道路上ゼブラゾーン(導流帯)の交通事故の過失割合は?慰謝料はどうなる?右折などのケース別に解説
ゼブラゾーンと呼ばれる、直進レーンと右折レーンが分かれる交差点の手前でよく見かける縞模様の道路標示は、「導流帯(どうりゅうたい)」といいます。
交通事故がゼブラゾーン付近で発生した場合、過失割合が変動し、受け取れる慰謝料の額が変わる可能性があるので注意してください。
本記事では、ゼブラゾーンの上を走行したときの扱いと、ゼブラゾーン付近で交通事故が発生した際の過失割合について解説します。
目次
ゼブラゾーン(導流帯)とは
導流帯は、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」に規定される道路標示で、白い枠線の中に斜めの白線が引いてあるため、一般的には「ゼブラゾーン」と呼ばれています。道路標示は道路の交通に関する規制や指示を示すために設置されており、道路上に線や文字、記号で描かれています。
ゼブラゾーンには車両の安全かつ円滑な走行を誘導する目的があり、交差点の手前に設置されていることが多いです。
右折レーン手前にゼブラゾーン
(導流帯)が設置されている意味
ゼブラゾーンは、下記のような円滑な走行ができない可能性がある場所に設置されています。
- 交差点が広すぎることで、交差点を通行する車両の走行位置が不安定となり、交差点の処理能力が低下することで、交通渋滞や交通事故が発生する恐れのある道路
- 交差点が変形または複雑であることで車両の交錯が多くなり、交通渋滞や交通事故が発生する恐れがある道路
- 車線数の減少など、道路の形状や交通状況からみて、安全かつ円滑な走行を誘導する必要があると認められる道路
右折レーン手前にゼブラゾーンが設置されていない場合、右側車線を走行していた車が直進・左折するために車線変更することで渋滞が発生することが考えられます。
交差点の手前にゼブラゾーンを設置していれば、早い段階で直進・左折車と右折車を分けることができるため、交通渋滞だけでなく交通事故の発生を抑制できます。
ゼブラゾーン(導流帯)に類似する道路標示
道路標示には、下記のようなゼブラゾーンと類似したものが複数存在します。
道路標示の役割はそれぞれ異なりますので、ゼブラゾーンの説明と比較し、ゼブラゾーン以外の道路標示の意味も運転前に確認してください。
(1)ゼブラゾーン(導流帯)
(2)停止禁止部分
(3)立ち入り禁止部分
(4)安全地帯
ゼブラゾーン(導流帯)
ゼブラゾーン(導流帯)の設置目的
車両の安全かつ円滑な走行の誘導。
ゼブラゾーン(導流帯)の意味
車の誘導をする必要がある場所に設置されるが、その上を走行しても道路交通法上は問題はない。設置場所が中央でも端でも同じ。ただし、なるべく進入や駐停車はしないことが望ましい。
停止禁止部分
停止禁止部分の設置目的
道路の特定部分における車両等の停止を禁止し、交通の安全と円滑を図る。
停止禁止部分の意味
中に入って通ることは出来るが、停止することは出来ない。渋滞で混んでいる場合でも、信号待ちの場面であってもここで止まるのは禁止。消防署の前などに設置されている。(消防車出動時に停止車両があると困るため。)
立ち入り禁止部分
立ち入り禁止部分の設置目的
車両の立入を禁止し、交通の安全と円滑を図る。
立ち入り禁止部分の意味
進入も駐停車も禁止。どんな理由があっても入ってはいけない。見通しの悪いカーブや形状が複雑な道路など、事故が起こりやすい場所に設置されている。
安全地帯
安全地帯の設置目的
路面電車に乗降する者または横断している歩行者の安全を図る。安全地帯または路上障害物に接近しつつあることを示すことで、交通の安全を図る
安全地帯の意味
内側に車両は進入禁止。また、安全地帯に歩行者がいる場合、そばを通行する車両は徐行しなければいけない。
ゼブラゾーン(導流帯)を
走行したら交通違反になる?
ゼブラゾーン上の走行自体は、道路交通法における違反行為には該当しないため、ゼブラゾーンに進入したとしても、それだけで取り締まりを受けることはないです。
しかし、ゼブラゾーンは車両の安全かつ円滑な走行を誘導する目的で設置されていることから、ゼブラゾーン付近で交通事故が発生した場合には、ゼブラゾーンを走行していた側の過失が通常よりも問われる可能性があります。
また、隣側の車線を走行している車がゼブラゾーン上の走行が禁止されていると誤認している場合、衝突事故が発生する恐れがあるので気を付けてください。
ゼブラゾーンを走行中に交通事故が起きた場合の過失割合
交通事故の過失割合は事故の状況によって変わりますので、ゼブラゾーン上で発生する交通事故の過失割合をケースごとに解説します。
交通事故の過失割合と修正要素
交通事故の過失割合は、ベースとなる「基本過失割合」に「修正要素」を加味して決定します。
過失割合は交通事故が発生した責任の重さ(割合)をいい、過失割合が高いほど交通事故が発生した責任が重いことを意味します。
基本過失割合は、事故の類型や形態によって定められている過失割合です。
修正要素は、過失割合の比重が変動する要素をいい、修正要素があるときは過失割合が加算または減算されます。
たとえば、交差点で直進車と右折車が衝突した場合、過失割合は右折車の方が重いですが、直進車が法定速度を超過して走行していたときは直進車の過失割合が加算されるため、通常よりも直進車側の責任が問われることになります。
ケース1:車線変更車と
ゼブラゾーン走行車との
交通事故
右側に車線変更する車(A)と、ゼブラゾーンを直進してきた後続車(B)が衝突して交通事故が発生した場合、基本過失割合は「A:B=7:3」と、車線変更した車側が加害者となります。
