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交通事故で過失割合10対0の場合の慰謝料の計算方法

最終更新日 2024年 06月17日

交通事故で過失相殺10対0の場合の慰謝料の計算方法

交通事故の被害者の方の慰謝料などの損害賠償金が減らされてしまうことがあるのを、ご存じでしょうか?

それには「過失相殺」というものが大きく関わってきます。

この記事では次の内容についてお話ししていきます。

チェックボックスでは、過失を相殺するとは、どういうことでしょうか?
チェックボックスどんな場合に過失相殺が問題になってくるのでしょうか?
チェックボックス被害者側の過失割合が0(ゼロ)のケースはあるのでしょうか? 
チェックボックス過失割合を0にして損害賠償金を増額することはできるのでしょうか?

まずは知っておきたい過失相殺・過失割合の基礎知識

過失相殺とは何でしょうか?

過失相殺とは、交通事故の発生、またその事故に関する損害の拡大について、被害者側にも過失がある場合、その割合に基づいて損害賠償額を差し引く=減額することです。

過失割合は、被害者側と加害者側それぞれの過失、責任の割合のことになります。

たとえば、加害者側の過失割合が7の場合は、被害者側は3になります。

加害者7対被害者3、というように表現されることが多いでしょう。

<過失相殺での計算例>

損害賠償金額:1000万円
被害者側の過失割合:3割
の場合……
1000万円 × (1 - 0.3)= 700万円

損害賠償金が、300万円も減額されてしまう!

実況見分調書と供述調書は重要な証拠になります

交通事故の発生後、警察は実況見分(現場検証)を行ない、実況見分調書を作成します。

また、加害者と被害者それぞれに聞き取り調査を行ない、供述調書を作成します。

実況見分調書には、「見分の日時・場所・立会人名」「現場道路や運転車両の状況」「立会人の説明「最初に相手を発見した地点、ブレーキを踏んだ地点、衝突した地点など)」といったことが書かれ、これに事故現場の見取図や写真などが添付されます。

実況見分調書と供述調書は、刑事事件のもっとも重要な証拠の1つになります。

そして、過失割合にも大きく関わってきます。

示談交渉、さらにはその後の民事裁判でも重要な証拠、判断材料の1つになるので、とても重要なものなのです。

ですから、警察の聞き取り調査には素直に応じて協力し、正しい記憶に基いて、正しく説明することが大切です。

事実とは異なることが記載されてしまうと、被害者の方には不利な状況が生まれてしまいます。

後から内容を訂正することはできないので注意してください。

こちらの記事でも詳しく解説しています

警察から「あなたは100%悪くない」と言われたら?

ところで、警察の聞き取り調査の際、被害者の方が「あなたは100%悪くない」と言われることがあります。

ここで知っておいていただきたいのは、これは示談交渉や民事裁判での過失割合とはまったく関係がないこと。

警察は当然、刑事事件に関わりますが民事には介入しませんから、「あなたには刑事責任はありませんよ」と言っているわけです。

ですから、「警察から言われたのだから自分には過失も責任もない」とは思わないようにしてください。

過失割合は誰が決めているのでしょうか?

では、過失割合は誰が決めているのかというと、加害者側の任意保険会社が自分の見解に基づき主張してきます。

その見解は被害者の方の思いや考えとは相容れないため、示談交渉や民事裁判でしばしば争点になるのです。

警察には民事不介入のルールがあり、検察は加害者を起訴するかどうかを決めるので、交通事故の過失割合には関わりません。

ここで注意していただきたいのは、保険会社が主張してくる過失割合は正しいとは限らないということです。

保険会社は営利法人ですから利益を追求することが、その企業の大きな目的です。

その目的のためには、収入を増やし、支出を減らす必要があります。

被害者の方へ支払う損害賠償金(示談金とも保険金ともいいます)は支出ですから、これをできるだけ抑えようとします。

被害者の方の過失割合を高くすれば、加害者の割合は低くなり、結果として自らの支出を削減することができます。

とてもシンプルにいうと、こういう理由があるのです。

そして、過失割合や慰謝料などの損害賠償金額は、最終的には被害者側と加害者側双方の合意によって決定されます。

(裁判まで進んだ場合は、裁判所の和解案に応じるか、最終的には裁判所の判決に従うことになります)

過失割合はどのように判断するのか?


