家に車が突っ込んだ事故の修理代と保険金の請求方法を解説
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自動車による事故は車同士の接触事故だけでなく、建物や構築物にぶつかる物損事故もあります。
車で自宅や外壁にぶつけられたときは、加害者に修理代を請求することになりますが、損害額を正しく算出しないと、満額補償してもらえない可能性があるので気を付けてください。
本記事では、家に車が突っ込んだことで発生した事故の修理代と、保険金を請求する際のポイントについて解説します。
目次
自宅に車が突っ込んだ事故で使える保険とは?
自宅に車が突っ込んだ場合、損害賠償を請求することになりますが、事故の状況等によっては、自宅所有者が加入している保険を活用することも選択肢になります。
加害者が加入している自動車保険
自宅に車をぶつけられた場合、加害者が加入している自動車保険を通じて保険金を受け取ることができます。
自動車保険には、車所有者全員に加入が義務付けられている「自賠責保険」と、任意による加入が義務付けられている「任意保険」があります。
自賠責保険(正式名称:自動車損害賠償責任保険)
自賠責保険(正式名称:自動車損害賠償責任保険)は、交通事故を起こした人(加害者)から、被害者に対する損害賠償を補填するための制度です。
自賠責保険の加入義務者は自動車だけでなく、原動機付自転車や電動キックボードの所有者も含まれますが、自賠責保険の対象となるのは対人損害賠償のみであり、物損事故による損害は保険適用外になります。
任意保険
任意保険は車の所有者が自ら選んで加入する保険をいい、補償内容の一つとして対物賠償を付けることも可能です。
対物賠償は契約車両となっている車の事故により、被害者の車や自宅などの物を破壊し、法律上の損害賠償責任を負うことになった際に補償されるものです。
保険金額は契約内容によって上限が定められていますが、損害賠償金の額よりも限度額が高ければ、保険金で損害賠償の全額がまかなわれます。
自宅に掛けている火災保険
事故で車が自宅に突っ込み、自宅や自宅の外壁等に損害を受けた場合、火災保険を活用できる可能性があります。
加害者が全面的に非がある事故であれば、加害者が損害を補償する責任がありますが、当て逃げや保険に加入していなかったことで損害賠償金を受け取れないケースについては、自宅所有者が加入している火災保険の活用も検討してください。
火災保険は、火災により建物が被害を受けた際に適用されるイメージがありますが、契約内容によっては火災以外にも保険を適用できます。
風災や水災、盗難なども火災保険の補償対象に含まれている種類も存在しますので、事故で自宅の修理等が必要になった際は、加入している火災保険の補償範囲をご確認ください。
また、火災保険には修理費が補填される保険金だけでなく、「臨時費用保険金」を受け取れる種類もあります。
臨時費用保険金
臨時費用保険金は、事故が発生した際に支払われる損害保険金とは別で支払われる保険金をいい、損害が生じたことで発生した臨時の支出に対して当てることができます。
臨時費用保険金を受け取れるかどうかは、加入している火災保険の内容によって違いますが、加害者の保険から物損に対する補償が行われる際は、臨時費用保険金のみを受け取ることも選択肢の一つです。
家に車が突っ込んだ損害を補償してもらう際のポイント
自動車による事故には人身事故と物損事故がありますが、どちらの事故に該当するかで受け取ることができる損害賠償金等の額は異なります。
物損事故は原則慰謝料請求の対象外
交通事故で怪我を負った場合、怪我の治療費や収入が減ったことに対する補填だけでなく、交通事故の被害者になったことによる精神的な苦痛に対し、慰謝料を請求することができます。
自宅が事故で損壊すれば精神的な被害を受けることは確かですが、物損事故については被害を受けた物に対する補償を行えば補填が完了するとの考えがあるため、修理費とは別で慰謝料を請求することは原則できません。
しかし、自宅が住めなくなるような大きな事故の影響で、長期間日常生活の不自由を強いられるようになったなど、精神的な苦痛を受けたと判断できる材料があれば、慰謝料が認められる可能性もあります。
そのため、事故で自宅等に甚大な被害が出た際は慰謝料が請求できるのか、専門家に確認してください。
損害と事故の因果関係の判断は難しい
交通事故で自宅などの財産が被害を受けた場合、事故でどの程度の損害を受けたのかを判断するのは難しいです。
新車が交通事故で破損した場合、車に付いた傷すべてが事故によるものと判断できますが、長年使用している自動車の傷については、どの部分が事故で生じたものかを判断しなければなりません。
事故前からあった傷に対する修理費用は請求できませんし、事故との因果関係が確認できないと、賠償金として受け取れる修理費の額が減ってしまうので注意してください。
物損事故の示談交渉も難航することがある
事故の示談交渉は、損害賠償金の額が大きくなるほど難航しやすいです。
示談交渉が上手くいかないと、問題が解決するまでに時間を要しますし、十分な補償をしてもらえない可能性も出てきます。
加害者が任意保険の加入者であった場合、保険会社と示談交渉することになりますが、保険会社が被害者の意見をそのまま受け入れるとは考えにくいです。
専門家と対等に話し合うためには知識と経験が不可欠ですので、物損事故の示談交渉においても、弁護士を立てることを検討してください。
外壁の修理費用として請求できる範囲は?
