大学卒業が具体的に決まっていた場合や卒業の可能性が高い場合などは、大学卒業予定時を就労の始まる時期とします。
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、被害者の方の立場によって、裁判基準である程度の相場が定められています。
一家の支柱の場合 | 2800万円 |
---|---|
母親、配偶者の場合 | 2500万円 |
その他(独身の男女、子供、幼児等)の場合 | 2000万円~2500万円 |
保険会社が提示してきた死亡慰謝料額が上記の相場より低い場合は、交渉することになります。
また、事故態様が、加害者の無免許、ひき逃げ、飲酒、信号無視、薬物等のため正常な運転ができない状態での運転による場合や、事故後の対応が著しく不誠実な態度である場合など、悪質であると考えられる場合には、上記の相場の金額よりも高い慰謝料額が請求できる場合もあります。
・交通死亡事故の慰謝料はいくら?ご家族がやるべきこととは?
弁護士費用
加害者側との示談交渉がうまくいかず、弁護士に依頼して裁判を起こした場合には、判決において、裁判で認められた損害賠償金額の10%程度が、弁護士費用として認められることになります。
たとえば、裁判で認められた損害賠償金額が5000万円だった場合、弁護士費用分として10%の500万円が追加され、加害者が支払いを命じられる金額は5500万円となります。
弁護士に相談・依頼すると、その金額が高いのではないかと心配される方もいますが、じつは裁判をすると、このように弁護士費用を加害者側に負担させることもできることを覚えておいていただきたいと思います。
過失相殺は争点になりやすい!?
バイク事故による死亡事故の場合に争いになりやすい点として、過失相殺の問題があります。
過失相殺とは
過失相殺とは、交通事故が起きたことについて、被害者側にも何らかの過失があった場合に、被害者の過失を考慮して、その過失の割合を損害賠償額から減額することです。
たとえば、過失割合が「80対20」とされた場合、加害者の過失が80%、被害者の過失が20%ということになります。
この場合の損害賠償金額の合計額が1000万円だとした場合、1000万円の20%である200万円を差し引いた800万円が、被害者側に支払われる金額となります。
損害賠償金額が大きくなればなるほど、過失割合が10%違っただけでも受け取れる金額が何百万や何千万も変わってしまう場合もありますので、過失割合がどのくらいか、というのは非常に重要なポイントになります。
バイクの死亡事故での過失相殺
バイクの交通事故の場合、被害者の方にもバイクの運転者として注意して運転する義務があります。
そのため、信号待ちで停車中に後方から追突された場合や、加害者の対向車がセンターラインオーバーして突っ込んできた場合など、どうしようもなかった場合を除いて被害者の方にもいくらかの過失が認められる場合が多いです。
過失割合については、裁判所や弁護士、保険会社も東京地裁民事交通訴訟研究会編の「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という書籍を参考にしています。
【書籍紹介】
民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版] 別冊判例タイムズ38号 別冊38号
この認定基準では、交差点での事故か否か、信号機があるか否か、直進者と右折車の事故かなど、起こり得るさまざまな事故の形態についての基本の過失割合を設定し、そこに具体的な事故の状況に応じて修正を加えて判断します。
死亡事故の場合、被害者の方は亡くなっているので後から言い分を聞くことができません。
過失割合の判断にあたっては、警察が作成した実況見分調書を参考にすることになりますが、その実況見分調書も主に加害者の言い分によって作成されていることになります。
加害者が本当のことを述べているのかどうか、判断が難しいこともあるでしょう。
しかし、加害者側が「被害者の過失が大きい」と主張してきた場合でも、すぐにあきらめる必要はありません。
そうしたときは、事故態様を再検討したり、目撃者を探して話を聞いたり、同じような事故態様の裁判例を探して被害者の過失が少ないことの立証の資料にしたりと、証拠を集めることによって相手方の主張を覆すことができる場合もあります。
・交通事故の過失割合で損をしないための知識
バイクの死亡事故は弁護士に相談・依頼するべき理由
ここまで読み進めてこられて、どのように感じられたでしょうか?
やはり、ご遺族が単独で加害者側の保険会社と示談交渉をするのは難しいと思われたのではないでしょうか。
実際に適正な損害賠償金額を算定するにあたっては、事故態様や加害者の対応、被害者の立場等、さまざまな事情を考慮して算定することになります。
ご家族などが被害にあわれた事故の場合に、死亡逸失利益や死亡慰謝料はいくらになるのか、過失割合はどのくらいになるのか、など基礎的な知識を身につければつけるほど疑問に思う点もたくさんでてくると思います。
そこで強い味方となるのが弁護士という存在です。
ただし、弁護士なら誰でもいいわけではありません。
可能であれば、実務に精通した交通事故に強い弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
交通事故の損害賠償に関する知識と経験がないと、弁護士でもわからなかったり、間違うこともあるので、そうなるとご遺族が損をしてしまうことにもなりかねないからです。
こちらの記事を読んでいただくと、より詳しくおわかりいただけると思います。
・交通事故を弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点
私たち、みらい総合法律事務所は、
交通事故による後遺症と死亡事故に注力しており、
解決実績も多数あります。
いつでも無料相談を受け付けていますので、過失割合について疑問に感じたり、争いが生じているような場合も、ぜひ1度ご相談ください。
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代表社員 弁護士 谷原誠