過失割合には一定の基準があり、裁判所、弁護士、保険会社はすべて同じ基準により算定します。

なお、状況に応じて基本となる過失割合がありますが、交通事故は同じものは1つもないので、それぞれの事故の状況によって、被害者と加害者双方の基本過失割合に、5~20%程度の過失をそれぞれ加算して調整していきます。

「事例①」
状況:歩行者が横断歩道のない道路を横断して、直進車に衝突された
歩行者(被害者)の基本過失割合:20%
夜間:+5%
幹線道路:+10%
児童・高齢者:-5%
住宅地など:-5%

信号も横断歩道もないところを横断したので過失が多少大きいと判断されますが、それは絶対的なものではなく、上記のような修正要素によって過失割合がプラス、マイナスされます。

夜間の幹線道路を横断する際は十分注意するべき、ということで歩行者の過失割合がプラスされますが、歩行者が児童や高齢者の場合や住宅地などでは運転者が十分に注意しなければいけない、と判断されるわけです。

「事例②」
状況:2本の道路が交差する交差点で、優先車Aと劣後車Bが衝突した
優先車Aの基本過失割合:10%
劣後車Bの明らかな先入:+10%
優先車Aの著しい過失:+15%
劣後車Bの著しい過失:+10%

優先ではないB車が先に交差点に入ったのが明らかな場合は、10%の過失がプラスされます。

(著しい過失の内容については、のちほどお話します)

過失割合が10対0のケースもある


被害者の方としては、「自分には過失はない」「一方的に被害にあった」と感じることもあると思いますが、多くの場合、交通事故は当事者双方に過失(責任)があるとされます。

交通ルールを守っていたとしてもです。

しかし、中には被害者の方の過失が0,加害者が10と認められるケースもあります。

自動車(四輪車)同士の事故の場合

追突事故

いわゆる「もらい事故」ともいわれるのが次のような追突事故の被害です。

・信号待ちで停車中に、後方から走行してきた自動車に追突された
・駐車場などに止めていたら、後ろから車に追突された

チェックボックス追突事故は、交通事故でもっとも多いものの1つで、四輪車同士、四輪車と二輪車、二輪車同士の事故があります。

チェックボックス自分が運転する自動車が少しでも動いている場合は過失を認められることが多いので、過失割合が0と判断されるのは停車中の場合です。

チェックボックスところが、被害者の方に何の過失もないにも関わらず、加害者側(加害者が任意保険に加入している場合は、その保険会社)が、こんなことを主張してくる場合があります。

「突然、前方の自動車がブレーキを踏んだから衝突してしまった…」
「追い越しをしようとしたら妨害されたので衝突してしまった…」

チェックボックス突然のもらい事故ですから、事故当時のことは完全に覚えていなかったり、時間の経過とともに記憶は薄らいでいくものですから、「自分にも非があったかもしれない…」と思ってしまうこともあるかもしれません。

しかし、それを認めてしまうと、当然ですが過失割合は10対0にはならないので注意してください。

チェックボックスなお、駐車場の駐車禁止の場所に停車していた場合の追突事故被害では過失を問われます。

対向車の車線はみ出し

チェックボックス対向車がセンターラインを越えてはみ出してきて衝突された場合も、10対0と判断される場合が多くあります。

チェックボックスただし、道路にセンターラインがある場合でも被害者の方の過失割合が0にならない場合があります。

【参考情報】
道路交通法第17条5項

チェックボックスなお、センターラインがない道路では、被害者も注意をするべきだったとされて、加害者8対被害者2の過失割合になることが多いのですが、状況によって割合は変わってくるので、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。