車が自宅に突っ込んだことで外壁が破損した場合、請求できる修理代金は実際に被った損害の部分に限られます。
たとえば事故で外壁の一部が破損したケースでは、破損した部分の外壁を直す費用は支払ってもらえますが、一部を修理したことで生じた外観の変化(外壁塗装の色ムラなど)を直す費用を請求することは難しいです。
物損事故の場合、基本的に慰謝料を請求することは難しいことから、事故で生じた損失を補償してもらうためには、外壁等の修理費用を正確に見積もり、加害者に請求することが大切です。
車が自宅に突っ込んだ損害を受けてから保険金を受け取るまでの流れ
事故で物的被害を受けたとしても、一定の手続きを経ないと損害賠償金を受け取ることはできないので、事故発生から補償までの流れをご紹介します。
警察には必ず事故が発生したことを伝えなければならない
事故が発生しましたら、事故の大きさに関係なく警察に連絡してください。
交通事故が発生した際の対応は道路交通法第72条で定められており、交通事故に関係する運転手は直ちに車両等の運転を停止させ、負傷者を救護し、道路における危険を防止するなどの措置を講じなければなりません。
また、警察に対して事故状況を報告する義務もありますので、警察には次の事項を伝えてください。
<警察へ報告する事故の情報>
- ●事故発生の場所
- ●事故発生の日時
- ●負傷者の有無
- ●負傷者の症状
- ●破損物の有無
- ●破損状況
- ●積載物の有無
- ●事故で処理した内容
警察への連絡等は、基本的に加害者がすることになりますが、加害者が事故を起こしたことで気が動転し、連絡することが困難な状況にあることも想定されます。
警察への連絡を怠ると道路交通法第72条違反になるだけでなく、事故が発生したことを証明する「交通事故証明書」を受け取ることができなくなります。なお、物損の場合には、「物件事故報告書」が作成されることもあります。
交通事故証明書は保険金を請求する際に必須となる書類なので、事故対応を怠らないよう気を付けてください。
加害者の連絡先等を入手する
警察は民事への介入はしませんので、事故で負った損害は被害者が加害者に請求することになります。
事故現場で相手方の連絡先等を入手しないと、そのまま逃げられる恐れもありますので、事故が発生した際は、加害者に連絡先等を聞いてください。
<交通事故で確認すべき加害者の情報>
- ●住所、氏名
- ●電話番号・メールアドレス等(連絡先)
- ●車両の所有者、車両ナンバー
- ●加入している保険会社の名称、契約番号
加害者が誠実に対応していたとしても、口頭だと情報を正しく受け取れないこともあるため、運転免許証や名刺などで住所・氏名等の情報を確認するのがポイントです。
事故現場でメモを取れない場合、スマホのカメラで情報を保全しても問題ありません。
加害者は事故の影響を抑えるため、その場で示談交渉を求めてくることもありますが、絶対に応じてはいけません。
事故現場での示談交渉はトラブルに発展する可能性が高く、被害状況も不透明な状況では損害に応じた補償を受けることができないため、示談交渉は後日行うようにしてください。
被害状況は写真等で保存・記録する
損害賠償金は、被害者が実際に被った損害に対して請求するものですので、損害の状況を把握できる証拠を記録として残さなければなりません。
車がぶつかったことで自宅や外壁・塀が破損した場合、被害状況をスマホ(スマートフォン)を使って写真を撮ることが大切です。
事故で物が壊れれば、壊れた物を修理するための費用も請求することができますので、建物や塀だけでなく、庭に置いてあったプランターや植木鉢などについても、写真を撮って記録を残してください。
損害額を算出するために修理費用を見積もる
被害状況が確認できましたら、損害賠償請求するために修理費用の見積もりを行います。
保険金は事故によって生じた損害を修繕等により、事故前の状態に戻すための費用を補填するものです。
したがって、被害を受けた金額を超える保険金は支払われませんし、修理費を見積もらないと適正額を受け取れません。
また、保険会社が修理内容を確認する前に修理をしてしまうと、事故が原因で生じた損害額がわからなくなり、トラブルとなりますので気を付けてください。
示談交渉は当事者間で行う
修理費用を算出できましたら、加害者と被害者で示談交渉を行います。
加害者が自動車保険に加入していれば、被害者は保険会社の担当者と示談交渉することになり、示談内容に合意できる場合は示談書を作成し、示談を成立させます。
示談成立後、数日から数週間後に保険金が振り込まれますので、受け取った保険金を使って自宅等を修理してください。
事故の状況が比較的わかりやすい場合は示談交渉もスムーズに進展しますが、事故が複雑だったり、被害が大きい場合は損害賠償金の額も多くなるため、示談が難航することが予想されます。
保険会社は支払う保険金が少ないほど支出を抑えられるメリットがあることから、担当者によっては強硬的な態度を示す人もいます。
被害者だけで示談交渉するのが難しい場合は、不利な状況に追い込まれる前に弁護士へ依頼することも検討してください。
物損事故の対応は初動が大切
家に車が突っ込んできた場合、被った損害に対する修理費用は全額補償してもらうことができますが、費用を補償してもらうためには被害状況を確認できる証拠を揃え、修理代を見積もるなどの作業が必要です。
建築年数が経過している建物が被害を受けた場合、建物の評価額が低く算出されれば請求できる金額も小さくなりますし、加害者や加害者が加入している保険会社は、損害賠償金の額を減らすために色々な主張をしてくることも考えられます。
被害者は被害を受けた状況下で示談交渉をしなければなりませんので、対応が難しい場合や、修理代を満額受け取りたいときは、一連の手続きを弁護士に委任してください。
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