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一時停止無視の交通事故の過失割合の注意点|10対0にはならない?

最終更新日 2024年 10月11日

一時停止無視の交通事故の過失割合の注意点

交通事故の損害賠償実務では、過失割合」が争点になる場合があります。

過失割合とは、その交通事故の原因となる過失(責任)の割合のこと。
被害者の方としては過失割合を大きくされてしまうと、
その分、損害賠償金を減額されてしまうので、とても重要なものです。

これを「過失相殺」といいます。

車両等は、交差点などで、一時停止すべきことが指定されているときは、停止線の直前で一時停止する義務があります。

これを一時停止義務といいます。

本記事では、加害者が一時停止無視をして起きた交通事故の過失割合について解説していきます。

一時停止無視による交通事故の被害に遭った人は、本記事を最後まで読んでしっかりと知識を身につけ、決して損をしないように注意してください。

交通事故解決までの全プロセスを説明した無料小冊子もご用意しています。
ぜひダウンロードしてみてください。

一時停止無視とは?

一時停止無視とは?

法律上の一時停止の定義

道路交通法では、次のように規定されています。

「道路交通法」
第四十三条(指定場所における一時停止)
車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
(罰則 第百十九条第一項第五号、同条第三項)

※車両等/自動車、原動機付自転車、軽車両(自転車等)、トロリーバス、路面電車。
※交通整理が行なわれていない交差点/信号機が設置されていない交差点、警察官が交通整理を行なっていない交差点等。

一時停止についての基本知識

「一時停止の場所」
停止線がある場合はその直前、停止線がない場合は交差点の直前。

「一時停止の時間」
法的には明確に規定されていないが、完全に停止したうえで、周囲の安全を確認できる時間。
形式的にただ停止するだけでは、一時停止にはならない。

過失割合/過失相殺とは?

過失割合/過失相殺とは?

過失割合と過失相殺の関係

交通事故が起きることには原因があります。

過失割合とは、交通事故が起きたことの過失(責任)について、加害者側と被害者側それぞれの割合について表したものです。

そして、トータルとしての損害賠償金額から被害者側の過失分を差し引くことを過失相殺といいます。

たとえば単純計算として、損害賠償金が3,000万円で、過失割合が加害者80%対被害者20%の場合、3,000万円の2割は600万円になるので、この分が差し引かれて被害者の方に2,400万円が支払われるのです。

一時停止無視の事故の過失割合

被害者の方としては、「自分の過失はない」「過失割合を大きくされるのはおかしい」と感じると思います。
一時停止無視であれば、加害者が違反をしているのだから、「過失割合は10対0になるはずだ」と思う方もいるでしょう。

実際、過失割合が10対0になるケースもあります。

たとえば、信号待ちでの追突事故(もらい事故)や対向車のセンターラインはみだし、信号無視などでは、過失割合が10対0になることもあります。

しかし、被害者の方が車両等を運転している場合に、たとえ交通ルールを守っていたとしても、多くの場合で交通事故は当事者双方に過失(責任)があるとされます。

被害者側にも安全確認をする責任があるということです。

「道路交通法」
第三十六条(交差点における他の車両等との関係等)
4.車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
(罰則 第四項は第百十九条第一項第六号)

そのため、一時停止無視による事故の場合、加害者側の過失割合が高くなりますが、
被害者の方にも過失割合があると判断されることがほとんどだと考えておいたほうがいいでしょう。

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過失割合は誰が決めているのか?

過失割合の基準
ところで、交通事故の過失割合は誰が決めているのでしょうか?

加害者が任意保険に加入している場合、治療費や慰謝料、逸失利益などを合計した損害賠償金はその保険会社から支払われます。

つまり、過失割合を決めているのは加害者側の任意保険会社ということになります。

しかし、ここで注意が必要なのは、この過失割合は絶対的なものでも正しいものでもないということです。

保険会社が株式会社なら、それは営利法人ですから彼らの目的は利益の追求です。

であれば、被害者の方に支払う金額はできるだけ抑えたいと考えます。

被害者の方の過失割合が高いほど、支払う金額は減るので、加害者側の任意保険会社は自社の基準と都合によって、これを低く見積もって提示して、過失相殺を主張してきます

ですから、被害者の方は加害者側の保険会社が提示してくる過失割合をうのみにしてはいけないのです。

過失割合は当事者同士の話し合いで決めていくものなのです。

過失割合を決める基準は?