信号無視

加害者の信号無視による交通事故の場合も、10対0になる場合が多いといえます。

なお、自動車同士の事故では次のような場合が被害者、加害者どちらかにある時には、その当事者側に過失割合が加わります。

「過失がプラスされるケース」
大型車
速度超過
前方不注意
左右折禁止違反
早回り左右折
大回り左右折
直近左右折
徐行なし
ウィンカーなし
著しい過失・重過失

自動車と二輪車の事故の場合

多くの場合で、自動車と二輪車の事故では、自動車対自動車の場合に準じた過失割合になります。

自動車と自転車の事故の場合

通常、自転車よりも自動車のほうが過失割合が大きくなる傾向があります。

しかし道路交通法上、自転車は軽車両となり一定の危険もともなうため、自転車側の過失が0となるケースはそれほど多くはない、というのが現実です。

ただし、次のような場合は自転車の過失が0と判断されます。

①自動車が自転車を追い越して曲がろうとした場合

たとえば、信号機のない交差点の手前で自動車が自転車を追い越し、左折した際に衝突した場合は、自動車10対自転車0の過失割合になります。

ただし、自動車が自転車に先行していた場合は、自転車は注意しなければいけませんから、自転車の過失が認められます。

②対向車の車線はみ出し

対向車(自動車)がセンターラインを越えて自転車と衝突した場合は、自転車側の過失は0になります。

自動車と歩行者の事故の場合

自動車と歩行者の事故の場合は、基本的には歩行者の過失割合は小さくなる傾向がありますが、次のようなケースでは歩行者の過失割合は0になります。

①歩行者側の信号が青信号の場合

青信号で歩行者が横断歩道を渡っていた際に、進行方向の信号が赤信号にも関わらず自動車が直進して衝突した場合、歩行者の過失割合は0になります。

なお、歩行者が横断歩道を渡っている途中で信号が黄信号や赤信号に変わった場合でも歩行者の過失割合は0になります。

また、信号機のない横断歩道の場合、歩行者が横断歩道上、あるいは横断歩道から1、2メートル付近を歩行していたなら原則として過失割合は0になります。

②歩道に自動車が進入してきた場合

③歩道と車道の区別のない道路を歩行者が右側通行していた場合

歩行者が右側通行をしていれば、過失割合は0になります。

ただし、歩行者が左側通行をしていたケースや、ふらつきながら歩行していたようなケースでは歩行者の過失割合は0.5(5%)になります。

過失割合を10対0にする方法とは?


交通事故には1つとして同じものはなく、事故状況や被害者、加害者それぞれの属性や家庭での立場などすべて違ってきます。

ですから、ここまでお話ししてきた交通事故の状況と過失割合が絶対的に認められるわけではありません。

実際の損害賠償実務では、次のようなさまざまな「修正要素」が考慮されます。

加害者側に過失が加算される場合の例

①住宅地・商店街における事故
②被害者(歩行者)が児童や高齢者
③歩行者が集団
④速度違反・飲酒・合図なしなどの道路交通法違反がある
⑤著しい過失・重過失がある

被害者側に過失が加算される場合の例

①夜間
②幹線道路(歩行者の場合)
③横断禁止場所の横断
④速度違反などの道路交通法違反がある
⑤著しい過失・重過失がある

「過失と重過失の内容」
<過失の例>
・酒気帯び運転
・15~30km/h程度の速度超過
・運転中のスマートフォンなどの使用
・脇見運転
・ハンドル、ブレーキ等の不適切な操作 など

<重過失の例>
・酒酔い運転
・居眠り運転
・無免許運転
・30km/h以上の速度超過

歩行者の過失割合の修正要素

<歩行者の過失がプラスされる例>
・自動車の通行量の多い幹線道路での交通事故
・夜間の交通事故被害者が車両の直前・直後を横断
・横断禁止の規制がある場所の横断した場合
・被害者が立ち止まる、ふらつき歩き、後退したような場合

<歩行者の過失がマイナスされる例>
・被害者が幼児、児童、高齢者、身体障碍者などの場合
・被害者が集団横断中の場合
・住宅地・商店街での交通事故
・歩道と車道の区別がない道路での交通事故
・自動車側に著しい過失や重過失があった場合

また、これら以外にも交通事故の状況などによって過失がプラス、マイナスされるケースは、さまざまあります。

しかし被害者の方が、こうした状況をすべて把握し、知識を身に着けたうえで加害者側の過失を立証していくのは、現実的には困難だと言わざるを得ません。

ですから、示談交渉で過失割合が争点になった場合は、交通事故に強い弁護士に相談し、強力なサポートを依頼することも大切になってきます。

保険会社は被害者の味方ではありません。

それを忘れないでいただきたいと思います。

被害者の過失割合が0の場合に注意するべきこととは?

過失割合0の場合では保険会社は示談代行してくれない!?

自動車保険(任意保険)に加入すると、現在では「示談代行サービス」が付帯されている場合が多いと思います。

加害者が任意保険加入している場合、示談代行サービスがついていれば被害者の方との示談交渉は保険会社が代行します。

被害者の方は、加害者側の保険会社と示談交渉を進めていくことになるわけです。

その際、被害者ご自身が加入している任意保険に示談代行サービスがついていれば、その保険会社が示談交渉をしてくれるのですが、被害者の方に過失がなく、賠償責任がない事故の場合は注意が必要です。

というのは、「弁護士法」という法律により、保険会社が交渉をすることが禁じられているからです。

つまり、被害者の方が加害者側の保険会社と示談交渉を行なっていかなければいけないのです。

 

過失割合が0のケースでは示談成立に時間がかかる!?

前述したように、加害者側の任意保険会社は支出となる被害者の方への損害賠償金をできるだけ低く抑えようとします。

一方、被害者の方としては、できるだけ高額の賠償を求めるでしょう。

このように利害が正反対の両者が示談交渉を行なうのですから、すんなりと進まないことが多くあります。

特に、被害者の方の過失割合が0になり得る交通事故の場合は慰謝料などの損害賠償金が高額になる傾向があるため、示談金額で折り合いがつかず、示談交渉がなかなか進まないといったことが起きがちです。

こうした場合は、まずは一度、交通事故に精通した弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士は、あなたの力になってくれるでしょう。

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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