しかし、Bがゼブラゾーン上を走行していた場合、過失割合を加算する修正要素が加わりますので、最終的な過失割合は4対6または5対5になります。
A(右折車): B(ゼブラゾーン 走行車) |
|
---|---|
基本過失割合 | 7:3 |
ゼブラゾーン走行に よる修正要素 |
Bに+1~2 |
修正要素を加味した後の 過失割合 |
6:4~5:5 |
ケース2:道路外から右折した
車とゼブラゾーン走行車との
交通事故
コンビニの駐車場など、道路外から右折して道路に進入した車(A)と、ゼブラゾーン走行車(B)が衝突して発生した交通事故の基本過失割合は8対2です。
道路外から道路に進入する際に発生した事故は、通常よりも右折車側の過失割合が重くなりますが、Bがゼブラゾーンを走行していたときはBの過失割合が加算されるため、最終的な過失割合は7対3または6対4になります。
A(右折車): B(ゼブラゾーン 走行車) |
|
---|---|
基本過失割合 | 8:2 |
ゼブラゾーン走行に よる修正要素 |
Bに+1~2 |
修正要素を加味した後の 過失割合 |
7:3~6:4 |
ケース3:右折して道路外に出る
車とゼブラゾーン走行車との
交通事故
道路からコンビニの駐車場などに入るために右折した車(A)と、ゼブラゾーン走行車(B)との間で交通事故が発生したときの基本過失割合は9対1です。
ほとんどの事故原因は右折車側にあると判断されますが、他のケースと同様、Bにはゼブラゾーンを走行していた修正要素があるため、最終的な過失割合は8対2または7対3になります。
A(右折車): B(ゼブラゾーン 走行車) |
|
---|---|
基本過失割合 | 9:1 |
ゼブラゾーン走行に よる修正要素 |
Bに+1~2 |
修正要素を加味した後の 過失割合 |
8:2~7:3 |
ケース4:高速道路上の
ゼブラゾーンでの交通事故
高速道路上で車線変更する車(A)と、ゼブラゾーンを直進してきた後続車(B)の間で交通事故が発生したときの基本過失割合は8対2です。
しかし、高速道路でゼブラゾーンを走行していた場合には、一般道よりも修正要素による加算は重くなるため、最終的な過失割合は6対4になります。
A(右折車): B(ゼブラゾーン 走行車) |
|
---|---|
基本過失割合 | 8:2 |
ゼブラゾーン走行に よる修正要素 |
Bに+2 |
修正要素を加味した後の 過失割合 |
6:4 |
ゼブラゾーンで交通事故が発生した場合の慰謝料への影響
被害者が受け取れる慰謝料の額は過失割合によって変動するため、被害者がゼブラゾーンを走行していた場合、通常の交通事故よりも受け取れる慰謝料が少なくなる可能性があります。
交通事故の慰謝料を決める基準
交通事故の慰謝料は、基本的に被害者と加害者が話し合って決めます。
交通事故の慰謝料の算定方法は、「自賠責基準」・「任意保険基準」・「弁護士基準(裁判基準)」の3種類あり、どの基準をベースに慰謝料を算定するかは当事者の判断です。
被害者側は被った損害に対する補償を加害者に求めることができますが、用いる算定基準によって慰謝料の請求額は大きく異なる場合があります。
たとえば、最も慰謝料が高額になる算定方法は弁護士基準ですが、弁護士基準を用いるためには専門知識が不可欠です。
また、弁護士基準で算定した慰謝料の額に加害者側が納得しなければ交渉はもつれますので、示談を成立させるためには入念な準備も必要です。
修正要素による加算・減算は
交通事故ごとに異なる
交通事故が発生した場合、色々な要素を総合的に勘案して過失割合を決めます。
被害者がゼブラゾーンを走行していた場合、過失割合が加算される可能性がありますが、加害者にスピード違反などの修正要素があるときは、最終的に被害者側の過失割合が下がることも考えられます。
悪質な運転が原因で交通事故が生じたときは、慰謝料の請求額が増額されることもありますので、修正要素を十分に加味した上で過失割合を決定しなければなりません。
被害者の過失割合が高くなる
ほど受け取れる慰謝料は
少なくなる
被害者に交通事故が発生した原因があるときは、加害者が負担すべき損害賠償金の額から、被害者の過失分を差し引く「過失相殺」が行われます。
過失割合が10対0の場合、交通事故が発生した原因はすべて加害者にあるため、被害者は被った損害の補償を全額求めることができます。
一方、過失割合7対3のケースなど、被害者にも過失がある交通事故においては、過失相殺により請求できる慰謝料は少なくなるので注意してください。
ゼブラゾーンの交通事故は弁護士に依頼すること
交通事故の被害者となった場合、加害者に対して被った損害の賠償を求めることになりますが、加害者側が提示した内容を受け入れるとは限りません。
交通事故の示談交渉の場には、加害者本人ではなく、加害者が加入している民間の保険会社が代理人として出てくることもあります。
保険会社は支払う保険金を抑えるために、被害者にも交通事故が発生した一端があると主張してくることも想定されます。
被害者は、過失が無かった(小さい)ことを主張しなければなりませんが、主張する際には根拠となる証拠書類を提示できるよう準備が必要です。
交渉に不慣れな被害者が保険会社と示談交渉するのは大変ですし、相手側の主張をそのまま受け入れてしまうと、納得できる損害賠償金や慰謝料が受け取れなくなってしまう恐れがあります。
ゼブラゾーン付近で発生した交通事故は、修正要素の有無や修正要素を加味した場合の過失割合について意見が対立しやすいため、示談交渉をする際は早い段階で弁護士に依頼することを検討してください。
みらい総合法律事務所は無料相談を行なっています。ぜひご利用ください。
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