過失割合は絶対的なものではないにしても、一定の基準になるものはあります。

東京地裁にある「民事27部」という交通事故を専門に扱っている部署が中心となって作成していており、これが全国の基準になっています。

ただし、交通事故は1つとして同じ態様・状況ではないため、まず基本となる過失割合を出したうえで、その後に修正要素によって加害者と被害者双方に5~20%程度の過失を加算していきながら調整していくのが通常です。



交通事故の状況別:一時停止無視の過失割合

一時停止無視の過失割合
ここでは状況別に、加害者が一時停止無視をしたために起きた交通事故の過失割合についてお伝えします。

参考資料は次のものです。

なお、基本となる過失割合は、自動車対自動車の事故で、加害者80%対被害者20%となります。

自動車同士の交通事故

直進車同士の事故

ここでは、

  • 一時停止の標識があったにも関わらず無視をした直進車(A) = 加害者
  • 一時停止規制はなかった直進車(B) = 被害者

この2人が、信号機のない交差点で出合い頭の事故を起こした場合の過失割合を見ていきます。

<過失割合>

状況 A (加害者) B (被害者)
AとBがほぼ同じ速度 80 20
Aは減速をせず/Bが減速 90 10
Aが減速/Bは減速をせず 70 30

<修正要素>

状況 A (加害者) B (被害者)
Aが著しい過失 +10 -10
Aが重過失 +20 -20
Bが著しい過失 -10 +10
Bが重過失 -20 +20

<著しい過失とは?>
次のような行為が著しい過失とみなされます。

  • ・脇見運転等の著しい前方不注意
  • ・酒気帯び運転
  • ・一般道での15km/h以上 30km/h未満の速度違反
  • ・ハンドルやブレーキの著しく不適切な操作
  • ・携帯電話の使用、画面を見ながらの運転
  • ・ナビの操作、画面を見ながらの運転 など

飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」があります。

<重過失とは?>
著しい過失より、さらに大きな過失で、故意と同等程度とみなされる非常に危険な運転です。

  • ・酒酔い運転
  • ・居眠り運転
  • ・無免許運転
  • ・30キロ以上の速度違反(一般道)
  • ・薬物を使用しての運転 など

これらの運転行為は、危険運転致死傷罪の適用が問題になる非常に危険なものです。

「左折車と直進車の事故」

信号機のない交差点で、一時停止無視の左折車(A)と直進車(B)の過失割合は次のようになります。

<過失割合>

A (左折車) B (直進車)
基本の過失割合 80 20

<修正要素>

状況 A (左折車) B (直進車)
Aが徐行をせず +10 -10
Aが著しい過失 +10 -10
Aが重過失 +20 -20
Bが減速をせず -10 +10
Bが著しい過失 -10 +10
Bが重過失 -20 +20

「右折車と直進車の事故」

信号機のない交差点での、直進車(A)と右折車(B)の事故では、

  1. 右折車と直進車のどちらに一時停止規制があったのか
  2. 右折車が左側にいたのか右側にいたのか

が問題になりますが、ここでは、右折車(B)に一時停止規制がある場合を取り上げます。

<過失割合>

A (直進車) B (右折車)
基本の過失割合 85 15

<修正要素>

A (直進車) B (右折車)
Bが徐行をせず -10 +10
Bが早周り右折 -10 +10
Bが重過失 -15 +15
Aが減速をせず +10 -10
Aが15km/h以上の
速度超過
-10 +10
Aが30km/h以上の
速度超過
-20 +20
Aが著しい過失 +10 -10

「右折車同士の事故」

信号機のない交差点での、一時停止無視の右折車(A)と一時停止規制がなかった右折車(B)の過失割合は次のようになります。

<過失割合>

A (一時停止無視) B
基本の過失割合 75 25

<修正要素>

A (一時停止無視) B
Aが右折方法違反 +10 -10
Aが右折禁止違反 +10 -10
Aが著しい過失 +10 -10
Aが重過失 +20 -20
Bが右折方法違反 -10 +10
Bが右折禁止違反 -10 +10
Bが著しい過失 -10 +10
Bが重過失 -20 +20

自動車と二輪車(バイク)の事故

自動車と二輪車(バイク)の事故
自動車とバイクの事故では、バイクの過失割合が低めに判断される傾向があります
ここでは、直進車同士で自動車(A)とバイク(B)の事故について見てみます。

「一時停止規制のある自動車(A)とバイク(B)の事故」

<過失割合>

状況 A (自動車) B (バイク)
AとBがほぼ同じ速度 85 15
Aは減速をせず/Bが減速 90 10
Aが減速/Bは減速をせず 75 25
Aが一時停止 65 35

<修正要素>

状況 A (自動車) B (バイク)
Aが著しい過失 +10 -10
Aが重過失 +20 -20
Bが著しい過失 -5~10 +5~10
Bが重過失 -10~20 +0~20

「自動車(A)と一時停止規制のバイク(B)の事故」

<過失割合>

状況 A (自動車) B (バイク)
AとBがほぼ同じ速度 35 65
Aは減速をせず/Bが減速 45 55
Aが減速/Bは減速をせず 20 80
Bが一時停止 45 55

<修正要素>

状況 A (自動車) B (バイク)
Aが著しい過失 +10 -10
Aが重過失 +20 -20
Bが著しい過失 -10 +10
Bが重過失 -20 +20

自動車と自転車の事故

自動車と自転車の事故では、自転車の過失割合が低めに判断される傾向があります

ここでは、直進車同士で自動車(A)と自転車(B)の事故について見てみます。

「一時停止無視の自動車(A)と自転車(B)の事故」

<過失割合>

状況 A (自動車) B (自転車)
AとBがほぼ同じ速度 90 10

<修正要素>

状況 A (自動車) B (自転車)
Aが著しい過失 +5 -5
Aが重過失 +10 -10
Bが著しい過失 -10 +10
Bが重過失 -15 +15
Bが児童や高齢者 +5 -5
Bが自転車横断帯を通行 +5 -5
Bが右側通行・左方進入 -5 +5

「自動車(A)と一時停止無視の自転車(B)の事故」

<過失割合>

状況 A (自動車) B (自転車)
AとBがほぼ同じ速度 60 40

<修正要素>

状況 A (自動車) B (自転車)
Aが著しい過失 +5 -5
Aが重過失 +10 -10
Bが著しい過失 -10 +10
Bが重過失 -15 +15
Bが児童や高齢者 +10 -10
Bが自転車横断帯を通行 +10 +10
Bが右側通行・左方進入 -5 +5
夜間の場合 -5 +5

<自転車の著しい過失>
・2人乗り
・無灯火
・酒気帯運転
・傘差ししながらの片手運転

<自転車の重過失>
・酒酔い運転
・制動装置(ブレーキ)の不良等

過失割合でもめた場合の対処法

過失割合でもめた場合の対処法

実況見分調書や供述調書は重要な証拠になる

前述したように、交通事故の過失割合では、加害者側の任意保険会社は被害者の方の過失割合を高く主張して、過失相殺をしてこようとします。

その場合、実況見分調書が大きな証拠になります

交通事故が発生した場合、警察に通報すると警官が現場に急行して、実況見分(現場検証)を行ないます。
これをもとに、実況見分調書が作成され、これが検察に送られ加害者を刑事事件として起訴するかどうかの判断が行なわれます。

また、この実況見分調書は被害者の方と加害者側の示談交渉や民事裁判でも重要な証拠になります

さらに、交通事故では被害者と加害者双方に警察が聞き取り調査を行ない、供述調書も作成されることがあります。
供述調書も刑事裁判や民事裁判、示談交渉での大きな資料となります。

ですから、実況見分や聞き取り調査で被害者の方は曖昧な供述はせず、事実を警察にしっかりと話すことが大切です。

ドライレコーダーも重要な証拠に

近年、ドライブレコーダーの性能が向上し、自動車に車載する割合が増えています。

ドライブレコーダーの映像も示談交渉や民事裁判、示談交渉で重要な証拠になります

特に過失割合では、加害者が自分に有利な証言をして、それをもとに加害者側の任意保険会社が加害者に有利な過失割合を主張してくることがあります。
その際、重要な証拠となるので、ドライブレコーダーの映像があるなら、しっかり確認しておくことも大切です。


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交通事故の過失割合で加害者側ともめている場合は、まずは弁護士に相談してください

交通事故に強い弁護士であれば、交通事故の内容を精査し、的確なアドバイスをすることができます。

そして、弁護士の説明に納得がいき、正式に依頼していただければ、その後の示談交渉はすべて弁護士が行なっていきます。

交通事故を弁護士に依頼することで、被害者の方には次のようなメリットがあります。

  • ☑ご自身の正しい後遺障害等級を知ることができる。
  • ☑等級が間違っていたら、異議申立を依頼して正しい等級認定を受けることができる。
  • ☑適正な過失割合がわかり、慰謝料などの損害賠償金を適切に算定してもらえる。
  • ☑結果的に慰謝料などの損害賠償金の増額が可能になる。
  • ☑加害者側の任意保険会社との難しい示談交渉から解放される。

みらい総合法律事務所では死亡事故と後遺症事案について、随時、無料相談を行なっています。
まずは一度、相談だけでもしていただければと思います。

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交通事故の知識を解説しています

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠
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